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複素積分の基本md c21e60d
lecture/math/analysis/複素積分の基本-講義.n.md
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複素積分の基本
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導入
この講義で最重要なのは、複素積分では「どの点を通るか」だけでなく、「どの経路を通るか」が一見重要そうに見えて、正則であるとその依存が強く消えることです。
実数の積分では、区間にそって面積を足す感覚が中心でした。複素積分では、複素平面の曲線にそって値を足し合わせます。ところが正則関数では、この積分がきわめて強い性質を持ちます。
用語と定義
複素積分 とは、曲線 C にそって
\int_C f(z)\,dz
を考えることです。
コーシーの積分定理 とは、正則関数の閉曲線にそった積分が 0 になる、という定理です。
直感的な説明
平面の上を歩きながら、その場所ごとの値を拾っていくのが複素積分です。ふつうは経路を変えれば結果も変わりそうですが、正則関数では、閉じた経路を回っても総和が 0 になります。
このため、「関数の内部の情報が、周囲の積分だけで読める」という、実解析ではかなり特別な現象が起こります。
厳密な説明
1. 複素積分の定義
曲線を z(t) と媒介変数表示すると、
\int_C f(z)\,dz=\int_a^b f(z(t))z'(t)\,dt
です。
これは複素積分を実数の積分へ戻して定義している、ということです。したがって、まず経路を媒介変数で書き、その上で値を拾う、という手順になります。
2. コーシーの積分定理
単連結な領域で正則な関数 f に対して、
\oint_C f(z)\,dz=0
が成り立ちます。
ここで重要なのは、ただ閉曲線であればよいのではなく、曲線とその内側で正則であり、さらに領域に穴がないことです。つまり特異点を囲んでいると、この結論はそのままでは使えません。
3. コーシーの積分表示
正則関数は、閉曲線 C の内側の点 z_0 に対して
f(z_0)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C \frac{f(z)}{z-z_0}\,dz
と表せます。
この式は、内部の 1 点の値が、周囲の積分で回収できることを意味します。
この公式が強力なのは、値だけでなく微分係数まで積分から回収できる出発点になるからです。ここに、複素解析が実解析よりずっと強い結論を持つ理由の 1 つがあります。
別の見方
幾何的な見方
複素積分は、複素平面の上の道にそって値を足し合わせる操作です。この見方では、「閉じて回ると 0 になる」という定理は、内部に渦のような特異点がない場では打ち消し合う、と読めます。
解析的な見方
実解析では積分は面積の感覚が強いですが、複素解析では積分が関数値や微分係数を回収する道具になります。この見方では、積分表示が平均値の公式を非常に強くしたものだと見えます。
作用素による見方
積分を 1 つの変換と見ると、正則関数はこの変換に対してきわめて安定な関数族です。だから複素積分は、ただ値を足すだけでなく、正則関数の構造を読み取る作用素だと考えられます。
見分け方
- 複素平面の曲線にそった積分が出たら、まず正則かどうかを確認します。
- 閉曲線と正則が並んだら、積分定理を疑います。
- 関数値を積分で表したいときは、積分表示を思い出します。
どこまで成り立つか
積分定理と積分表示は、正則であることと領域の条件に強く依存します。特異点を囲むときや、単連結でない領域では、そのまま使えないことがあります。
最終形
\boxed{\int_C f(z)\,dz=\int_a^b f(z(t))z'(t)\,dt}
\boxed{\oint_C f(z)\,dz=0}
\boxed{f(z_0)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C \frac{f(z)}{z-z_0}\,dz}
一言でいうと
- 複素積分では、正則であることが経路依存性を強く縛り、関数の値まで積分から回収できるようになります。