ステップ関数・デルタ分布・因果的畳み込み
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1導入
この講義では、有限な大きさの入力が切り替わるステップ入力と、有限の総量を瞬間に与えるデルタ入力の相違を説明する。前者は一階方程式の解を連続に接続し、後者は解に跳躍を生じさせる。因果的な線型時不変系では、その零状態応答をインパルス応答との畳み込みで表せる。
2ステップとデルタの定義
a>0 とする。Heaviside 階段関数 H(t-a) は
H(t-a)=
\begin{cases}
0,&t<a,\\
1,&t>a
\end{cases}H(t-a)=
\begin{cases}
0,&t<a,\\
1,&t>a
\end{cases}
である。t=a での値は、通常の積分や以下の連続解に影響しない。
Dirac のデルタ \delta(t-a) は通常関数ではなく分布である。滑らかで、ある有限区間の外では 0 となる試験関数 \varphi に
\langle\delta(t-a),\varphi(t)\rangle=\varphi(a)
と作用することで定義する。積分記号では
\int\delta(t-a)\varphi(t)\,dt=\varphi(a)
と略記する。とくに \varphi=1 を a の近くで満たす試験関数を選べば、デルタの全質量は 1 である。また、分布の意味で
\frac{d}{dt}H(t-a)=\delta(t-a)
が成立する。
3有限ステップ入力に対する解の連続性
\lambda>0、a>0 とし、
y'+\lambda y=F H(t-a),\qquad y(0)=0
を考える。0\le t<a では y=0 である。a-\varepsilon から a+\varepsilon まで方程式を積分すると
y(a+\varepsilon)-y(a-\varepsilon)
+\lambda\int_{a-\varepsilon}^{a+\varepsilon}y(t)\,dt
=F\int_{a-\varepsilon}^{a+\varepsilon}H(t-a)\,dt.
y が局所的に有界であるとして \varepsilon\to0 とすれば、積分項は 0 へ近づき、
y(a+)-y(a-)=0
となる。したがって y(a)=0 を接続条件として t>a の方程式を解けば
y(t)=\frac{F}{\lambda}H(t-a)\bigl(1-e^{-\lambda(t-a)}\bigr)
を得る。
4デルタ入力は跳躍を生じさせる
つぎに
y'+\lambda y=A\delta(t-a),\qquad y(0)=0
を分布の意味で考える。a の前後で積分し、\varepsilon\to0 とすれば
y(a+)-y(a-)=A
を得る。a より前では y=0 なので、
y(t)=A H(t-a)e^{-\lambda(t-a)}
である。一階方程式では状態 y が A だけ跳躍する。二階方程式
p(t)y''+q(t)y'+r(t)y=A\delta(t-a)
については、p\in C^1、q,r が a の近傍で連続、p(a)\ne0 とし、y は a の両側で C^2 級かつ y,y' が有限な片側極限をもつ区分的古典解とする。[y]_a=y(a+)-y(a-) と記すと、分布微分の特異部分は
y''=\cdots+[y']_a\delta(t-a)+[y]_a\delta'(t-a)
である。p(t)\delta'(t-a)=p(a)\delta'(t-a)-p'(a)\delta(t-a) に注意すると、方程式の \delta' の係数は p(a)[y]_a、\delta の係数は p(a)[y']_a+(q(a)-p'(a))[y]_a である。まず \delta' の係数比較から [y]_a=0 を得て、つぎに \delta の係数比較から p(a)[y']_a=A を得る。したがって y は連続であり、y'(a+)-y'(a-)=A/p(a) となる。この結論は、ここで明示した区分的正則性と係数の仮定に依存する。
5因果的畳み込みとラプラス変換
t\ge0 で定義された f,g を t<0 では 0 とみなす。片側の因果的畳み込みを
(f*g)(t)=\int_0^t f(t-\tau)g(\tau)\,d\tau
と定義する。f,g が各有限区間で区分的連続かつ指数位数で、積分が絶対収束して積分順序を交換できる共通収束半平面では、
\mathcal L\{f*g\}(s)=\mathcal L\{f\}(s)\mathcal L\{g\}(s)
が成立する。a>0 に対する基本的な変換対は
\mathcal L\{H(t-a)\}=\frac{e^{-as}}s,
\qquad
\mathcal L\{\delta(t-a)\}=e^{-as}
である。前者の収束域は \operatorname{Re}s>0 である。後者はラプラス変換を分布へ拡張した式であり、固定した a>0 に対して s の全複素平面で定義される。デルタは畳み込みの平行移動も表し、因果的な f について
(\delta(\,\cdot-a)*f)(t)=H(t-a)f(t-a)
となる。
6零入力応答と零状態応答への分解
線型時不変系(LTI 系)とは、入力の線型結合が出力の同じ線型結合へ対応し、入出力写像が時間推移と可換である系をいう。さらに時刻 t の出力が未来の入力に依存しないとき因果的という。
y'+\lambda y=f(t) の因果的なインパルス応答は
h(t)=H(t)e^{-\lambda t}
であり、分布の意味で h'+\lambda h=\delta(t) を満たす。初期値が 0 の零状態応答は
y_{\mathrm{zs}}(t)=(h*f)(t)
=\int_0^t e^{-\lambda(t-\tau)}f(\tau)\,d\tau
である。非零初期値 y(0)=y_0 では、入力を 0 とした零入力応答を加えて
y(t)=y_0e^{-\lambda t}+(h*f)(t)
となる。したがって「一般入力への応答は h*f」という主張は、因果的 LTI 系の零状態応答に限る。
7単位の契約
[t]=\mathrm s、[y]=\mathrm Y と記す。y'+\lambda y=f(t) の各項を加算するには
[\lambda]=\mathrm{s^{-1}},
\qquad
[f]=\mathrm{Y/s}
でなければならない。[\delta(t-a)]=\mathrm{s^{-1}} なので、A\delta(t-a) を右辺へ置くとき [A]=\mathrm Y である。すなわち A は
\int_{a-\varepsilon}^{a+\varepsilon}A\delta(t-a)\,dt=A
という時間積分された入力強度であり、y の跳躍量と同じ単位を持つ。
8成立範囲
デルタを含む等式と微分は分布の意味で解釈する。畳み込みによる 1 個のインパルス応答の表示は、線型性・時不変性・因果性と零状態の契約に依存する。非線型系や時変系では、この表示は一般に成立しない。
9演習と総合講義
data/exercise/math/differential-equations/step-delta-and-convolution.exercise.n.md
ラプラス変換・級数法・定性解析・数値解法を含む ODE 全体の方法選択は、次の総合講義で確認する。
data/lecture/math/differential-equations/laplace-transforms-series-and-modeling.lecture.n.md
10関連リンク
data/lecture/math/analysis/introduction-to-laplace-transform.lecture.n.md