酸塩基滴定の基本
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1導入
この講義では、酸塩基滴定を中和したという事実から、未知の物質量や濃度を逆算する操作として解説する。
滴定では器具の操作が目立つが、計算の本体は反応式の係数比である。体積どうしをそのまま比較せず、必ず物質量へ直してから比較する。
2用語と定義
滴定とは、濃度が既知の溶液を少量ずつ加え、反応の完了点から未知の濃度や物質量を求める操作である。
標準液とは、濃度が正確に分かっている溶液である。
当量点とは、酸と塩基が反応式の係数比どおりに過不足なく反応した点である。
終点とは、指示薬などで実験的に検出する変化点である。理想的には当量点と一致させたいが、概念としては区別する。
3方針
酸塩基滴定の計算は、次の順序で実行する。
- 中和反応式を書く。
- 当量点で反応した酸と塩基の物質量比を読む。
- n=cV で体積と濃度を物質量へ直す。
- 未知量を解く。
4直感的な説明
濃度が分かっている塩基を酸へ少しずつ加える。酸が持つプロトンを塩基が受け取り、ちょうど過不足がなくなった瞬間が当量点である。その瞬間には、反応式が要求する物質量比が成立している。
5厳密な説明
5.1関係式:当量点では反応式の係数比が物質量比になる
仮定として、中和反応式が a\mathrm{A}+b\mathrm{B}\rightarrow\text{products} と表され、当量点に達したとする。結論は、反応した物質量 n_{\mathrm A},n_{\mathrm B} について n_{\mathrm A}:n_{\mathrm B}=a:b である。
証明する。当量点とは、反応式どおりに過不足なく反応した点である。反応式の係数は物質量比を表すので、過不足がない時点では消費された物質量の比が a:b でなければならない。したがって n_{\mathrm A}:n_{\mathrm B}=a:b が成立する。□
5.21:1 中和の公式が出る理由
\mathrm{HCl+NaOH\rightarrow NaCl+H_2O} のように係数比が 1:1 の場合、当量点では
n(\mathrm{HCl})=n(\mathrm{NaOH})
である。n=cV を使うと、
c_{\mathrm{HCl}}V_{\mathrm{HCl}}
=
c_{\mathrm{NaOH}}V_{\mathrm{NaOH}}
を得る。この式は 1:1 反応でのみ直接成立する。係数比が異なる場合は、係数を含めて立式する。
6具体例
0.100\ [\mathrm{mol(NaOH)/L};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}\mathsf{L}^{-3}] の水酸化ナトリウム水溶液 25.0\ [\mathrm{mL};\ \mathsf{L^3}] が、塩酸 20.0\ [\mathrm{mL};\ \mathsf{L^3}] を中和したとする。
反応式は 1:1 である。
\mathrm{HCl+NaOH\rightarrow NaCl+H_2O}
当量点では n(\mathrm{HCl})=n(\mathrm{NaOH}) なので、
c_{\mathrm{HCl}}V_{\mathrm{HCl}}
=
c_{\mathrm{NaOH}}V_{\mathrm{NaOH}}
体積は同じ単位へ揃えれば比として使用できる。したがって、
c_{\mathrm{HCl}}
=
\frac{0.100\times25.0}{20.0}
=0.125\ [\mathrm{mol(HCl)/L};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}\mathsf{L}^{-3}]
7見分け方
| 手がかり | 確認すること |
| 滴定、中和 | 反応式の係数比 |
| 体積だけが並ぶ | 濃度を掛けて物質量に直す |
| 多価酸・多価塩基 | プロトンの個数と係数 |
| 指示薬 | 終点と当量点の差 |
8どこまで成立するか
滴定計算では、反応が反応式どおりに定量的に進行し、当量点を適切に検出できることを仮定する。弱酸や弱塩基では滴定曲線と指示薬の選択が重要になる。
9最終形
\boxed{\text{当量点では反応式の係数比どおりに物質量が反応する}}
\boxed{n=cV}
10一言でいうと
酸塩基滴定は、中和の完了を物質量比として読み、未知濃度を逆算する操作である。