交流回路の基本
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1導入
この講義では、交流の大きさと位相を同時に扱う方法を説明する。
直流回路では、抵抗について V=RI を使えばよかった。交流回路では、電圧と電流が時間とともに振動する。コイルは電流の変化に反応し、コンデンサーは電圧の変化に反応するので、位相のずれが本質になる。
2用語と定義
角振動数 \omega とは、正弦波の位相が単位時間に進む量であり、\omega=2\pi f である。
実効値とは、同じ抵抗で同じ平均発熱を与える直流の値である。
リアクタンスとは、交流でコイルやコンデンサーが示す、電圧振幅と電流振幅の比である。
3方針
交流回路では、素子ごとに出発式を分ける。
- 抵抗:v=Ri。
- コイル:v=L\,di/dt。
- コンデンサー:q=Cv,\ i=dq/dt。
ここから、位相と振幅の関係を証明する。
4整理 1:正弦波の実効値
v(t)=V_0\sin\omega t
の実効値は
\boxed{V_{\mathrm{rms}}=\frac{V_0}{\sqrt2}}
である。電流についても
\boxed{I_{\mathrm{rms}}=\frac{I_0}{\sqrt2}}
である。
4.1証明
抵抗 R に電圧 v(t)=V_0\sin\omega t をかけると、瞬間電力は
p(t)=\frac{v(t)^2}{R}
=\frac{V_0^2}{R}\sin^2\omega t
である。1 周期の平均を取ると、
\overline{p}
=\frac{V_0^2}{R}\overline{\sin^2\omega t}
=\frac{V_0^2}{2R}
である。実効値 V_{\mathrm{rms}} は、同じ抵抗に直流電圧としてかけたとき同じ平均電力を与える値なので、
\frac{V_{\mathrm{rms}}^2}{R}=\frac{V_0^2}{2R}
である。よって
V_{\mathrm{rms}}=\frac{V_0}{\sqrt2}
を得る。電流も同じ計算である。
5関係式 2:抵抗では電圧と電流が同位相
抵抗 R で
i(t)=I_0\sin\omega t
なら、
v(t)=RI_0\sin\omega t
であり、電圧と電流は同位相である。
5.1証明
抵抗では瞬間ごとにオームの法則
v=Ri
が成立する。したがって
v(t)=R I_0\sin\omega t
である。電圧も電流も同じ \sin\omega t に比例するため、位相はずれない。
6関係式 3:コイルのリアクタンス
コイルで
i(t)=I_0\sin\omega t
なら、
v(t)=\omega L I_0\sin\left(\omega t+\frac{\pi}{2}\right)
であり、
\boxed{X_L=\omega L}
である。電圧は電流より \pi/2 だけ進む。
6.1証明
自己誘導の関係より、符号を受動符号に合わせるとコイルの端子電圧は
v=L\frac{di}{dt}
である。ここに i(t)=I_0\sin\omega t を代入すると、
\frac{di}{dt}=\omega I_0\cos\omega t
=\omega I_0\sin\left(\omega t+\frac{\pi}{2}\right)
なので、
v(t)=\omega L I_0\sin\left(\omega t+\frac{\pi}{2}\right)
である。電圧振幅は V_0=\omega LI_0 だから、振幅の比は
\frac{V_0}{I_0}=\omega L
である。これを X_L と書く。
7関係式 4:コンデンサーのリアクタンス
コンデンサーで
v(t)=V_0\sin\omega t
なら、
i(t)=\omega C V_0\sin\left(\omega t+\frac{\pi}{2}\right)
であり、
\boxed{X_C=\frac{1}{\omega C}}
である。電流は電圧より \pi/2 だけ進む。
7.1証明
コンデンサーでは
q=Cv
であり、電流は
i=\frac{dq}{dt}
である。v(t)=V_0\sin\omega t なら
q(t)=CV_0\sin\omega t
なので、
i(t)=\frac{dq}{dt}
=\omega C V_0\cos\omega t
=\omega C V_0\sin\left(\omega t+\frac{\pi}{2}\right)
である。電流振幅は I_0=\omega C V_0 だから、
\frac{V_0}{I_0}=\frac{1}{\omega C}
である。これを X_C と書く。
8関係式 5:直列 RLC 回路のインピーダンス
正弦波定常状態の直列 RLC 回路では、電流実効値 I と電圧実効値 V の比は
\boxed{Z=\frac{V}{I}=\sqrt{R^2+\left(\omega L-\frac1{\omega C}\right)^2}}
である。
8.1証明
直列では電流が共通である。抵抗の電圧は電流と同位相で IR、コイルの電圧は \pi/2 進んで I\omega L、コンデンサーの電圧は \pi/2 遅れて I/(\omega C) である。
位相が直交する成分として足すと、電流と同位相の成分は IR、直交成分は
I\left(\omega L-\frac1{\omega C}\right)
である。したがって全電圧の大きさは
V=\sqrt{(IR)^2+
\left[
I\left(\omega L-\frac1{\omega C}\right)
\right]^2}
である。I をくくると
V=I\sqrt{R^2+\left(\omega L-\frac1{\omega C}\right)^2}
なので、
Z=\frac{V}{I}
=\sqrt{R^2+\left(\omega L-\frac1{\omega C}\right)^2}
を得る。
9見分け方
- 実効値は平均発熱で定義する。
- コイルは \omega が大きいほど流れにくい。
- コンデンサーは \omega が大きいほど流れやすい。
- RLC では X_L-X_C の差が位相の原因になる。
10どこまで成立するか
ここでは正弦波の定常交流を仮定した。過渡現象では、微分方程式として時間変化を解く必要がある。
11最終形
\boxed{V_{\mathrm{rms}}=\frac{V_0}{\sqrt2}}
\boxed{X_L=\omega L,\qquad X_C=\frac1{\omega C}}
\boxed{Z=\sqrt{R^2+(X_L-X_C)^2}}
12一言
交流回路では、抵抗の大きさだけでなく、コイルとコンデンサーが作る位相差を追う。