物質量とモル
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1導入
この講義では、物質量を目に見える質量や体積と、目に見えない粒子数を接続する共通単位として解説する。
化学反応は粒子どうしの反応である。しかし、実験で測定するのは質量、体積、濃度である。したがって、化学計算では、最初にこれらを物質量へ変換する。
2用語と定義
モルとは、ちょうど 6.02214076\times 10^{23} 個の指定された粒子を 1 単位とする物質量の SI 単位である。
アボガドロ定数 N_{\mathrm A} は、次の正確な値として定義される。
N_{\mathrm A}=6.02214076\times 10^{23}\ [\mathrm{mol^{-1}};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}^{-1}]
モル質量 M とは、1\ [\mathrm{mol(substance)};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}] あたりの質量である。たとえば M\ [\mathrm{g(NaCl)/mol(NaCl)};\ \mathsf{M}\mathsf{N}_{\mathrm{amt}}^{-1}] と書く。
モル濃度 c とは、溶液 1\ [\mathrm{L};\ \mathsf{L^3}] あたりの物質量である。
3方針
化学計算では、次の翻訳を先に実行する。
\text{質量・濃度・体積・粒子数}
\longrightarrow
\text{物質量}
\longrightarrow
\text{反応式の係数比}
この方針を選ぶ理由は、化学反応式の係数が質量比ではなく粒子数比、したがって物質量比を表すからである。
4直感的な説明
卵を 12 個で 1 ダースと数えるように、化学では粒子を 6.02214076\times 10^{23} 個で 1 mol と数える。ダースが卵にも鉛筆にも使えるように、モルは原子、分子、イオン、電子にも使える。ただし、何のモルかを失うと反応の意味が崩れるので、\mathrm{mol(NaCl)} のように物質名を単位へ残す。
5厳密な説明
5.1関係式 1:粒子数と物質量の関係
仮定として、粒子数を N、物質量を n とする。結論は N=nN_{\mathrm A} である。
証明する。1 mol は N_{\mathrm A} 個の粒子であると定義した。したがって n mol は、その n 倍の粒子を含む。よって N=nN_{\mathrm A} が成立する。□
5.2関係式 2:質量から物質量への変換
仮定として、質量を m、モル質量を M、物質量を n とする。結論は n=m/M である。
証明する。モル質量 M は 1\ [\mathrm{mol(substance)};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}] あたりの質量である。したがって n mol の質量は m=nM である。M\neq 0 なので両辺を M で割り、n=m/M を得る。□
単位は次のように追跡できる。
\frac{
m\ [\mathrm{g(substance)};\ \mathsf{M}]
}{
M\ [\mathrm{g(substance)/mol(substance)};\ \mathsf{M}\mathsf{N}_{\mathrm{amt}}^{-1}]
}
\ [\mathrm{mol(substance)};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}]
5.3関係式 3:濃度と体積から物質量が出る
仮定として、モル濃度を c、体積を V、物質量を n とする。結論は n=cV である。
証明する。モル濃度は単位体積あたりの物質量である。すなわち c=n/V である。V\neq 0 の溶液を考えているので、両辺に V を掛けて n=cV を得る。□
6具体例
問題として、5.85\ [\mathrm{g(NaCl)};\ \mathsf{M}] の塩化ナトリウムが何 mol かを求める。塩化ナトリウムのモル質量を 58.5\ [\mathrm{g(NaCl)/mol(NaCl)};\ \mathsf{M}\mathsf{N}_{\mathrm{amt}}^{-1}] とする。
質量から物質量へ変換するので、関係式 2 を用いる。
n=\frac{5.85}{58.5}=0.100\ [\mathrm{mol(NaCl)};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}]
この具体例で確認しているのは、質量をそのまま反応式へ入れず、必ず物質量へ戻すという基本操作である。
7見分け方
| 与えられた量 | 最初に使う式 |
| 質量 m | n=m/M |
| 粒子数 N | n=N/N_{\mathrm A} |
| モル濃度 c と体積 V | n=cV |
| 理想気体の P,V,T | n=PV/(RT) |
8どこまで成立するか
モルの定義とアボガドロ定数の値は正確な SI 定義である。一方、標準状態で 1\ [\mathrm{mol(gas)};\ \mathsf{N}_{\mathrm{amt}}] が約 22.4\ [\mathrm{L};\ \mathsf{L^3}] を占めるという値は、理想気体に近い条件での近似である。正確な定義と近似値を混同してはならない。
9最終形
\boxed{N=nN_{\mathrm A}}
\boxed{n=\frac{m}{M}}
\boxed{n=cV}
10一言でいうと
物質量は、質量・体積・濃度・粒子数を反応式の係数比へ接続する共通単位である。