音波の基本
1導入
この講義では、音を空気などの媒質の圧縮と膨張が伝わる縦波として解説する。
音源そのものが耳まで飛んでくるのではない。空気の各部分が前後に振動し、圧力の高い部分と低い部分が伝わる。
2用語と定義
縦波とは、媒質の振動方向と波の進行方向が平行な波である。
疎密波とは、媒質の密度が大きい部分と小さい部分が伝わる波である。音波は典型的な疎密波である。
うなりとは、近い振動数の 2 つの音を重ねたとき、音の強弱が周期的に変わる現象である。
3方針
音波では、まず何を問われているかを分ける。
- 高さは振動数で決まる。
- 大きさは振幅や強度で決まる。
- 速さは媒質で決まる。
- 共鳴は定常波の境界条件で決まる。
4帰結 1:音波でも v=f\lambda が成立する
音波の速さを v、振動数を f、波長を \lambda とすると、
\boxed{v=f\lambda}
である。
4.1証明
音波も周期的な波である。1 周期 T の間に圧縮の山は 1 波長 \lambda だけ進む。したがって
v=\frac{\lambda}{T}
である。f=1/T より、
v=f\lambda
を得る。
5関係式 2:うなりの振動数
振動数 f_1 と f_2 の 2 つの音を重ねると、うなりの振動数は
\boxed{f_{\mathrm{beat}}=|f_1-f_2|}
である。
5.1証明
2 つの音を
y_1=A\cos(2\pi f_1t),
\qquad
y_2=A\cos(2\pi f_2t)
とする。和積公式より
y_1+y_2
=
2A\cos\{ \pi(f_1-f_2)t \}
\cos\{ \pi(f_1+f_2)t \}
である。速く振動する因子 \cos\{\pi(f_1+f_2)t\} の振幅が、遅い因子
2A\cos\{\pi(f_1-f_2)t\}
で変化する。音の大きさは振幅の絶対値で決まるため、強さの山は
|f_1-f_2|
の回数で現れる。したがって、うなりの振動数は |f_1-f_2| である。
6帰結 3:気柱共鳴は定常波で決まる
片端閉管の長さを L とすると、共鳴する振動数は
\boxed{f_n=\frac{(2n-1)v}{4L}}
である。
6.1証明
閉口端では空気の変位が 0 なので節である。開口端では空気が動きやすく、変位の腹である。したがって管の長さは
L=(2n-1)\frac{\lambda}{4}
である。よって
\lambda=\frac{4L}{2n-1}
であり、v=f\lambda から
f_n=\frac{(2n-1)v}{4L}
を得る。
7単位の確認
f_{\mathrm{beat}}=|f_1-f_2| では、f_1 と f_2 はどちらも [\mathrm{Hz};\ \mathsf{T^{-1}}] なので、差も [\mathrm{Hz};\ \mathsf{T^{-1}}] である。
8具体例
440 Hz と 442 Hz の音を同時に鳴らすと、
f_{\mathrm{beat}}=|442-440|=2\ [\mathrm{Hz};\ \mathsf{T^{-1}}]
である。1 秒あたり 2 回、強く聞こえる。
9見分け方
- 音の高さなら振動数を見る。
- 音の大きさなら振幅や強度を見る。
- 波長と振動数なら v=f\lambda を使う。
- 近い 2 振動数なら、うなりを疑う。
- 管の共鳴なら、開口端と閉口端を確認する。
10どこまで成立するか
音速は媒質の性質と温度に依存する。空気の音速を 340\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] とするのは近似である。気柱では開口端補正により、有効長は実際の長さより少し長くなる。
11最終形
\boxed{v=f\lambda}
\boxed{f_{\mathrm{beat}}=|f_1-f_2|}
\boxed{f_n=\frac{(2n-1)v}{4L}}
12一言
音波は空気の疎密が伝わる縦波である。高さ、大きさ、速さを混同しない。