干渉と回折
physicswavesinterferencediffractionlecture
1導入
この講義では、干渉も回折も波の重ね合わせとして解説する。
山と山が重なれば強め合い、山と谷が重なれば弱め合う。この違いを決めるのは、波が観測点へ届くまでにどれだけ位相がずれたかである。位相差は経路差から決まる。
2用語と定義
干渉とは、複数の波が重なり、振幅が大きくなったり小さくなったりする現象である。
経路差 \Delta l とは、2 つの波が観測点へ届くまでの道の長さの差である。
位相差 \delta とは、2 つの波の位相の差である。
回折とは、波が障害物の端を回り込んだり、狭い開口を通ったあとに広がったりする現象である。
3方針
干渉では、経路差を波長と比べる。
- 経路差 \Delta l を求める。
- 位相差 \delta=2\pi\Delta l/\lambda に直す。
- \delta が 2\pi の整数倍なら強め合い、\pi ずれなら弱め合いである。
回折では、開口幅や障害物の大きさを波長と比べる。
4関係式 1:経路差と位相差
波長 \lambda の波で、経路差が \Delta l なら、位相差は
\boxed{\delta=2\pi\frac{\Delta l}{\lambda}}
である。
4.1証明
1 波長 \lambda だけ進むと、位相は 2\pi だけ進む。したがって、距離 \Delta l に対応する位相の進みは比例で
\delta=2\pi\frac{\Delta l}{\lambda}
である。
5条件 2:強め合いと弱め合いの条件
同じ振幅、同じ振動数の 2 波では、
\boxed{\Delta l=m\lambda}
なら強め合い、
\boxed{\Delta l=\left(m+\frac12\right)\lambda}
なら弱め合いである。ただし m は整数である。
5.1証明
2 つの波を
y_1=A\cos\omega t,\qquad
y_2=A\cos(\omega t+\delta)
と書く。和積公式より
y_1+y_2
=
2A\cos\frac{\delta}{2}
\cos\left(\omega t+\frac{\delta}{2}\right)
である。合成波の振幅は
2A\left|\cos\frac{\delta}{2}\right|
である。
\delta=2m\pi なら \left|\cos(\delta/2)\right|=1 なので振幅は最大になる。関係式 1 より、これは
\Delta l=m\lambda
に等しい。
\delta=(2m+1)\pi なら \cos(\delta/2)=0 なので振幅は 0 になる。関係式 1 より、これは
\Delta l=\left(m+\frac12\right)\lambda
に等しい。
6条件 3:二重スリットの明線条件
スリット間隔を d、観測方向の角度を \theta とする。遠方で観測するなら、明線の条件は
\boxed{d\sin\theta=m\lambda}
である。
6.1証明
遠方の観測点へ向かう 2 本の光線は、ほぼ平行とみなせる。このとき 2 つのスリットから観測点までの経路差は、スリット間隔 d の観測方向への射影である。
\Delta l=d\sin\theta
である。明線は強め合いなので、条件 2 より
\Delta l=m\lambda
である。したがって
d\sin\theta=m\lambda
を得る。
7条件 4:回折が目立つ条件
開口幅 a が波長 \lambda と同程度になると、回折は目立つ。
7.1証明
厳密な強度分布ではなく、回折が目立つ目安を示す。開口の各点を二次波の起点と見ると、観測方向が少し変わるだけで、開口の端どうしから来る波に経路差が生じる。開口幅 a が \lambda に近いほど、この経路差が位相差として効きやすい。したがって波は広い角度へ回り込む。
a\gg\lambda なら、多くの二次波が横方向で打ち消し合い、直進方向が強く残る。そのため回折は目立ちにくい。
8単位の確認
d\sin\theta=m\lambda では、\sin\theta と m は無次元である。したがって左辺も右辺も長さの単位をもつ。
9見分け方
- 明暗、縞、経路差が出たら干渉を考える。
- 隙間、障害物、広がりが出たら回折を考える。
- 干渉では \Delta l/\lambda を見る。
- 回折では a/\lambda を見る。
10どこまで成立するか
d\sin\theta=m\lambda は、遠方で観測し、2 つのスリットから来る波の振幅がほぼ等しい場合の式である。近距離では幾何を正確に扱う必要がある。回折の詳細な強度分布には、開口の形に応じた積分が必要である。
11最終形
\boxed{\delta=2\pi\frac{\Delta l}{\lambda}}
\boxed{\Delta l=m\lambda\quad\text{強め合い}}
\boxed{\Delta l=\left(m+\frac12\right)\lambda\quad\text{弱め合い}}
\boxed{d\sin\theta=m\lambda}
12一言
干渉では経路差を波長で割る。回折では開口の大きさを波長と比べる。