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直線運動と落下-基本演習
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問題 1:等加速度直線運動の基本
初速度 v_0 = 10\ \mathrm{m/s}、加速度 a = 2.0\ \mathrm{m/s^2} で直線運動する物体について、t = 3.0\ \mathrm{s} 後の速度と変位を求めよ。
解答
適用条件の確認:加速度が一定(等加速度運動)であるため、運動学の公式が使用できる。
ルート A:公式を直接適用する。
速度:
v = v_0 + at = 10 + 2.0 \times 3.0 = 16\ [\mathrm{m/s}]
変位:
x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 = 10 \times 3.0 + \frac{1}{2} \times 2.0 \times 3.0^2 = 30 + 9.0 = 39\ [\mathrm{m}]
ルート B:積分から導出する(公式の成立を確認する意味で有効)。
a = \text{const} を積分すると v(t) = v_0 + at。さらに積分すると x(t) = v_0 t + \frac{1}{2}at^2。値を代入すると同じ結果を得る。
このルートを選ぶ場面:ルート A は数値が与えられている通常の問題で最速。ルート B は「なぜこの公式か」を確認したいとき、または a が時間に依存する場合の一般化として。
解説
使用した定石:等加速度運動の公式(v = v_0 + at、x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2)。導出は加速度の積分による(直線運動講義 §3 参照)。
ミスしやすい点:v_0 と a の符号の設定(初速と加速度の向きが逆の場合は a < 0)。
よくある誤り
- 公式の混同:v^2 = v_0^2 + 2ax(時間を使用しない公式)を時間が必要な問題に使用してしまう。見分け:t が与えられていれば v = v_0 + at、t が不要なら v^2 = v_0^2 + 2ax。
- 単位の変換を忘れる:\mathrm{km/h} と \mathrm{m/s} の混在。
問題 2:速度と速さの区別
物体が初速度 v_0 = 20\ \mathrm{m/s}(上向き)で鉛直に投げ上げられた。
(1) 最高点に達するまでの時間を求めよ。g = 9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
(2) 最高点での速度と速さをそれぞれ答えよ。
解答
符号の設定:上向きを正とすると a = -g = -9.8\ \mathrm{m/s^2}。
(1) 最高点では速度 v = 0。
0 = v_0 + at = 20 - 9.8t \implies t = \frac{20}{9.8} \approx 2.04\ [\mathrm{s}]
(2) 最高点での速度は 定義より v = 0\ \mathrm{m/s}(符号を含むベクトル量)。速さは |v| = 0\ \mathrm{m/s}(大きさのみのスカラー量)。
解説
速度と速さの区別:速度はベクトル(向きをもつ)、速さはスカラー(大きさのみ)。最高点では「上へ向かう」運動も「下へ向かう」運動も一瞬だけ停止するため、速度 = 0、速さ = 0 となる。
よくある誤り
- 「最高点では加速度も 0」:速度 = 0 だが加速度は常に -g(重力は最高点でも作用する)。この混同は速度と加速度の区別の不足から生じる。
問題 3:自由落下と速度-時間グラフ
高さ H = 80\ \mathrm{m} の地点から静止状態で物体を落下させる。g = 10\ \mathrm{m/s^2} とし、空気抵抗を無視する。
(1) 地面に到達するまでの時間を求めよ。
(2) 地面に到達する直前の速度を求めよ(2 通りの方法で)。
解答
設定:下向きを正、v_0 = 0、a = g = 10\ \mathrm{m/s^2}。
(1) H = \frac{1}{2}gt^2 から
t = \sqrt{\frac{2H}{g}} = \sqrt{\frac{2 \times 80}{10}} = \sqrt{16} = 4.0\ [\mathrm{s}]
(2) ルート A:時間を使用する公式。
v = gt = 10 \times 4.0 = 40\ [\mathrm{m/s}]
ルート B:時間を使用しない公式。
v^2 = v_0^2 + 2aH = 0 + 2 \times 10 \times 80 = 1600 \implies v = 40\ [\mathrm{m/s}]
両ルートで一致する。
このルートを選ぶ場面:ルート A は (1) で t = 4.0\ \mathrm{s} を求めた後ならそのまま使える。ルート B は t を求めずに直接速度を求めるときに有効。
解説
自由落下は v_0 = 0、a = g の特殊な等加速度運動。適用条件:空気抵抗が無視できること(問題文で明記)。
よくある誤り
- H = \frac{1}{2}gt^2 ではなく H = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2 を使用しない:v_0 = 0 なので第一項が消えるが、見落すと計算が複雑になる。
問題 4:2 物体の追跡問題
A が t = 0 に x = 0 から速度 v_A = 4.0\ \mathrm{m/s} の等速直線運動を開始する。同時刻に B が x = 0 から加速度 a = 2.0\ \mathrm{m/s^2}(v_{0B} = 0)で出発する。B が A に追いつく時刻と位置を求めよ。
解答
設定:A の位置 x_A = v_A t = 4t、B の位置 x_B = \frac{1}{2}at^2 = t^2。
B が A に追いつく条件は x_A = x_B:
4t = t^2 \implies t^2 - 4t = 0 \implies t(t - 4) = 0
t > 0 より t = 4.0\ \mathrm{s}。位置は x = 4 \times 4 = 16\ \mathrm{m}。
解説
追跡問題の定石:各物体の位置を t の関数として表し、x_A = x_B を解く。t = 0 は同じ地点にいるだけで「追いついた」ではないため、t > 0 の解を選ぶ。
よくある誤り
- t = 0 を正解として採用する:見分け方:問題が「B が A に追いつく」と述べているため、t > 0 の解のみが正しい。
問題 5:時間なしで速度を求める
水平な地面から初速度 v_0 = 15\ \mathrm{m/s} で鉛直に投げ上げた物体が、最高点から再び地面に戻ってくる直前の速度を求めよ。g = 10\ \mathrm{m/s^2}。
解答
ルート A:対称性を利用する。
投射の上昇と下降は時間が等しく(空気抵抗なし)、初速度と最終速度の大きさは等しい。ただし向きは逆(下向き)。
v = -v_0 = -15\ \mathrm{m/s} \quad \text{([下向/したむ]きを[負/ふ]とすると $-15\ \mathrm{m/s}$)}
速さは |v| = 15\ \mathrm{m/s}。
ルート B:v^2 = v_0^2 + 2ax を使用する。始点と終点で x = 0(同じ高さ)。
v^2 = v_0^2 + 2g \times 0 = v_0^2 = 225 \implies v = \pm 15\ \mathrm{m/s}
下へ向かっているため v = -15\ \mathrm{m/s}(上向き正の設定)。
このルートを選ぶ場面:ルート A は「対称性」という物理的な直観を使用するため速い。ルート B は公式を機械的に適用するため確実。どちらのルートも正確な答えを与える。
解説
保存力(重力)のみが作用し始点・終点の高さが同じ → 位置エネルギーの変化 \Delta U = 0 → 運動エネルギーも変化しない → 速さは初速度に等しい。これは力学的エネルギー保存則からも説明できる。
よくある誤り
- 速度の符号を無視して +15\ \mathrm{m/s} と答える:速度は向きをもつベクトル量。下向きを正に設定した場合は +15\ \mathrm{m/s}、上向きを正にした場合は -15\ \mathrm{m/s} となる。設定の一貫性が重要。