多重線形写像と交代写像
mathexterior-algebramultilinearlecture
導入
このページの核心は、面積や体積を測る量には、各変数に線形であり、同じ方向が重複すると 0 になる性質が必要であることを確認することである。
用語と定義
多重線形写像 は、複数の入力を持ち、どの入力についても他を固定すれば線形になる写像である。
交代写像 は、二つの入力を入れ替えると符号が反転し、同じ入力が重複すると 0 になる写像である。
方針
面積は、一方の辺を二倍にすれば二倍になる。また二本の方向が平行なら面積は 0 になる。この直感を代数条件として抽出したものが交代多重線形性である。
具体例
\mathbb{R}^2 で
A(u,v)=u_1v_2-u_2v_1
と定義する。これは二つのベクトルが張る平行四辺形の符号付き面積であり、交代双線形である。
交換を確認すると、
A(v,u)=v_1u_2-v_2u_1=-(u_1v_2-u_2v_1)=-A(u,v)
である。また A(u,u)=0 である。同じ方向の二本のベクトルは平行四辺形を張らないため、面積が 0 になる。この幾何が交代性の背景である。
段階的な区別
双線形とは、二つの入力の各々について線形であることを意味する。多重線形とは、入力が三つ以上の場合にも同じ性質を要求することである。交代性は、入力の入れ替えで符号が変化する追加条件である。
体積の例
\mathbb{R}^3 で
V(u,v,w)=\det(u\ v\ w)
と定義する。これは三つのベクトルが張る平行六面体の符号付き体積であり、交代三重線形である。二つの入力を入れ替えると行列式の符号が反転する。
標準基底 e_1,e_2,e_3 に対して V(e_1,e_2,e_3)=1 である。e_2,e_1,e_3 の順に入れ替えると -1 になる。e_1,e_1,e_3 のように同じ方向が重複すると 0 である。この三つの値が、向き・符号・退化を同時に表す。
反例: 内積は交代ではない
B(u,v)=u\cdot v は双線形であるが、交代ではない。B(v,u)=B(u,v) であり、入力を交換しても符号は反転しない。また B(u,u)=|u|^2 は一般に 0 ではない。したがって長さや角度を測る内積と、向き付き面積を測る交代形式は別概念である。
determinant との関係
行列式は、列ベクトルに対する交代多重線形形式であり、標準基底に対して値 1 を取るように正規化されている。この特徴付けにより、置換和の公式だけでなく、面積・体積の符号付き拡大率として理解できる。
wedge 積への必然性
面積や体積を座標に依存しにくく扱うには、交代多重線形な対象を体系的に生成する演算が必要である。その演算が wedge 積である。