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ベクトル空間と基底md 389f644
lecture/math/linear-algebra/ベクトル空間と基底-講義.n.md
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ベクトル空間くうかん基底きていbasis

導入どうにゅう

線型代数せんけいだいすう最重要さいじゅうようなのは、「どんなベクトルが生成せいせいできるか」と「その表示ひょうじ一意いちいか」を区別くべつして考察こうさつすることである。

基底きていbasisをただ「便利べんりなベクトルの」として暗記あんきすると、生成せいせい一次独立いちじどくりつlinear independenceがなぜ別々べつべつ必要ひつようなのかが不明瞭ふめいりょうになる。この講義こうぎでは、まず「全体ぜんたい生成せいせいすること」と「表示ひょうじ重複ちょうふくしないこと」を分離ぶんりし、その 2 つが同時どうじ成立せいりつしたものとして基底きていbasis定式化ていしきかする。

用語ようご定義ていぎ

ベクトル空間くうかんVector space とは、たい Kげんをスカラーとし、加法かほうとスカラーばい定義ていぎされ、れいベクトル、逆元ぎゃくげん結合法則けつごうほうそく交換法則こうかんほうそく分配法則ぶんぱいほうそくなどの公理こうりたす集合しゅうごうsetである。

抽象ちゅうしょうベクトル空間くうかんabstract vector space とは、成分せいぶんcomponentかたち依存いぞんせず、加法かほうとスカラーばい公理こうりだけであつかうベクトル空間くうかんである。RnCn だけでなく、多項式たこうしき関数かんすう行列ぎょうれつmatrix集合しゅうごうset条件じょうけんたせばベクトル空間くうかんになる。

生成せいせいSpan とは、あたえられたベクトルの線型結合せんけいけつごうlinear combination構成こうせいできる全体ぜんたいである。

一次独立いちじどくりつLinear independence とは、自明じめい組合くみあわせだけが 0 を構成こうせいすることを意味いみする。

基底きていBasis とは、生成せいせい一次独立いちじどくりつlinear independence同時どうじたす集合しゅうごうsetである。

方針ほうしん

基底きていbasis理解りかいするには、まず「生成せいせいできるか」と「表示ひょうじ重複ちょうふくしないか」を分離ぶんりする。

data/lecture/math/linear-algebra/線型結合と張る空間の基本-講義.n.md data/lecture/math/linear-algebra/内積空間の基本-講義.n.md

直感的ちょっかんてき説明せつめい

1. 「りる」と「余分よぶんがない」をける

基底きていbasisは、空間くうかん表現ひょうげんするための「過不足かふそくのない部品ぶひん」である。すくなすぎると全体ぜんたい生成せいせいできず、おおすぎるとおなじベクトルに複数ふくすう表示ひょうじしょうじる。

2. 平面へいめんれい

R2 では、(10),(01) があれば任意にんいのベクトルを表現ひょうげんできる。これは「生成せいせいできる」ということである。

一方いっぽうで、(10),(01),(11) の 3 ぼん採用さいようすると、たしかに全体ぜんたい生成せいせいできるが 1 ぼん余分よぶんである。たとえば

(11)=(10)+(01)

なので、独立どくりつindependentではない。

3. 基底きていbasisとはなに

したがって基底きていbasisとは、「全体ぜんたい生成せいせいできる」かつ「表示ひょうじ重複ちょうふくがない」集合しゅうごうsetである。これを厳密げんみつ表現ひょうげんすると、生成せいせい一次独立いちじどくりつlinear independenceになる。

このように定義ていぎする理由りゆうは、座標ざひょう一意いちい決定けっていするためである。生成せいせいだけでは全体ぜんたいおおっても重複ちょうふくしょうじうるし、一次独立いちじどくりつlinear independenceだけでは重複ちょうふくがなくても全体ぜんたい表現ひょうげんできない。2 つを同時どうじ要求ようきゅうしてはじめて、「どのベクトルもただ 1 とおりに座標化ざひょうかできる」という目的もくてき到達とうたつする。

厳密げんみつ説明せつめい

0. ベクトル空間くうかん公理こうり理由りゆう

ざんとスカラーばいじているだけでは、ベクトル空間くうかんとは判定はんていできない。線型結合せんけいけつごうlinear combination安定あんていしてあつかうには、計算規則けいさんきそく整合せいごうしている必要ひつようがある。

