微分形式と外微分
mathdifferential-formsexterior-derivativelecture
導入
このページの核心は、微分形式を座標記号の集まりではなく、曲線・曲面・領域へ積分できる幾何的対象として導入することである。
用語と定義
微分形式 は、各点に交代多重線形形式を割り当てる対象である。
外微分 は、k 形式を k+1 形式へ送る微分作用素である。
方針
1 形式 \omega=P\,dx+Q\,dy の外微分は
d\omega=\left(\frac{\partial Q}{\partial x}-\frac{\partial P}{\partial y}\right)dx\wedge dy
である。この式は、平面の curl に対応する。
なぜこの方針を選ぶのか
微分形式を学ぶとき、いきなり抽象的な k 形式の一般論から始めると、dx\wedge dy や d\omega が何を表しているかを見失いやすい。そこでこの講義では、まず \mathbb{R}^2 と \mathbb{R}^3 の低次元で 0 形式、1 形式、2 形式、3 形式が何に積分されるかを固定し、その後で外微分が次数を 1 つ上げる作用として読めるようにする。
低次元の形式
0 形式は関数 f である。1 形式は P\,dx+Q\,dy のように共ベクトルを係数関数つきで配置したものである。2 形式は R\,dx\wedge dy のように面積要素へ係数を付けたものである。\mathbb{R}^3 では 2 形式に P\,dy\wedge dz+Q\,dz\wedge dx+R\,dx\wedge dy のような表示が現れる。
\mathbb{R}^3 の 3 形式は H\,dx\wedge dy\wedge dz の形であり、体積要素に係数を付けたものである。積分の対象は次数で決まり、1 形式は曲線、2 形式は曲面、3 形式は領域に積分する。
\mathbb{R}^2 での具体例
\mathbb{R}^2 では、0 形式は関数 f(x,y) であり、1 形式は P\,dx+Q\,dy、2 形式は R\,dx\wedge dy である。1 形式は各点の接ベクトルへ作用して数を返し、2 形式は向き付き面積要素へ係数を掛ける。
たとえば \omega=x\,dy-y\,dx は、円周に沿った循環を測る 1 形式として読める。一方、\eta=(x+y)\,dx\wedge dy は、領域ごとに面積密度 x+y を割り当てる 2 形式である。
\mathbb{R}^3 での具体例
\mathbb{R}^3 では、1 形式 \alpha=P\,dx+Q\,dy+R\,dz は曲線に、2 形式 \beta=P\,dy\wedge dz+Q\,dz\wedge dx+R\,dx\wedge dy は曲面に、3 形式 \gamma=H\,dx\wedge dy\wedge dz は領域に積分される。
この対応を固定すると、1 形式の外微分が 2 形式になり、2 形式の外微分が 3 形式になる理由が見えやすい。曲線の積分量を外微分すると曲面の密度になり、曲面の密度を外微分すると体積の密度になる。
実計算
f(x,y)=x^2y なら、
df=2xy\,dx+x^2\,dy
である。\omega=P\,dx+Q\,dy に対しては、
d\omega=dP\wedge dx+dQ\wedge dy
=\left(Q_x-P_y\right)dx\wedge dy
となる。
具体例として \omega=(x^2+y)\,dx+(x-y)\,dy とすると、
d\omega
=d(x^2+y)\wedge dx+d(x-y)\wedge dy
=(2x\,dx+dy)\wedge dx+(dx-dy)\wedge dy
=dy\wedge dx+dx\wedge dy
=0
となる。この例では Q_x-P_y=1-1=0 であり、平面での curl に対応する係数が 0 になっている。
\mathbb{R}^3 で \alpha=P\,dx+Q\,dy+R\,dz とすると、
d\alpha=(Q_x-P_y)\,dx\wedge dy+(R_y-Q_z)\,dy\wedge dz+(P_z-R_x)\,dz\wedge dx
である。これは通常の curl の成分と対応する。また 2 形式
\beta=P\,dy\wedge dz+Q\,dz\wedge dx+R\,dx\wedge dy
に対しては
d\beta=(P_x+Q_y+R_z)\,dx\wedge dy\wedge dz
となり、divergence に対応する。
重要性
外微分は d^2=0 を満たす。この性質により、勾配の curl が 0 になることや、curl の divergence が 0 になることが統一的に説明される。
例として f=x^2y では df=2xy\,dx+x^2\,dy であり、
d(df)=d(2xy\,dx+x^2\,dy)=(2x-2x)\,dx\wedge dy=0
である。二回の外微分が 0 になることは、混合偏微分の交換と交代性が組み合わさった結果である。
d^2=0 が意味すること
d^2=0 は、単に計算が楽になるという性質ではない。0 形式 f に対する df は局所的な変化を記録する 1 形式であり、その外微分が 0 になるという事実は、「純粋な勾配場には回転が残らない」ことに対応する。
同様に、\mathbb{R}^3 では 1 形式の外微分が curl に、2 形式の外微分が divergence に対応するため、d^2=0 は curl の divergence が 0 になることも同時に含んでいる。この統一性が、外微分を単なる記号操作ではなく構造的な微分として捉えるべき理由である。
反例または注意
係数関数が十分に滑らかでない場合、偏微分の交換や外微分の通常計算をそのまま使用できないことがある。また形式の次数と積分対象の次元が一致しなければ、直接には積分できない。
座標非依存の意味
外微分は座標表示で計算できるが、定義そのものは形式に対する演算である。そのため座標変換をしても、pullback と両立する形で同じ幾何的内容を表す。
引き戻し
引き戻し は、写像で曲線や曲面をパラメータ表示したとき、形式をパラメータ領域へ移す操作である。形式の積分を実際に計算する入口になる。