問題 3
u_1=\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix},
\qquad
u_2=\begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix}
が問題 1 の W の基底であることを示し、
w=\begin{pmatrix}3\\-1\\-2\end{pmatrix}
のこの基底に関する座標を求めよ。
解答例
○
u_1,u_2 はどちらも成分和が 0 なので W に属する。au_1+bu_2=0 とすると、
\begin{pmatrix}a+b\\-a\\-b\end{pmatrix}=0
より a=0、b=0 なので一次独立である。任意の W の元は (x,y,z)^T で x+y+z=0 を満たすから、x=-y-z であり、
\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}
=
(-y)u_1+(-z)u_2
と表せる。よって基底である。
w=au_1+bu_2 とおくと -a=-1、-b=-2 なので a=1、b=2 である。したがって座標は
\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix}
である。
解説
基底の確認は、所属、一次独立、生成の順に進めると行間が小さくなる。座標は「どの基底をどれだけ混ぜるか」を表す係数であり、基底が変われば同じベクトルでも座標は変わる。
補充問題:列ベクトルと階数
問題 6
(1,0)^T,(2,0)^T が一次独立か判定せよ。
○
(2,0)^T=2(1,0)^T なので一次従属である。
この問題は、2 本のベクトルが同じ方向なら新しい方向を増やさないことを確認する。
問題 7
(1,0)^T,(0,1)^T,(1,1)^T の階数を答えよ。
○
(1,0)^T,(0,1)^T は一次独立で、(1,1)^T=(1,0)^T+(0,1)^T である。したがって階数は 2 である。
この問題は、階数がベクトルの本数ではなく、独立な方向の最大本数であることを確認する。
問題 8
列ベクトルの一次関係が Ac=0 と書ける理由を説明せよ。
○
A=[a_1\ \cdots\ a_n]、c=(c_1,\dots,c_n)^T とすると、Ac=c_1a_1+\cdots+c_na_n である。したがって列の一次関係 c_1a_1+\cdots+c_na_n=0 は Ac=0 と同値である。
この問題は、行列積を列ベクトルの線型結合として読むことを確認する。
問題 9
\mathbb R^3 の部分集合
W_1=\{(x,y,z)^T\mid x+y+z=1\}
W_2=\{(x,y,z)^T\mid x+y+z=0\}
W_3=\{(x,y,z)^T\mid x\ge0\}
について、部分空間であるかを判定し、失敗する場合はどの条件が壊れるかを述べよ。
○
W_1 は零ベクトルを含まないので部分空間ではない。W_2 は零ベクトルを含み、和とスカラー倍で閉じているので部分空間である。W_3 は零ベクトルを含むが、(1,0,0)^T\in W_3 に対して -(1,0,0)^T=(-1,0,0)^T\notin W_3 なので、スカラー倍で閉じていない。
この問題は、部分空間の判定では「零ベクトル」「和」「スカラー倍」を分けて確認する必要があることを確認する。
問題 10
A=
\begin{pmatrix}
1&2&1\\
2&4&2\\
1&1&0
\end{pmatrix}
を行基本変形で階段形にし、\operatorname{rank}A、列空間の基底、\ker A の次元を求めよ。
○
\begin{pmatrix}
1&2&1\\
2&4&2\\
1&1&0
\end{pmatrix}
\to
\begin{pmatrix}
1&2&1\\
0&0&0\\
0&-1&-1
\end{pmatrix}
\to
\begin{pmatrix}
1&2&1\\
0&-1&-1\\
0&0&0
\end{pmatrix}
である。ピボットは第 1 列と第 2 列にあるので、\operatorname{rank}A=2 である。列空間の基底として、元の行列の第 1 列と第 2 列
\begin{pmatrix}1\\2\\1\end{pmatrix},
\qquad
\begin{pmatrix}2\\4\\1\end{pmatrix}
を取れる。また未知数は 3 個なので、階数-退化次数定理より
\dim\ker A=3-2=1
である。
この問題は、行基本変形で階数を求めたあと、主成分列を元の行列へ戻して列空間の基底を読む練習である。
問題 11
\mathbb C を \mathbb C 上のベクトル空間として見る場合と、\mathbb R 上のベクトル空間として見る場合で、基底と次元がどう変わるかを説明せよ。
○
\mathbb C 上では、1 だけで任意の z\in\mathbb C を z\cdot1 と表せるので、基底は \{1\}、次元は 1 である。
\mathbb R 上では、任意の z=a+bi を a\cdot1+b\cdot i と表すので、基底は \{1,i\}、次元は 2 である。
この問題は、基底と次元が集合だけで決まるのではなく、どの体をスカラーとして使うかにも依存することを確認している。
