双対空間と共ベクトル
mathexterior-algebradual-spacelecture
導入
このページの核心は、ベクトルを直接測る対象として共ベクトルを導入し、微分形式の土台を作ることである。
用語と定義
双対空間 は、ベクトル空間 V から体 F への線形写像全体 V^*=\operatorname{Hom}(V,F) である。
共ベクトル は、ベクトルを入力として数を返す線形汎関数である。
方針
ベクトルが方向や変位を表すなら、共ベクトルはそのベクトルから成分や仕事のような数値を抽出する。座標関数 dx,dy,dz は基本的な共ベクトルとして解釈できる。
具体例
\omega(x,y)=3x-2y は \mathbb{R}^2 上の共ベクトルである。ベクトル (1,4) に対して
\omega(1,4)=3-8=-5
を返す。
dual basis
基底 e_1,\ldots,e_n に対して、双対基底 \varepsilon^1,\ldots,\varepsilon^n は
\varepsilon^i(e_j)=\delta_{ij}
で定義される。座標空間では、dx,dy,dz が標準基底に対する双対基底として働く。
例として \mathbb{R}^3 の標準基底を e_1,e_2,e_3 とする。dx(e_1)=1、dx(e_2)=0、dx(e_3)=0 である。つまり dx はベクトルの第一成分を抽出する共ベクトルである。同様に dy,dz は第二・第三成分を抽出する。
行ベクトルとの対応
座標を固定すると、共ベクトルは行ベクトルとして表現される。列ベクトル v に対して、行ベクトル \omega が \omega v を返す。この表現は基底に依存するが、共ベクトルそのものは線形汎関数である。
微分との接続
スカラー関数 f の点 p における微分 df_p は、接ベクトルを入力として方向微分を返す共ベクトルである。したがって df_p(v) は「p から v 方向へ動いたときの一次変化」を表す。
f(x,y)=x^2y、p=(1,2) とする。このとき
df_p=4\,dx+1\,dy
である。ベクトル v=(3,-1) に対して
df_p(v)=4\cdot 3+1\cdot(-1)=11
となる。これは p から v 方向へ微小に移動したときの一次近似の変化率である。
ベクトルと共ベクトルの比較
| 対象 | 入力 | 出力 | 座標表示 |
| ベクトル | なし | 方向・変位 | 列ベクトル |
| 共ベクトル | ベクトル | 数 | 行ベクトル |
内積がある場合、ベクトル a から v\mapsto a\cdot v という共ベクトルを作れる。しかしこれは内積を選択した後の同一視であり、内積のない一般のベクトル空間では自動的ではない。
仕事としての例
力が変位 v に対して仕事 W=\omega(v) を与えるとき、\omega は変位から数値を抽出する共ベクトルとして解釈できる。内積を用いれば力ベクトル F と W=F\cdot v と書けるが、形式の立場では仕事を返す線形汎関数が本体である。
転置との関係
線形写像 A:V\to W があると、共ベクトルは逆向きに移る。すなわち W^* の元を V^* の元へ送る写像が転置写像である。この逆向きの性質が pullback の入口になる。
よくある誤り
- ベクトルと共ベクトルを同一視する。
- 内積がない状況であっても、ベクトルと共ベクトルを自動的に対応させる。
- dx を微小量だけとして扱い、線形汎関数としての意味を確認しない。