markdown
一階微分方程式の解法診断md 08579f8
lecture/math/differential-equations/一階微分方程式の解法診断-講義.n.md
Download as PDF
一階微分方程式の解法診断
mathdifferential-equationsfirst-orderlecture
導入
このページの核心は、一階方程式を最も構造が明瞭で変形が軽い型から順に診断し、解法を選択することである。
なぜこの順序で診断するのか
診断の順序は、確認に必要な変形量で決定する。分離形と自律系は式の因子構造や右辺の依存関係を直接確認できる。一階線型は y と y' が一次で現れるかを確認する。完全形や Bernoulli 型は、微分形式や置換を必要とするため、その後に確認する。
この順序を採用すると、単純な構造を複雑な置換で覆う誤用を避けられる。診断は計算の前処理であり、解法そのものではない。
診断木
- y'=f(x)g(y) に整理できるかを確認する。可能なら変数分離形である。
- y'=F(y) かを確認する。該当すれば自律系として平衡点を先に判定する。
- y'+P(x)y=Q(x) に整理できるかを確認する。該当すれば積分因子を用いる。
- M(x,y)dx+N(x,y)dy=0 なら、完全性 M_y=N_x と領域条件を確認する。
- y'+P(x)y=Q(x)y^n なら Bernoulli 置換 u=y^{1-n} を検討する。
- y'=F(y/x) なら、v=y/x の置換を検討する。
判定表
| 型 | 判定語 | 典型的な誤判定 |
| 分離形 | x の因子と y の因子に分解できる | x+y を積のように扱う |
| 一階線型 | y,y' が一次で出現する | y^2 を含むのに線型と判定する |
| 完全 | Mdx+Ndy の形 | 領域条件を省略する |
| Bernoulli | y^n を含むが置換で線型化できる | 非線型という理由だけで除外する |
| 同次形 | y/x の関数 | 同次線型と混同する |
分岐ごとの確認点
| 分岐 | 確認する式の特徴 | 失敗しやすい判断 |
| 分離形 | y'=f(x)g(y) または A(y)y'=B(x) | x+y を f(x)g(y) と誤認する |
| 一階線型 | y' と y が一次で、係数が x のみ | yy' や y^2 を含む式を線型と判定する |
| 完全形 | Mdx+Ndy=0 で M_y=N_x | 領域の穴や単連結性を省略する |
| Bernoulli | y'+P(x)y=Q(x)y^n | n=0,1 の退化を通常の Bernoulli 型として処理する |
| 同次形 | y'=F(y/x) | 同次線型 L[y]=0 と混同する |
具体例
y'=xy
は f(x)=x,\ g(y)=y と分離できる。したがって変数分離を選択する。
y'+xy=1
は分離ではなく P(x)=x,\ Q(x)=1 の一階線型である。したがって積分因子を選択する。
変形後に診断が変化する例
y'=1+\frac{y}{x}
は最初には分離しにくい。しかし v=y/x と置換すると y=vx、y'=v+xv' であるため、
v+xv'=1+v
となり、xv'=1 の分離形へ変換される。
この例では、最初の形だけで分離形ではないと結論してはならない。y/x が反復して出現するため、同次形の置換を検討する根拠がある。変形後に分離形へ移行する型では、診断木を一方向の分類表としてではなく、再判定を含む手順として運用する必要がある。
診断不能な場合の扱い
y'=\sin(xy)
のような方程式は、上の初等的な型に直接該当しない。しかし右辺は滑らかであるため、初期値問題では局所的な存在・一意性を確認できる。この場合は、初等解法の探索を継続するより、方向場・数値解法・定性的解析へ移行する判断が妥当である。
どこまで成り立つか
この診断木は初等解法の入口である。診断木のどこにも該当しない方程式でも、解が存在しないとは限らない。数値解法や定性的解析へ移行する判断が必要になる。