通信工学の基本
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1導入
この講義では、信号を時間領域と周波数領域の双方で表現し、通信路の作用、変調、雑音、帯域制約を分析する方法を説明する。
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2信号と周波数
信号とは、情報を伝達または表現する、時間や空間などの変数の関数である。この講義では連続時間信号 x(t) を扱う。
周波数とは、周期的な変化が単位時間に反復する回数である。周波数 f の単位は Hz であり、角周波数との関係は \omega=2\pi f である。
通信工学では虚数単位を j と表し、j^2=-1 とする。x とそのフーリエ変換がともに可積分で、x が連続である場合を考える。フーリエ変換を
X(f)=\int_{-\infty}^{\infty}x(t)e^{-j2\pi ft}\,dt
とする。逆変換は
x(t)=\int_{-\infty}^{\infty}X(f)e^{j2\pi ft}\,df
であり、これらの仮定の下で各時刻において反転できる。X(f) は、x(t) に含まれる各周波数成分の振幅と位相を表現する。数学の参照講義で用いる角周波数の変換 X_\omega(\omega) とは、X(f)=X_\omega(2\pi f) の関係にある。より一般の信号には、二乗可積分関数や超関数としてフーリエ変換を拡張する。
3線形時不変システム
線形時不変システムとは、重ね合わせを保存する線形性と、入力の時間移動が出力の同じ時間移動を生じる時不変性を満たすシステムである。
LTI システムのインパルス応答を h(t) とすると、入力 x(t) と出力 y(t) の関係は
y(t)=(h*x)(t)=\int_{-\infty}^{\infty}h(\tau)x(t-\tau)\,d\tau
である。フーリエ変換が存在する条件の下では、周波数応答 H(f) によって
Y(f)=H(f)X(f)
と表現できる。複素指数関数は LTI システムの固有関数であり、システムは入力複素指数関数の周波数を保存し、その複素振幅に H(f) を乗じる。この性質により、フィルタや通信路を周波数ごとに分析できる。
4変調とスペクトル移動
変調とは、情報を表すベースバンド信号に応じて、搬送波の振幅、周波数、位相などを変化させる操作である。ここでは周波数移動を明確にするため、両側波帯抑圧搬送波振幅変調を例とする。
s(t)=m(t)\cos(2\pi f_c t)
このとき、フーリエ変換の周波数移動則から
S(f)=\frac{1}{2}\left\{M(f-f_c)+M(f+f_c)\right\}
を得る。したがって、ベースバンドスペクトルは \pm f_c の周囲へ複写される。M(f)=0 が |f|>B で成立し、f_c>B なら、正周波数側の側波帯は f_c-B から f_c+B に及び、その占有帯域幅は 2B である。変調によって、アンテナや通信路に適した周波数帯の利用、および複数信号への異なる周波数帯の割当てが可能となる。復調には、使用した変調方式に対応する受信処理が必要である。
5雑音と SNR
加法性雑音を仮定すると、受信信号は
r(t)=s(t)+n(t)
と表現できる。ここで n(t) は雑音である。信号対雑音比とは、同一の測定点および測定帯域で評価した信号電力 P_s と雑音電力 P_n の比である。
\mathrm{SNR}=\frac{P_s}{P_n},\qquad P_n>0
確定的信号 u(t) の平均電力は、極限が存在する場合に
P_u=\lim_{T\to\infty}\frac{1}{2T}\int_{-T}^{T}|u(t)|^2\,dt
と定義する。確率的雑音 n(t) が広義定常であると仮定すると、二乗値の期待値 P_n=\mathbb E[|n(t)|^2] は時刻に依存せず、平均電力を表す。この値は、平均が 0 の場合にのみ分散と一致する。
dB 表示では
\mathrm{SNR}_{\mathrm{dB}}=10\log_{10}\frac{P_s}{P_n}
となる。SNR は受信品質を評価する指標の一つであるが、同一の SNR でも、変調方式、符号化、雑音分布、判定方式によって誤り率は異なる。
6帯域
帯域とは、信号またはシステムが占有または通過させる周波数範囲、あるいはその幅である。ただし、帯域の定義は文脈に依存する。厳密に帯域制限されたベースバンド信号では、ある B>0 に対して |f|>B で X(f)=0 となり、B を片側帯域幅または最高周波数と呼ぶ。両側の支持範囲 [-B,B] の幅は 2B である。実際の信号やフィルタではスペクトルが完全には 0 にならないことがあるため、占有帯域幅や 3 dB 帯域幅など、目的に応じた規約を用いる。
広い帯域は、より急速な波形変化や高い情報速度を実現する余地を与えるが、達成可能な通信速度は帯域だけでは決まらない。SNR、変調、符号化、許容誤り率なども関係する。
7要点
- フーリエ変換は信号を周波数成分へ分解する。
- LTI システムは畳み込みで記述され、周波数領域では周波数応答との乗算になる。
- 変調は情報信号のスペクトルを伝送に適した周波数帯へ移動できる。
- SNR は同一の測定点と帯域における信号電力と雑音電力の比である。
- 帯域幅を述べるときは、帯域制限、占有帯域幅、3 dB 帯域幅などの定義を明示する。
8次に進む講義
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