三角関数
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1導入
本講義では、実数 \theta に対する三角関数を単位円の座標として定義する。この定義により、直角三角形の鋭角に限定せず、任意の実数角について符号、対称性、周期性を統一的に扱える。
2単位円による定義
単位円で正の x 軸上の点 (1,0) から円周上を進む符号付弧長をラジアン値とする。反時計回りを正、時計回りを負とし、周回を許容することで任意の実数 \theta を角として表現する。符号付弧長 \theta だけ進んだ単位円上の点を P_\theta とする。
P_\theta=(\cos\theta,\sin\theta)
によって余弦と正弦を定義する。\cos\theta\ne0 のとき、正接を
\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}
と定義する。単位円の方程式から、すべての \theta\in\mathbb R について
\boxed{\sin^2\theta+\cos^2\theta=1}
が成立する。
3基本値
30^\circ-60^\circ-90^\circ と 45^\circ-45^\circ-90^\circ の直角三角形を単位円に配置すると、次の値を得る。
| \theta | 0 | \pi/6 | \pi/4 | \pi/3 | \pi/2 |
| \sin\theta | 0 | 1/2 | \sqrt2/2 | \sqrt3/2 | 1 |
| \cos\theta | 1 | \sqrt3/2 | \sqrt2/2 | 1/2 | 0 |
| \tan\theta | 0 | 1/\sqrt3 | 1 | \sqrt3 | 未定義 |
4対称性と周期性
x 軸に関する反射と 1 周の回転から、
\cos(-\theta)=\cos\theta,\qquad \sin(-\theta)=-\sin\theta,
\cos(\theta+2\pi)=\cos\theta,\qquad \sin(\theta+2\pi)=\sin\theta
が成立する。さらに、両辺の正接が定義されるとき、
\tan(\theta+\pi)=\tan\theta
が成立する。象限ごとの符号も P_\theta の x,y 座標から判定できる。
5回転行列への接続
原点からの距離が r\geq0 で、偏角が t の点を rP_t と表記する。幾何学的回転 Q_\phi を Q_\phi(rP_t)=rP_{t+\phi} と定義する。符号付弧長の加法から Q_\phi\circ Q_\theta=Q_{\phi+\theta} が成立する。また、回転は原点を固定し、2 ベクトルが張る平行四辺形を、その像が張る合同な平行四辺形へ移すため、Q_\phi(u+v)=Q_\phi u+Q_\phi v である。同じ直線上の有向距離も保存するため、Q_\phi(cu)=cQ_\phi u が任意の c\in\mathbb R について成立する。したがって Q_\phi は線型である。
標準基底とは e_1=(1,0)^\mathsf T、e_2=(0,1)^\mathsf T の組である。線型写像とは、ベクトルの和と実数倍を保存する写像であり、その行列は e_1,e_2 の像を列に配置したものである。Q_\phi は長さ、直交性、向きを保存する線型写像である。e_1 の像は u=(\cos\phi,\sin\phi)^\mathsf T である。e_2 の像は、u に直交する単位ベクトルのうち (u,v) が正の向きをもつものなので、一意に v=(-\sin\phi,\cos\phi)^\mathsf T と定まる。したがって、回転行列は
R_\phi=\begin{pmatrix}\cos\phi&-\sin\phi\\\sin\phi&\cos\phi\end{pmatrix}
である。行列積は線型写像の合成を表現する。2 回の回転の合成が角度の和の回転となる幾何的事実から R_\phi R_\theta=R_{\phi+\theta} が成立する。成分比較による加法定理の導出は次講義で扱う。
data/lecture/math/trigonometry/trigonometric-addition-formulas.lecture.n.md
6発展内容と前提
- オイラーの公式 e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta は、複素数と複素指数関数を導入した後に扱う。テイラー級数による証明には冪級数の収束が必要である。
- 微分公式には、微分の定義、加法定理、および \lim_{h\to0}\sin h/h=1 が必要である。
- 逆三角関数には、定義域を制限して三角関数を一対一にする操作と、逆関数の概念が必要である。
これらは単位円による基本定義の前提ではない。
7要約
- \cos\theta と \sin\theta は単位円上の点の座標である。
- 基本恒等式、対称性、周期性は単位円から導出される。
- 回転行列は加法定理への代数的接続を与える。
8関連講義
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