熱力学第一法則
physicsthermodynamicsfirst-lawlecture
1導入
この講義では、熱 Q、仕事 W、内部エネルギー U を同じエネルギーでも役割で分ける方法を説明する。
内部エネルギーは系の状態量である。熱と仕事は、系の境界を通って移動するエネルギーであり、経路に依存する。第一法則は、この 3 つの収支を書いたエネルギー保存則である。
2用語と定義
この講義では、系へ入る熱を Q>0、系が外部へする仕事を W>0 と定義する。
熱力学第一法則とは、
\boxed{\Delta U=Q-W}
で表されるエネルギー保存則である。
準静的過程とは、途中の各状態で圧力や温度が定まっているとみなせるほど十分ゆっくりした過程である。
3方針
第一法則の問題では、先に条件を消す。
- 等積なら W=0。
- 等温の理想気体なら \Delta U=0。
- 断熱なら Q=0。
- 循環なら \Delta U=0。
そのあと
\Delta U=Q-W
へ代入する。
4基本法則:第一法則
系へ熱 Q が入り、系が外部へ仕事 W をしたとき、内部エネルギーの変化は
\boxed{\Delta U=Q-W}
である。
4.1位置づけと符号の確認
これは熱、仕事、内部エネルギーを結ぶ経験的な基本法則として採用する。この講義では、古典力学から証明する命題としては扱わない。
系へ入るエネルギーは内部エネルギーを増やす。熱として Q が入れば、内部エネルギーを Q だけ増やす向きに働く。
一方、系が外部へ仕事 W をすると、そのエネルギーは系から出る。したがって内部エネルギーを W だけ減らす向きに働く。
内部エネルギーの増加を「入ったエネルギー」から「外へ出たエネルギー」を引いたものとして記録するので、
\Delta U=Q-W
である。
5関係式 1:準静的な気体の仕事
気体が準静的に体積を V_A から V_B へ変えるとき、気体が外部へする仕事は
\boxed{W=\int_{V_A}^{V_B}p\,dV}
である。
5.1証明
断面積 S のピストンを考える。気体の圧力を p とすると、ピストンに働く力は
F=pS
である。ピストンが距離 dx だけ動くと、気体の体積変化は
dV=S\,dx
である。微小仕事は
dW=F\,dx=pS\,dx=p\,dV
である。全仕事はこれを始状態から終状態まで足し合わせたものなので、
W=\int_{V_A}^{V_B}p\,dV
を得る。
6整理 2:代表的な状態変化
理想気体について、次が成立する。
\boxed{\text{等積変化では }W=0,\ \Delta U=Q}
\boxed{\text{等温変化では }\Delta U=0,\ Q=W}
\boxed{\text{断熱変化では }Q=0,\ \Delta U=-W}
6.1証明
等積変化では dV=0 なので、関係式 1 より
W=\int p\,dV=0
である。第一法則に代入すると
\Delta U=Q
である。
等温変化では、理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるので、温度が変わらなければ
\Delta U=0
である。第一法則より
0=Q-W
だから Q=W である。
断熱変化では、熱の出入りがないので
Q=0
である。第一法則より
\Delta U=-W
である。
7関係式 3:可逆断熱の pV^\gamma=\text{一定}
理想気体が可逆かつ断熱に変化し、熱容量比を
\gamma=\frac{C_p}{C_V}
とすると、
\boxed{pV^\gamma=\text{一定}}
である。
7.1証明
断熱なので Q=0 である。第一法則は
dU=-p\,dV
となる。1 mol の理想気体では
dU=C_V\,dT
なので、
C_V\,dT=-p\,dV
である。さらに pV=RT より
p=\frac{RT}{V}
だから、
C_V\,dT=-\frac{RT}{V}\,dV
である。T>0 として両辺を T で割ると、
C_V\frac{dT}{T}=-R\frac{dV}{V}
である。R=C_p-C_V=(\gamma-1)C_V を使うと、
\frac{dT}{T}=-(\gamma-1)\frac{dV}{V}
である。積分して
\ln T+(\gamma-1)\ln V=\text{一定}
を得る。すなわち
TV^{\gamma-1}=\text{一定}
である。T=pV/R を代入すると
pV^\gamma=\text{一定}
を得る。
8単位の確認
p\,dV の単位は
[\mathrm{Pa};\ \mathsf{ML^{-1}T^{-2}}]
[\mathrm{m^3};\ \mathsf{L^3}]
=
[\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]
であり、仕事の単位である。
9見分け方
- Q,W,\Delta U が出たら第一法則を立てる。
- 体積一定なら W=0。
- 理想気体で温度一定なら \Delta U=0。
- 断熱なら Q=0。
- 循環なら \Delta U=0。
10どこまで成立するか
W=\int p\,dV を p\text{-}V 図の面積として読むには、途中の圧力が定まる準静的過程が必要である。また pV^\gamma=\text{一定} は可逆断熱の理想気体に対する式である。
11最終形
\boxed{\Delta U=Q-W}
\boxed{W=\int p\,dV}
\boxed{pV^\gamma=\text{一定}\quad\text{可逆断熱}}
12一言
第一法則は、熱と仕事の出入りを内部エネルギーの変化として記録する式である。