変数分離法と Fourier 級数
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導入
このページの核心は、変数分離法を形式的な仮定ではなく、境界条件に合う空間モードへ PDE を分解する方法として確認することである。
用語と定義
変数分離法 は、u(x,t)=X(x)T(t) のように未知関数を一変数関数の積として仮定し、PDE を ODE 群へ分解する方法である。
Fourier 級数 は、関数を三角関数の級数として展開する表現である。
方針
境界条件から空間方向の固有値問題が現れる。その固有関数を基底として初期条件を展開し、時間方向の ODE を解く。
分離定数が現れる理由
u(x,t)=X(x)T(t) を代入して両辺を XT で割ると、一方は x だけの関数、他方は t だけの関数になる。この二つが全ての x,t で等しいためには、同一の定数でなければならない。この定数が分離定数である。
典型例
区間 0<x<L の熱方程式で u(0,t)=u(L,t)=0 とすると、空間モードは \sin(n\pi x/L) になる。初期分布を sine 級数で展開し、それぞれのモードが時間とともに減衰する。
波動方程式で同じ境界条件を課すと、空間モードは同じく \sin(n\pi x/L) になる。ただし時間方向は指数減衰ではなく、\cos(cn\pi t/L) と \sin(cn\pi t/L) の振動になる。熱と波の差は、同じ空間固有値に対する時間方程式の差として現れる。
具体例 1: 熱方程式
問題を
u_t=\kappa u_{xx},\quad 0<x<L,\quad u(0,t)=u(L,t)=0,\quad u(x,0)=f(x)
とする。u=XT を代入すると、
\frac{T'}{\kappa T}=\frac{X''}{X}=-\lambda
である。境界条件から X(0)=X(L)=0 なので、非零解は
X_n(x)=\sin(n\pi x/L),\quad \lambda_n=(n\pi/L)^2
である。時間方向は T_n(t)=e^{-\kappa\lambda_n t} となる。初期条件は
f(x)=\sum_{n=1}^{\infty} b_n\sin(n\pi x/L),\quad
b_n=\frac{2}{L}\int_0^L f(x)\sin(n\pi x/L)\,dx
により決定する。したがって
u(x,t)=\sum_{n=1}^{\infty} b_n e^{-\kappa(n\pi/L)^2t}\sin(n\pi x/L)
である。
具体例 2: 波動方程式
同じ区間と固定端で
u_{tt}=c^2u_{xx},\quad u(x,0)=f(x),\quad u_t(x,0)=g(x)
を扱う。空間モードは熱方程式と同一だが、時間方程式は
T_n''+c^2(n\pi/L)^2T_n=0
となる。したがって
u(x,t)=\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n\cos(cn\pi t/L)+d_n\sin(cn\pi t/L)\right)\sin(n\pi x/L)
である。a_n は f の sine 係数、d_n は g の sine 係数を cn\pi/L で割った量である。
固有値問題と直交性
境界条件が空間演算子の固有値問題を作る。固定端では -\frac{d^2}{dx^2} の固有関数が sine 関数になり、それらが直交するため初期条件を係数へ分解できる。変数分離は偶然の技巧ではなく、境界条件に適合する基底を探す手続きである。
限界
領域や係数が複雑で、積の形 X(x)T(t) に分解できない場合がある。非線形 PDE でも重ね合わせが成立しないため、Fourier 級数による単純な展開は使用しにくい。
よくある誤り
- 境界条件を確認せず、任意の Fourier 展開を使用する。
- 固有値問題と Fourier 級数の関係を切断する。
- 級数解の収束や境界での挙動を確認しない。