論理と真理値表の基本
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1導入
この講義では、命題から複合命題を構成する論理結合子を定義し、真理値表によって論理式の性質を判定する方法を説明する。特に、含意の方向と必要条件・十分条件の対応を明確にする。
2命題と真理値
命題 とは、真または偽のいずれかに確定する平叙文である。命題が真であることを \mathrm{T}、偽であることを \mathrm{F} と表記し、この \mathrm{T} または \mathrm{F} を真理値という。疑問文や、変数の値を指定しなければ真偽が確定しない文は、そのままでは命題ではない。
3論理結合子
P,Q を命題とする。
- 否定 \neg P は、P と反対の真理値をもつ。
- 論理積 P\land Q は、P,Q がともに真であるとき、かつそのときに限り真である。
- 論理和 P\lor Q は、P,Q の少なくとも一方が真であるとき、かつそのときに限り真である。したがって、ここでの「または」は両方が真である場合も含む。
- 含意 P\to Q は、P が真で Q が偽である場合に限り偽である。P を前件、Q を後件という。
- 同値 P\leftrightarrow Q は、P,Q の真理値が一致するとき、かつそのときに限り真である。
4真理値表
真理値表 とは、構成要素となる命題の真理値のすべての組合わせについて、論理式の真理値を列挙した表である。二つの命題からなる基本的な論理式は、次の表で定義される。
\begin{array}{c|c|c|c|c|c}
P&Q&P\land Q&P\lor Q&P\to Q&P\leftrightarrow Q\\
\hline
\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}\\
\mathrm{T}&\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{F}&\mathrm{F}\\
\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{F}\\
\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{T}
\end{array}\begin{array}{c|c|c|c|c|c}
P&Q&P\land Q&P\lor Q&P\to Q&P\leftrightarrow Q\\
\hline
\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{T}\\
\mathrm{T}&\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{F}&\mathrm{F}\\
\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{T}&\mathrm{F}\\
\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{F}&\mathrm{T}&\mathrm{T}
\end{array}
P\to Q について、前件 P が偽である二つの行では含意は真である。これは、P\to Q が因果関係を主張する表現ではなく、「P が真なのに Q が偽となる反例は存在しない」という条件だからである。
5恒真式・矛盾式・論理同値
恒真式 とは、構成要素の真理値にかかわらず常に真となる論理式である。矛盾式 とは、常に偽となる論理式である。たとえば、P\lor\neg P は恒真式であり、P\land\neg P は矛盾式である。
二つの論理式 A,B が、すべての真理値の割当てにおいて同一の真理値をもつとき、A と B は論理同値であるといい、A\equiv B と表記する。これは、A\leftrightarrow B が恒真式であることと同値である。例として、含意は
P\to Q\equiv \neg P\lor Q
と変形できる。
6含意の方向と必要十分条件
P\to Q において、P は Q の十分条件であり、Q は P の必要条件である。すなわち、P の成立は Q の成立を保証し、P が成立するためには Q が必要である。
Q\to P は P\to Q の逆であり、一般には元の含意から導出できない。これに対し、\neg Q\to\neg P は対偶であり、
P\to Q\equiv \neg Q\to\neg P
が成立する。変数を含む条件 P(x),Q(x) について、考察対象のすべての x で P(x)\to Q(x) と Q(x)\to P(x) が成立するとき、P(x)\leftrightarrow Q(x) が恒真となり、P(x) は Q(x) の必要十分条件である。単一の真理値割当で二つの含意がともに真であることだけでは、この関係は導出できない。
7例
整数 n に対し、P(n) を「n は 4 の倍数である」、Q(n) を「n は偶数である」とする。P(n),Q(n) は n を指定するまで命題ではなく、整数を真理値へ対応させる述語である。すべての整数 n について P(n)\to Q(n) が成立するため、「4 の倍数であること」は「偶数であること」の十分条件である。一方、Q(2) は真で P(2) は偽であるため、n=2 は Q(n)\to P(n) の反例である。
8要点
- 論理結合子の意味は、自然言語の印象ではなく真理値表によって確定する。
- 恒真式と矛盾式は、それぞれすべての行が真または偽となる論理式である。
- 論理同値は、すべての真理値の割当てにおける一致を意味する。
- P\to Q では P が十分条件、Q が必要条件であり、逆と対偶を混同してはならない。
9関連リンク
data/lecture/information/discrete-math/introduction-to-discrete-mathematics.lecture.n.md
data/lecture/information/discrete-math/sets-and-maps-basics.lecture.n.md