heat・wave・Laplace 方程式
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導入
このページの核心は、PDE の代表例を別々の公式としてではなく、拡散・伝播・平衡の三類型として比較することである。
代表式
熱方程式は
u_t=\kappa u_{xx}
である。波動方程式は
u_{tt}=c^2u_{xx}
である。Laplace 方程式は
\Delta u=0
である。
方針
熱方程式では初期分布が平滑化される。波動方程式では初期変位と初期速度が伝播する。Laplace 方程式では境界値が内部の平衡分布を決定する。
heat: 平滑化と maximum principle
熱方程式では、高周波の揺れが時間とともに減衰する。たとえば 0<x<L、u(0,t)=u(L,t)=0 の条件では、正弦モード \sin(n\pi x/L) が e^{-\kappa(n\pi/L)^2t} で減衰する。大きい n ほど速く消えるため、解は滑らかになる。
この減衰公式は代入で導出できる。u(x,t)=T(t)\sin(n\pi x/L) と置くと、
u_t=T'(t)\sin(n\pi x/L)
であり、
u_{xx}=-\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2T(t)\sin(n\pi x/L)
である。これを u_t=\kappa u_{xx} へ代入すると
T'(t)=-\kappa\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2T(t)
となる。この一階線形 ODE の解は
T(t)=T(0)e^{-\kappa(n\pi/L)^2t}
である。したがって正弦モードの減衰が導出される。
標準例として、初期温度を u(x,0)=\sin(\pi x/L) とする。このとき解は
u(x,t)=e^{-\kappa(\pi/L)^2t}\sin(\pi x/L)
である。形は保たれるが、振幅だけが指数関数的に減衰する。比較例として \sin(5\pi x/L) を初期分布に含めると、減衰率は 25 倍になる。これが平滑化の具体的な意味である。
wave: 伝播と energy
波動方程式では、初期変位と初期速度が有限速度で伝播する。固定端条件では正弦モードが振動し、熱方程式のように単調に消滅しない。運動と歪みのエネルギーの和が保存されることが基本性質である。
全空間の一階元では、d'Alembert 公式
u(x,t)=\frac{f(x-ct)+f(x+ct)}{2}+\frac{1}{2c}\int_{x-ct}^{x+ct}g(s)\,ds
が典型である。ここで f は初期変位、g は初期速度である。点 (x,t) の解は、区間 [x-ct,x+ct] の初期情報だけに依存する。これが有限伝播速度の式による表現である。
この公式も因数分解から導出できる。波動演算子は
\partial_t^2-c^2\partial_x^2
=(\partial_t-c\partial_x)(\partial_t+c\partial_x)
と分解される。新変数
\xi=x-ct,\qquad \eta=x+ct
を導入すると、一般解は
u(x,t)=F(x-ct)+G(x+ct)
の形になる。初期条件 u(x,0)=f(x)、u_t(x,0)=g(x) を代入すると
F(x)+G(x)=f(x)
および
-cF'(x)+cG'(x)=g(x)
を得る。第二式を積分して F,G を消去すると、d'Alembert 公式
u(x,t)=\frac{f(x-ct)+f(x+ct)}{2}
+\frac{1}{2c}\int_{x-ct}^{x+ct}g(s)\,ds
が得られる。
Laplace: 平衡と調和関数
Laplace 方程式 \Delta u=0 の解は調和関数である。内部に源がないため、境界で指定した値が内部の平衡状態を決定する。maximum principle により、最大値と最小値は原則として境界で達成される。
二次元の例として u(x,y)=x^2-y^2 を確認する。u_{xx}=2、u_{yy}=-2 なので \Delta u=0 である。値は内部で自由に最大を取るのではなく、境界の情報と調和性に制約される。反対に x^2+y^2 は \Delta u=4 であり、内部に一様な源を持つ Poisson 方程式の例になる。
比較表
| 方程式 | 未知関数 | 主な条件 | 解の読み方 |
| heat | u(x,t) | 初期温度と境界温度 | 拡散と平滑化 |
| wave | u(x,t) | 初期変位と初期速度 | 伝播とエネルギー |
| Laplace | u(x,y) | 境界値 | 平衡と調和性 |
条件による違い
同じ熱方程式であっても、Dirichlet 条件では端点の温度を固定し、Neumann 条件では端点を通過する熱流を指定する。結果として長時間後の平衡が変化する。このページでは解法を完結させず、三方程式の性質の差を確認する。
単位の確認
熱方程式で u を温度、t を秒、x を長さとすると、\kappa は長さの 2 乗を時間で割った次元を持つ。したがって u_t と \kappa u_{xx} は同じ次元になる。
どこまで成り立つか
これらは線形で理想化された代表モデルである。非線形拡散、減衰、外力、不均一媒質を含む場合は、方程式の形が変化する。