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複素積分の基本md 69007be
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複素積分の基本
mathanalysiscomplex-analysisundergraduatelecture
1導入
この講義で中心に置く発想は、複素積分では「どの点を通るか」だけでなく、「どの経路を通るか」が一見重要そうに見えて、正則であるとその依存が強く消えることである。
実数の積分では、区間にそって面積を足す感覚が中心だった。複素積分では、複素平面の曲線にそって値を足し合わせる。ところが正則関数では、この積分がきわめて強い性質を持つ。
2用語と定義
複素積分 とは、曲線 C にそって
\int_C f(z)\,dz
を考えることである。
コーシーの積分定理 とは、単連結な領域 D 上で正則な関数を、D 内の区分的に C^1 級な閉曲線にそって積分すると 0 になる、という定理である。
4直感的な説明
平面の上を歩きながら、その場所ごとの値を拾っていくのが複素積分である。ふつうは経路を変えれば結果も変わりそうだが、単連結領域で正則な関数では、領域内の閉じた経路を回る積分が 0 になる。
このため、「関数の内部の情報が、周囲の積分だけで読める」という、実解析ではかなり特別な現象が起こる。
5厳密な説明
5.11. 複素積分の定義
区分的に C^1 級な曲線 C を z:[a,b]\to\mathbb C と媒介変数表示すると、
\int_C f(z)\,dz=\int_a^b f(z(t))z'(t)\,dt
である。
これは複素積分を実数の積分へ戻して定義している、ということである。したがって、まず経路を媒介変数で書き、その上で値を拾う、という手順になる。
5.22. コーシーの積分定理
単連結な領域で正則な関数 f に対して、
\oint_C f(z)\,dz=0
が成立する。
ここで重要なのは、閉曲線が単連結領域 D の中にあり、f が D 全体で正則であることである。単連結性により、閉曲線は D の中で 1 点へ連続的に縮められる。穴や特異点を回る曲線では、この結論を一般には適用できない。
5.33. コーシーの積分表示
C を正の向きに回る区分的に C^1 級な単純閉曲線とする。f が C とその内部を含む開集合で正則なら、C の内側の点 z_0 に対して
f(z_0)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C \frac{f(z)}{z-z_0}\,dz
と表せる。
この式は、内部の 1 点の値が、周囲の積分で回収できることを意味する。
この公式が強力なのは、値だけでなく微分係数まで積分から回収できる出発点になるからである。ここに、複素解析が実解析よりずっと強い結論を持つ理由の 1 つがある。
6別の見方
6.1幾何的な見方
複素積分は、複素平面の上の道にそって値を足し合わせる操作である。この見方では、「閉じて回ると 0 になる」という定理は、内部に渦のような特異点がない場では打ち消し合う、と読める。
6.2解析的な見方
実解析では積分は面積の感覚が強いだが、複素解析では積分が関数値や微分係数を回収する道具になる。この見方では、積分表示が平均値の公式を非常に強くしたものだと見える。
6.3作用素による見方
積分を 1 つの変換と見ると、正則関数はこの変換に対してきわめて安定な関数族である。したがって複素積分は、ただ値を足すだけでなく、正則関数の構造を読み取る作用素だと考えられる。
7見分け方
- 複素平面の曲線にそった積分が出たら、まず正則かどうかを確認する。
- 閉曲線と正則が並んだら、積分定理を疑う。
- 関数値を積分で表したいときは、積分表示を思い出する。
8どこまで成立するか
積分定理と積分表示は、正則であることと領域の条件に強く依存する。特異点を囲むときや、単連結でない領域では、そのまま使えないことがある。
9最終形
\boxed{\int_C f(z)\,dz=\int_a^b f(z(t))z'(t)\,dt}
\boxed{\substack{f\text{ は単連結領域 }D\text{ で正則}\\C\subset D\text{ は区分的 }C^1\text{ 級の閉曲線}}\ \Longrightarrow\ \oint_C f(z)\,dz=0}
\boxed{\substack{C\text{ は正向きで区分的 }C^1\text{ 級の単純閉曲線、}z_0\text{ はその内部}\\f\text{ は }C\text{ と内部を含む開集合で正則}}\ \Longrightarrow\ f(z_0)=\frac{1}{2\pi i}\oint_C \frac{f(z)}{z-z_0}\,dz}
10一言でいうと
- 複素積分では、正則であることが経路依存性を強く縛り、関数の値まで積分から回収できるようになる。