問題 12
v=\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}
を、標準基底 E=(e_1,e_2) と
B=\left(
\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}
\right)
のそれぞれで座標表示せよ。変わるものと変わらないものも述べよ。
○
標準基底では
[v]_E=\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}
である。v=a(1,1)^T+b(1,-1)^T とおくと
a+b=3,\qquad a-b=1
なので a=2,\ b=1 である。したがって
[v]_B=\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}
である。ベクトル v そのものは変わらないが、基底を変えると座標は変わる。
この問題は、基底が「ベクトルを測る物差し」であることを確認する。対象のベクトルは同じでも、物差しが変われば座標表示は変わる。
問題 13
0_{2\times3} を \mathbb R^3\to\mathbb R^2 の零写像の行列と見る。\operatorname{rank}0_{2\times3}、列空間、\ker 0_{2\times3} の次元を求め、階数-退化次数定理を確認せよ。
○
すべての列が零ベクトルなので、
\operatorname{rank}0_{2\times3}=0
である。列空間は \{0\}\subset\mathbb R^2 である。また任意の x\in\mathbb R^3 に対して 0_{2\times3}x=0 なので、
\ker 0_{2\times3}=\mathbb R^3,
\qquad
\dim\ker 0_{2\times3}=3
である。したがって
\operatorname{rank}0_{2\times3}+\dim\ker 0_{2\times3}=0+3=3
となり、入力空間の次元と一致する。
この問題は、階数の境界例である。零写像は出力側に何も残さず、入力の全体を核へ送る。
問題 14
A=
\begin{pmatrix}
1&0&1\\
0&1&1\\
1&1&2
\end{pmatrix}
=
\begin{bmatrix}
a_1&a_2&a_3
\end{bmatrix}
について、Ac=0 を解き、列ベクトルの一次関係を読み取れ。また、列空間の基底を 1 つ選べ。
○
a_3=a_1+a_2 なので、
a_1+a_2-a_3=0
である。したがって
c=t\begin{pmatrix}1\\1\\-1\end{pmatrix}
\qquad(t\in\mathbb R)
が Ac=0 の解である。非自明解があるので、列ベクトルは一次従属である。列空間の基底として a_1,a_2 を取れる。
この問題は、Ac=0 が列ベクトルの一次関係を表すことを具体的に確認する。非自明な c が見つかることは、列の中に余分な方向があることを意味する。
問題 15
A=
\begin{pmatrix}
1&1\\
2&2
\end{pmatrix}
について、b_1=(3,6)^T と b_2=(3,7)^T のそれぞれに対して、Ax=b の解の有無を \operatorname{rank}A と \operatorname{rank}(A\mid b) の比較で判定せよ。
○
A の第 2 行は第 1 行の 2 倍なので、
\operatorname{rank}A=1
である。b_1=(3,6)^T では右辺も同じ 2 倍の関係を満たすので、
\operatorname{rank}(A\mid b_1)=1
である。したがって \operatorname{rank}A=\operatorname{rank}(A\mid b_1) であり、解は存在する。ただし未知数は 2 個で階数は 1 なので、自由変数が 1 個あり、解は無限に存在する。
b_2=(3,7)^T では右辺が 2 倍の関係を満たさない。実際、
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&1&3\\
2&2&7
\end{array}
\right)
\to
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&1&3\\
0&0&1
\end{array}
\right)\left(
\begin{array}{cc|c}
1&1&3\\
2&2&7
\end{array}
\right)
\to
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&1&3\\
0&0&1
\end{array}
\right)
となり、矛盾行が現れる。したがって
\operatorname{rank}(A\mid b_2)=2
であり、\operatorname{rank}A\ne\operatorname{rank}(A\mid b_2) なので解は存在しない。
この問題は、階数を単に列の独立性の数として求めるだけでなく、連立一次方程式の解の分類に使う練習である。係数行列と拡大係数行列の階数が一致するかが存在を決め、さらに階数が未知数の個数に等しいかが一意性を決める。