たとえば u,v,wVa,bKたいして、加法かほう交換法則こうかんほうそく結合法則けつごうほうそくれいベクトル 0存在そんざい反対はんたいベクトル -v存在そんざい、および

a(u+v)=au+av,(a+b)v=av+bv,a(bv)=(ab)v

要請ようせいされる。これらの公理こうりによって、多項式たこうしき関数かんすう行列ぎょうれつmatrixのようにかたちことなる対象たいしょうも、おな線型せんけい言語げんご処理しょりできる。

1. 一次独立いちじどくりつlinear independence

ベクトル v1,[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"dots\")")],vk一次独立いちじどくりつlinear independenceであるとは

c1v1++ckvk=0c1==ck=0

であることである。

この条件じょうけんは、「0 を構成こうせいするための余計よけい関係式かんけいしきがない」ことを意味いみする。したがって直感的ちょっかんてき説明せつめいしめした「余分よぶんがない」に対応たいおうする。

2. 生成せいせい

また v1,[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"dots\")")],vk空間くうかん V生成せいせいするとは、任意にんいvV

v=c1v1++ckvk

表示ひょうじできることである。

この条件じょうけんは、「全体ぜんたい生成せいせいできる」に対応たいおうする。

3. 基底きていbasis

したがって基底きていbasisとは、この 2 つを同時どうじたすものである。

ここで重要じゅうようなのは、この定義ていぎると「かくベクトルの座標ざひょうがただ 1 つに決定けっていされる」ことである。実際じっさいv

v=c1v1++ckvk=d1v1++dkvk

と 2 とおりに表示ひょうじできたとすると、

(c1-d1)v1++(ck-dk)vk=0

となる。一次独立いちじどくりつlinear independenceより

c1-d1==ck-dk=0

したがって

c1=d1,[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"dots\")")],ck=dk

である。つまり基底きていbasisとは、ただ空間くうかん生成せいせいするだけでなく、座標表示ざひょうひょうじ一意いちいにするための定義ていぎねる。

この証明しょうめい意義いぎおおきい。基底きていbasis選択せんたくすると「ベクトルそのもの」と「その座標ざひょう」が 1 たい 1 に対応たいおうすることが保証ほしょうされる。したがって線型代数せんけいだいすうでは、抽象的ちゅうしょうてき空間くうかん問題もんだい座標ざひょう計算けいさん変換へんかんしても意味いみうしなわれない。

この対応たいおう座標写像ざひょうしゃぞうCoordinate mapという。順序じゅんじょつき基底きていbasis B=(v1,[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"dots\")")],vn)選択せんたくすると、かく vV一意いちい

v=c1v1++cnvn

表示ひょうじされる。この係数けいすうcoefficientならべた

[v]B=(c1cn)

Bかんする座標ざひょうである。つまり基底きていbasis選択せんたくすることは、抽象ちゅうしょうベクトルをかずれつcolumnうつ座標写像ざひょうしゃぞう構成こうせいすることである。この座標写像ざひょうしゃぞうが、線型写像せんけいしゃぞうlinear map行列ぎょうれつmatrix表現ひょうげんする入口いりぐちになる。

data/lecture/math/linear-algebra/線型写像と行列-講義.n.md

4. 具体例ぐたいれい

R2

e1=(10),e2=(01)

考察こうさつすると、任意にんい

(xy)=xe1+ye2

表示ひょうじできるため、生成せいせいしている。

また

c1e1+c2e2=0

なら

(c1c2)=(00)

したがって c1=c2=0 である。このため e1,e2一次独立いちじどくりつlinear independenceであり、基底きていbasisである。

5. 抽象化ちゅうしょうかれい

ベクトル空間くうかんは、矢印やじるしだけをあつか概念がいねんではない。たとえば実数じっすうreal number係数けいすうcoefficientの 2 以下いか多項式たこうしき全体ぜんたい

P2={a+bx+cx2a,b,cR}

は、1,x,x2基底きていbasisにもつ 3 次元じげんdimensionベクトル空間くうかんである。また、区間くかん [0,1]うえ連続関数れんぞくかんすう全体ぜんたいや、m×n 行列ぎょうれつmatrix全体ぜんたいも、適切てきせつ加法かほうとスカラーばいによりベクトル空間くうかんとなる。

この抽象化ちゅうしょうかにより、微分びぶん関数空間かんすうくうかん線型写像せんけいしゃぞうlinear mapとしてあつかったり、行列ぎょうれつmatrix基底きていbasis座標化ざひょうかしたりできる。ベクトル空間くうかん定義ていぎは、ことなる対象たいしょう統一的とういつてき記述きじゅつするための枠組わくぐみである。

