Fourier 変換と PDE
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導入
このページの核心は、Fourier 変換により空間微分を周波数の積へ変換し、PDE を周波数ごとの問題へ分解することである。
方針
全空間や周期性のない問題では、Fourier 級数より Fourier 変換が適合する。微分は周波数変数の乗算へ移行するため、熱方程式や波動方程式を周波数ごとに解析できる。
微分が乗算になる理由
Fourier 変換を
\widehat{f}(\xi)=\int_{\mathbb{R}}f(x)e^{-ix\xi}\,dx
で定義する。関数が十分に減衰し、部分積分の境界項が 0 になると仮定する。このとき
\widehat{f'}(\xi)
=\int_{\mathbb{R}}f'(x)e^{-ix\xi}\,dx
である。部分積分により
\int_{\mathbb{R}}f'(x)e^{-ix\xi}\,dx
=\left[f(x)e^{-ix\xi}\right]_{-\infty}^{\infty}
+i\xi\int_{\mathbb{R}}f(x)e^{-ix\xi}\,dx
となる。境界項が 0 なら
\widehat{f'}(\xi)=i\xi\widehat{f}(\xi)
である。もう一度適用すると
\widehat{f''}(\xi)=(i\xi)^2\widehat{f}(\xi)=-\xi^2\widehat{f}(\xi)
を得る。したがって、空間微分を含む PDE は周波数ごとの代数式または ODE へ変換される。
代表例
熱方程式 u_t=\kappa u_{xx} を x で Fourier 変換すると、
\partial_t \widehat{u}=-\kappa \xi^2\widehat{u}
となる。これは t に関する ODE であり、高周波ほど速く減衰することを示す。
Fourier 級数との相違
Fourier 級数は有界区間や周期関数を離散的な周波数へ分解する。Fourier 変換は全空間の関数を連続的な周波数へ分解する。境界がある問題では Fourier 級数、全空間では Fourier 変換が自然である。
heat kernel への接続
初期条件 u(x,0)=f(x) の Fourier 変換を \widehat{f}(\xi) とすると、
\widehat{u}(\xi,t)=e^{-\kappa\xi^2t}\widehat{f}(\xi)
である。逆変換すると、解は heat kernel と f の畳み込みで表現される。これは初期分布が Gaussian 核で平均化されることを意味する。
heat kernel の式は、Gaussian の Fourier 変換から導出される。逆変換の定数を
f(x)=\frac{1}{2\pi}\int_{\mathbb{R}}\widehat{f}(\xi)e^{ix\xi}\,d\xi
とする規約では、
\frac{1}{2\pi}\int_{\mathbb{R}}e^{-\kappa t\xi^2}e^{ix\xi}\,d\xi
=\frac{1}{\sqrt{4\pi\kappa t}}e^{-x^2/(4\kappa t)}
である。この積分は平方完成と Gaussian 積分により計算される。したがって e^{-\kappa t\xi^2} の逆変換が heat kernel になる。
全空間の熱方程式を解く
問題を
u_t=\kappa u_{xx},\quad x\in\mathbb{R},\quad t>0,\quad u(x,0)=f(x)
とする。未知関数は u(x,t)、独立変数は空間 x と時間 t、定義域は全実線である。Fourier 変換を x に関して適用すると、空間微分は
\widehat{u_{xx}}(\xi,t)=-\xi^2\widehat{u}(\xi,t)
へ移行する。したがって周波数ごとに
\partial_t\widehat{u}(\xi,t)=-\kappa\xi^2\widehat{u}(\xi,t),\quad \widehat{u}(\xi,0)=\widehat{f}(\xi)
を解けばよい。解は
\widehat{u}(\xi,t)=e^{-\kappa\xi^2t}\widehat{f}(\xi)
である。逆変換により
u(x,t)=\frac{1}{\sqrt{4\pi\kappa t}}\int_{\mathbb{R}}e^{-(x-y)^2/(4\kappa t)}f(y)\,dy
となる。核
G_t(x)=\frac{1}{\sqrt{4\pi\kappa t}}e^{-x^2/(4\kappa t)}
が heat kernel である。
比較例: 境界がある場合
区間 0<x<L で Dirichlet 条件を課すと、全空間の平行移動対称性は失われる。この場合、連続周波数 \xi ではなく、境界条件に適合する離散モード \sin(n\pi x/L) を使用する。Fourier 変換と Fourier 級数の選択は、領域と境界条件で決まる。
反例または限界
係数が x に依存する u_t=(a(x)u_x)_x では、Fourier 変換を適用しても単純な乗算には変換されない。畳み込みや擬微分作用素が現れるため、定数係数の場合と同じ手順では完結しない。
どこまで成り立つか
Fourier 変換は領域や境界条件に強く依存する。有界区間では、Fourier 級数や固有関数展開が自然になる。