方向場・Euler 法・誤差と安定性の入口
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導入
このページの核心は、解析解が得られない場合でも、方向場で解の傾向を把握し、Euler 法で近似解を構成し、誤差と安定性を別概念として確認することである。
何を解くページか
標準形は
y'=f(x,y),\qquad y(x_0)=y_0
である。方向場 は、各点 (x,y) に傾き f(x,y) を配置した図式である。Euler 法 は、現在点の傾きで短い直線近似を行う数値解法である。
なぜこの方針を選ぶのか
微分は局所的な一次近似を与える。したがって、現在点で y'=f(x,y) を評価すれば、短い区間では y がどちらへ変化するかを推定できる。方向場は式を解かずに全体傾向を確認する道具であり、Euler 法はその局所近似を反復する方法である。
解法の流れ
初期値 y(x_0)=y_0 と刻み幅 h を設定する。Euler 法では
x_{n+1}=x_n+h,\qquad y_{n+1}=y_n+h f(x_n,y_n)
と更新する。これは Taylor 展開
y(x+h)=y(x)+h y'(x)+O(h^2)
の一次項で切る近似である。したがって局所打切り誤差は O(h^2) であり、有限区間で反復した大域誤差は標準的に O(h) である。
具体例
増加する例
y'=y,\qquad y(0)=1
で h=0.1 とすると、Euler 法は y_{n+1}=1.1y_n を与える。したがって y_1=1.1,\ y_2=1.21 である。正確解 e^x と比較すると、刻み幅を縮小すると近似が改善する。
安定性が問題になる例
y'=ay,\qquad a<0
の真の解は減衰する。Euler 法では
y_{n+1}=(1+ah)y_n
である。数値解が減衰するには |1+ah|<1 が必要である。たとえば a=-10、h=0.3 では 1+ah=-2 となり、真の解は減衰するにもかかわらず数値解は振動しながら増大する。
精度と安定性の区別
精度は、刻み幅を小さくしたとき真の解へどの速さで接近するかを表す。安定性は、反復が誤差を増幅するか抑制するかを表す。高精度な方法でも、問題と刻み幅の組合せによって不安定になることがある。
陰的方法への接続
Forward Euler 法は現在点の傾き f(x_n,y_n) を使用する。一方、Backward Euler 法は次点の傾き f(x_{n+1},y_{n+1}) を使用し、
y_{n+1}=y_n+h f(x_{n+1},y_{n+1})
を解く。未知量 y_{n+1} が右辺にも出現するため、各段階で方程式を解く計算負担が生じる。しかし減衰問題では、安定性が改善されることがある。
モデル方程式 y'=ay に適用すると、Backward Euler 法は
y_{n+1}=\frac{1}{1-ah}y_n
を与える。a<0 なら |1/(1-ah)|<1 が広い刻み幅で成立する。この比較は、数値解法の選択では精度だけでなく安定性を確認する必要があることを示す。
方向場で判定できること
方向場は厳密解を生成しないが、解析前の診断に有効である。
| 確認項目 | 方向場から得られる情報 |
| 平衡解 | 傾きが 0 になる水平線 |
| 増減 | 傾きの符号 |
| 安定性 | 近傍の矢印が平衡解へ向かうか |
| 数値計算の危険 | 急激な変化や傾きの大きい領域 |
どこまで成り立つか
方向場は解曲線の候補を可視化する道具であり、1 本の厳密解を与えるものではない。Euler 法は入口として重要だが、実用計算では Runge-Kutta 法、Backward Euler 法、適応刻み幅などを検討する。