対称式と交代式
mathalgebrasymmetric-polynomialalternating-polynomiallecture
1導入
この講義では、文字の入れ替えに対して式が変わらない対称性と、符号だけが変わる交代性を説明する。
対称式は、置換しても変わらない。
\sigma f=f
交代式は、置換の符号だけ変わる。
\sigma f=\operatorname{sgn}(\sigma)f
この 2 つを並べて見ると、積の規則が自然に分かる。
data/lecture/math/algebra/symmetric-expressions.lecture.n.md
2置換が式に作用するとは
f(x_1,\ldots,x_n) を多項式とする。置換 \sigma に対して、
(\sigma f)(x_1,\ldots,x_n)
=f(x_{\sigma(1)},\ldots,x_{\sigma(n)})
と定義する。これは、変数の番号を \sigma に従って入れ替える操作である。
2.1注意
文献によっては x_{\sigma^{-1}(i)} を使う流儀もある。このページでは上の定義で統一する。対称・交代という性質そのものは、この流儀の違いで変わらない。
3定義 1:対称式
f が任意の置換 \sigma について
\boxed{\sigma f=f}
を満たすとき、f を対称式という。
5例
2 変数では、
x+y,\quad xy,\quad x^2+y^2
は対称式である。交換しても変わらないからである。
一方、
x-y
は交代式である。x と y を交換すると
y-x=-(x-y)
となるからである。
6命題 1:積の規則
6.1主張
f,g を多項式とする。
- f,g が対称式なら、fg は対称式である。
- f が対称式、g が交代式なら、fg は交代式である。
- f,g が交代式なら、fg は対称式である。
6.2証明
任意の置換 \sigma を取る。置換は積を保つので、
\sigma(fg)=(\sigma f)(\sigma g)
である。
- f,g が対称式なら、\sigma f=f、\sigma g=g である。したがって
\sigma(fg)=fg
であり、fg は対称式である。
- f が対称式、g が交代式なら、\sigma f=f、\sigma g=\operatorname{sgn}(\sigma)g である。したがって
\sigma(fg)=f\operatorname{sgn}(\sigma)g
=\operatorname{sgn}(\sigma)fg
であり、fg は交代式である。
- f,g が交代式なら、
\sigma(fg)
=\operatorname{sgn}(\sigma)f\cdot \operatorname{sgn}(\sigma)g
=\operatorname{sgn}(\sigma)^2fg
=fg
である。したがって fg は対称式である。□
7命題 2:交代式は同じ変数が等しいと 0 になる
7.1仮定
f(x_1,\ldots,x_n) を交代式とする。
7.2結論
x_i=x_j なら f=0 である。
7.3証明
i と j を入れ替える互換を \tau とする。互換は奇置換なので、
\tau f=-f
である。
しかし x_i=x_j の点では、i と j を入れ替えても値が変わらないので、
\tau f=f
でもある。したがって f=-f であり、f=0 である。□
8Vandermonde 積
\Delta(x_1,\ldots,x_n)=\prod_{i<j}(x_i-x_j)
は交代式である。二つの変数を入れ替えると、積の符号が反転するからである。
命題 2 より、交代式は x_i=x_j で 0 になる。つまり x_i-x_j を因数に持つ。このため、多くの交代式は Vandermonde 積を因数に持つ。
9一言でいうと
対称式は \sigma f=f、交代式は \sigma f=\operatorname{sgn}(\sigma)f である。積では符号が掛け合わされるので、対称 \times 対称は対称、対称 \times 交代は交代、交代 \times 交代は対称になる。