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複素解析の入口md 429255c
lecture/math/analysis/複素解析の入口-講義.n.md
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複素解析の入口
mathanalysiscomplex-analysisundergraduatelecture
導入
この講義で最重要なのは、複素関数の微分可能は、実関数の微分可能よりはるかに強い条件だと捉えることです。
実数の関数では、微分可能であっても荒い振る舞いをするものがたくさんあります。ところが複素解析では、正則であるというだけで、級数展開できたり、積分が強く制御されたりします。この強さがどこから来るのかを見通すのが、この講義の目的です。
用語と定義
複素関数 とは、複素数を入力し、複素数を出力する関数です。
正則関数 とは、ある領域の各点で複素微分できる関数です。
複素積分 とは、複素平面の曲線にそって関数を積分することです。
方針
複素解析では、まず「複素微分とは何か」を実数の微分と比べて押さえます。そのあと、正則という条件がどれほど強いかを、コーシー・リーマン方程式、複素積分、級数展開の三つの方向から見ます。
直感的な説明
実関数の微分では、右から近づけるか左から近づけるかくらいしか方向がありません。しかし複素平面では、ある点に近づく方向が無数にあります。それなのに、どの方向から近づいても同じ微分係数になることを要求するのが複素微分です。
このため、複素微分可能という条件はとても厳しくなります。そのかわり、いったん正則であることが分かると、その関数は滑らかで、局所的には冪級数として書けるほど整った振る舞いをします。
厳密な説明
1. 複素微分
f'(z_0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(z_0+h)-f(z_0)}{h}
で定義します。ここで h は複素数なので、0 への近づき方が無数にあります。
2. コーシー・リーマン方程式
f(z)=u(x,y)+iv(x,y) \quad (z=x+iy)
と書くと、正則であるためには、適切な滑らかさのもとで
\frac{\partial u}{\partial x}=\frac{\partial v}{\partial y}, \qquad \frac{\partial u}{\partial y}=-\frac{\partial v}{\partial x}
が必要です。これは「複素微分できる」という条件を、実変数の偏微分で書き直したものです。
3. 積分が強く制御される
正則関数は、閉曲線にそった積分が 0 になるというコーシーの積分定理を満たします。これが実解析にはない強力さで、ここから積分表示や級数展開が導かれます。
4. 級数展開
正則関数は、局所的に
f(z)=\sum_{n=0}^{\infty} a_n (z-z_0)^n
と書けます。実関数では微分可能でも冪級数に展開できるとは限りませんが、複素解析では正則であることからこれが従います。
見分け方
- 複素数の関数を微分するとき、まず方向によらず極限が一致するかを意識します。
- 正則と出たら、コーシー・リーマン方程式、積分定理、級数展開の三つが連動していると考えると整理しやすいです。
- 実解析との違いを問われたら、「微分可能の条件がはるかに強い」と答えるのが出発点です。
最終形
\boxed{f'(z_0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(z_0+h)-f(z_0)}{h}}
\boxed{\frac{\partial u}{\partial x}=\frac{\partial v}{\partial y}, \qquad \frac{\partial u}{\partial y}=-\frac{\partial v}{\partial x}}
一言でいうと
- 複素解析では、複素微分可能という強い条件から、積分と級数展開の豊かな理論が立ち上がります。