定数変化法と Wronskian
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導入
このページの核心は、同次方程式の独立解を基礎にし、定数を関数へ変化させることで非同次方程式の特解を構成することである。
位置づけ
未定係数法は右辺の形に強く依存する。定数変化法は計算が重くなる場合があるが、右辺の形に比較的依存しない一般法である。
標準形
y''+P(x)y'+Q(x)y=R(x)
で、同次方程式の独立解 y_1,y_2 が既知であるとする。特解を
y_p=u_1(x)y_1(x)+u_2(x)y_2(x)
と置く。
Wronskian の役割
Wronskian は
W(y_1,y_2)=
\begin{vmatrix}
y_1&y_2\\
y_1'&y_2'
\end{vmatrix}
=y_1y_2'-y_1'y_2
である。W\ne 0 は、y_1,y_2 が独立解として基本解系を構成することを示す。
解法の流れ
補助条件として
u_1'y_1+u_2'y_2=0
を課す。これにより二階微分の計算を整理できる。さらに方程式へ代入すると
u_1'y_1'+u_2'y_2'=R(x)
を得る。この 2 本の連立方程式を解く過程で Wronskian が分母に現れる。
具体的には、
u_1'=-\frac{y_2R}{W},\qquad
u_2'=\frac{y_1R}{W}
を得る。補助条件を課す理由は、u_1'',u_2'' を含む複雑な項を発生させず、未知量を u_1',u_2' に限定するためである。定数を関数へ変化させるという発想は、そのままでは自由度が過剰であるため、補助条件で整理する。
公式の導出
上記の公式を導出する。まず
y_p=u_1y_1+u_2y_2
とおくと、
y_p'=u_1'y_1+u_1y_1'+u_2'y_2+u_2y_2'
である。補助条件
u_1'y_1+u_2'y_2=0
を課すと、
y_p'=u_1y_1'+u_2y_2'
へ簡約される。さらに微分して
y_p''=u_1'y_1'+u_1y_1''+u_2'y_2'+u_2y_2''
を得る。これを
y''+P(x)y'+Q(x)y=R(x)
へ代入する。y_1,y_2 は同次方程式の解であるため、
u_1(y_1''+Py_1'+Qy_1)+u_2(y_2''+Py_2'+Qy_2)
は 0 になる。したがって残るのは
u_1'y_1'+u_2'y_2'=R(x)
だけである。よって u_1',u_2' は
\begin{cases}
u_1'y_1+u_2'y_2=0,\\
u_1'y_1'+u_2'y_2'=R(x)
\end{cases}\begin{cases}
u_1'y_1+u_2'y_2=0,\\
u_1'y_1'+u_2'y_2'=R(x)
\end{cases}
を満たす。この連立一次方程式の係数行列は
\begin{pmatrix}
y_1&y_2\\
y_1'&y_2'
\end{pmatrix}
であり、その行列式が Wronskian
W=y_1y_2'-y_1'y_2
である。Cramer 法則を適用すると
u_1'=
\frac{
\begin{vmatrix}
0&y_2\\
R&y_2'
\end{vmatrix}
}{W}
=-\frac{y_2R}{W}
および
u_2'=
\frac{
\begin{vmatrix}
y_1&0\\
y_1'&R
\end{vmatrix}
}{W}
=\frac{y_1R}{W}
を得る。したがって、定数変化法の公式は記憶する対象ではなく、補助条件と連立一次方程式から再構成できる。
具体例
y''+y=\tan x
では同次解は y_1=\cos x,\ y_2=\sin x である。右辺 \tan x は未定係数法に適さないが、定数変化法では R(x)=\tan x を用いて u_1',u_2' を求められる。
ここで W(\cos x,\sin x)=1 であるため、
u_1'=-\sin x\tan x,\qquad
u_2'=\cos x\tan x=\sin x
となる。したがって u_2=-\cos x であり、u_1 は -\int \sin x\tan x\,dx で表現される。積分は未定係数法より重くなるが、右辺の関数形に強く依存しない点が利点である。
一次連立系との対応
連立系 \boldsymbol{x}'=A(x)\boldsymbol{x}+\boldsymbol{g}(x) では、基本解行列 \Phi(x) を用いて
\boldsymbol{x}_p=\Phi(x)\int \Phi(x)^{-1}\boldsymbol{g}(x)\,dx
と表現できる。これは定数変化法の行列版である。
どこまで成り立つか
定数変化法は理論的に広いが、積分が初等関数で表現できるとは限らない。また、基本解 y_1,y_2 を事前に得る必要がある。
さらに、Wronskian が 0 になる点を含む区間では、この公式をそのまま使用できない。基本解系を固定する区間、係数の連続性、標準形への変形を確認してから適用する必要がある。
Wronskian で割るときの条件確認
定数変化法では、係数を求める途中で Wronskian
W(y_1,y_2)=y_1y_2'-y_1'y_2
を分母にもつ式が現れる。したがって、この方法をその区間で使うには、少なくともその区間で
W(x)\ne0
であることを確認する。割り算が実際に出る場面なので、この条件は省略しない。