熱と気体
physicsthermodynamicsgaslecture
1導入
この講義では、熱、温度、内部エネルギーを違いを説明する。
温度は状態を表す量である。熱は温度差によって移動するエネルギーであり、系の中に「熱として保存される」わけではない。気体の状態は、圧力、体積、温度、物質量で記述する。
2用語と定義
系とは、注目する対象として切り出した部分である。
温度とは、熱平衡の向きと熱の移動方向を決める状態量である。
熱 Q とは、温度差によって系の境界を通って移動するエネルギーである。
状態量とは、現在の状態だけで決まり、途中の経路によらない量である。圧力 p、体積 V、温度 T、内部エネルギー U が代表例である。
理想気体とは、分子の大きさと分子間力を無視できる気体のモデルである。
3方針
熱力学では、まず状態を表す量を決める。
- 気体の状態なら p,V,T,n を確認する。
- 理想気体なら pV=nRT を使う。
- 熱が出たら、状態量ではなく移動エネルギーとして読む。
- 内部エネルギーが出たら、気体分子の運動エネルギーとして見る。
4整理 1:状態量の変化は経路によらない
状態量 X について、状態 A から状態 B への変化量は
\boxed{\Delta X=X_B-X_A}
であり、途中の経路によらない。とくに同じ状態に戻る循環過程では
\boxed{\Delta X=0}
である。
4.1証明
状態量とは、状態だけで値が決まる量である。始点が A、終点が B なら、値はそれぞれ X_A、X_B である。したがって変化量は
\Delta X=X_B-X_A
である。途中でどの経路を通っても、始点と終点が同じなら X_A と X_B は変わらない。よって \Delta X は経路によらない。循環過程では A=B なので X_B=X_A であり、\Delta X=0 である。
5方程式 2:理想気体の状態方程式
理想気体では、圧力 p、体積 V、物質量 n、絶対温度 T の間に
\boxed{pV=nRT}
が成立する。ここで R は気体定数である。
5.1証明
理想気体の経験法則として、温度と物質量が一定なら
pV=\text{一定}
である。また、圧力と物質量が一定なら V は T に比例し、同じ p,V,T では気体の量が 2 倍なら n も 2 倍である。したがって pV は nT に比例する。
その比例定数を R と定義すると、
pV=nRT
を得る。
6関係式 3:単原子理想気体の内部エネルギー
単原子理想気体の内部エネルギーは
\boxed{U=\frac32nRT}
であり、温度だけで決まる。
6.1証明
単原子理想気体では、分子の内部振動や回転を考えず、分子の並進運動だけを考える。気体分子運動論では、
pV=\frac13Nm\langle v^2\rangle
である。ここで N は分子数、m は 1 分子の質量、\langle v^2\rangle は速さの 2 乗の平均である。
全ての分子の並進運動エネルギーは
U=N\cdot\frac12m\langle v^2\rangle
である。上の式から
Nm\langle v^2\rangle=3pV
なので、
U=\frac12\cdot3pV=\frac32pV
である。理想気体の状態方程式 pV=nRT を代入して
U=\frac32nRT
を得る。
7単位の確認
pV の単位は
pV:
[\mathrm{Pa};\ \mathsf{ML^{-1}T^{-2}}]
[\mathrm{m^3};\ \mathsf{L^3}]
=
[\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]
である。したがって nRT もエネルギーの単位をもつ。
8見分け方
- p,V,T,n が出たら、まず pV=nRT を考える。
- 熱 Q は状態量ではなく、過程で移動したエネルギーである。
- 単原子理想気体の U は T だけで決まる。
9どこまで成立するか
理想気体は近似である。高圧、低温、凝縮に近い状態では分子の大きさや分子間力を無視できず、pV=nRT からずれる。内部エネルギー U=\frac32nRT も、単原子理想気体に限った式である。
10最終形
\boxed{pV=nRT}
\boxed{U=\frac32nRT\quad\text{単原子理想気体}}
11一言
温度は状態量、熱は移動エネルギーである。この区別が熱力学の入口である。