6. 実数じっすうreal number複素数ふくそすうcomplex numberなにわるか

ベクトル空間くうかんでは、どのたいをスカラーとして使つかうかを明示めいじする。おな集合しゅうごうsetでも、実数じっすうreal numberをスカラーにするか、複素数ふくそすうcomplex numberをスカラーにするかで、一次独立いちじどくりつlinear independence次元じげんdimensionかたわることがある。

たとえば C は、複素数体ふくそすうたい C じょうでは 1 次元じげんdimensionである。一方いっぽう実数体じっすうたい R じょうでは 1,i基底きていbasisとして 2 次元じげんdimensionである。したがって「次元じげんdimension」や「基底きていbasis」は、かなら基礎体きそたい一緒いっしょむ。

内積ないせきinner productれると、このはさらに重要じゅうようになる。実内積じつないせきでは対称性たいしょうせい使つかうが、複素内積ふくそないせきでは共役対称性きょうやくたいしょうせい使つかう。

data/lecture/math/linear-algebra/複素内積とユニタリ行列-講義.n.md

7. 基底きていbasis本数ほんすう一定いっていになる理由りゆう

有限次元ゆうげんじげん次元じげんdimension定義ていぎできるのは、どの基底きていbasis採用さいようしても本数ほんすうおなじになるためである。この事実じじつ基礎きそにあるのが交換補題こうかんほだいExchange lemmaである。

交換補題こうかんほだい内容ないようは、一次独立いちじどくりつlinear independenceくみ v1,[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"dots\")")],vk と、V生成せいせいするくみ w1,[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"dots\")")],wm があるとき、v1 をどれか 1 ぽんwj交換こうかんしても生成せいせいたもてる、というものである。この交換こうかんじゅん反復はんぷくすると、一次独立いちじどくりつlinear independence本数ほんすう生成集合せいせいしゅうごう本数ほんすうえられないことが判明はんめいする。

したがって、BC がともに基底きていbasisなら、B一次独立いちじどくりつlinear independenceC生成せいせいするため |B|[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"le\")")]|C| である。役割やくわり交換こうかんすると |C|[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"le\")")]|B| であり、結局けっきょく |B|=|C| となる。このため次元じげんdimension基底きていbasis選択せんたく依存いぞんしない。

べつ観点かんてん

計算けいさん立場たちばでは、基底きていbasisはベクトルを座標ざひょう表現ひょうげんするための基準きじゅんである。構造こうぞうstructure立場たちばでは、その空間くうかん過不足かふそくなく生成せいせいするための最小限さいしょうげん部品ぶひんである。この 2 つを結合けつごうしておくと、後続こうぞく線型写像せんけいしゃぞうlinear map行列ぎょうれつmatrix基底きていbasis意味いみ安定あんていする。

どこまでつか

有限次元ゆうげんじげんベクトル空間くうかんでは、どの基底きていbasis選択せんたくしても要素数ようそすうおなじである。これが次元じげんdimensionである。

この事実じじつ重要じゅうようなのは、基底きていbasis選択せんたくによらず、その空間くうかんそのもののおおきさをかず表現ひょうげんできるからである。たとえば R2 では、どの基底きていbasis採用さいようしても 2 ほん十分じゅうぶんであり、3 ぼんあれば一次独立いちじどくりつlinear independenceにはできない。

この事実じじつ交換補題こうかんほだいにより保証ほしょうされる。しでのこ自由度じゆうど本数ほんすうも、この基底きていbasis本数ほんすう対応たいおうする。つまり次元じげんdimensionは、空間くうかんあらわすのに必要ひつよう独立どくりつindependent方向ほうこうかずである。

一方いっぽう無限次元むげんじげんでは、基底きていbasisあつかいに慎重しんちょうさをようする。また、生成せいせいだけ、あるいは一次独立いちじどくりつlinear independenceだけでは基底きていbasisにはならない。2 つを分離ぶんりして確認かくにんすることが重要じゅうようである。

最終形さいしゅうけい

[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]基底=生成+一次独立
[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]生成は「足りる」、一次独立は「余分がない」
[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]基底を選ぶと座標表示は一意に定まる
[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]有限次元では基底の本数は交換補題により一定である
[PARSE ERROR: Undefined("Command(\"boxed\")")]基底を選ぶと座標写像[·]B:VKnが定まる

一言ひとことでいうと

  • 基底きていbasisは、「生成せいせいする」かつ「一次独立いちじどくりつlinear independenceである」ベクトル集合しゅうごうsetである。
  • 問題もんだいでは、まず生成せいせい確認かくにんし、つぎに一次独立性いちじどくりつせい判定はんていする。

演習えんしゅうリンク

data/exercise/math/linear-algebra/ベクトル空間・基底・階数-基本演習.n.md

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