確率と期待値
mathprobabilityhighschoollecture
導入
この講義で最重要なのは、場合を数えることと、平均的にどれだけ得るかを分けて考えることです。
確率の演習で混乱しやすいのは、「まず何を数えるのか」と「いま求めたいのは確率なのか期待値なのか」が曖昧なまま計算を始めてしまうことです。
確率では、まず起こりうる結果を整理し、そのうえで各結果にどれだけの重みを与えるかを決めます。期待値は、その重みつき平均です。この 2 つを最初に分けて見るだけで、問題の見通しはかなり良くなります。
用語と定義
確率 とは、事象が起こる起こりやすさを数で表したものです。
期待値 とは、確率変数 X が x_1,\dots,x_n を取るとき
E[X]=x_1P(X=x_1)+\cdots+x_nP(X=x_n)
で定義される量です。
方針
確率の問題では、まず標本空間を明確にします。そのあと等確率かどうかを判断し、場合の数で押すのか、条件付きで分解するのかを決めます。
期待値では、全部の場合を並べたうえで、それぞれの値にその起こりやすさを掛けて足します。したがって「確率を求める段階」と「平均を作る段階」を分けて考えるのが基本です。
直感的な説明
期待値は「実際の 1 回の結果」ではありません。しかし同じ試行を何度も繰り返したときの平均として現れます。だから確率と期待値は、未来を言い当てる道具ではなく、多数回の振る舞いを整理する道具です。
たとえば公平なさいころを 1 回振った結果は 1,2,3,4,5,6 のどれかですが、長く繰り返すと平均は 3.5 に近づきます。3.5 という目は出なくても、全体の傾向を表す数字として意味があります。
厳密な説明
1. 等確率なら場合の数
全体の場合の数を N、事象 A の場合の数を n(A) とすると
P(A)=\frac{n(A)}{N}
です。
大事なのは、この公式が「全部の結果が同じ起こりやすさを持つ」ときにしか使えないことです。ここを見落とすと、条件付き確率や偏った試行で崩れます。
2. 期待値は重みつき平均
確率変数 X が 0,1,2 をそれぞれ \frac14,\frac12,\frac14 の確率で取るなら
E[X]=0\cdot \frac14+1\cdot \frac12+2\cdot \frac14=1
です。
この式では、「値」と「その確率」を組にして見ることが本質です。値だけを足してもだめで、起こりやすい結果ほど強く平均に効く、という重みづけが入ります。
3. 線形性
期待値の重要な性質は、和の期待値が各項の期待値の和になることです。つまり
E[X+Y]=E[X]+E[Y]
です。独立かどうかに関係なく成り立つので、演習で強力です。
ここが期待値の便利さです。和の期待値を出したいとき、分布を全部作り直さなくても、各部分の期待値を足せばよい場合が多いです。
具体例
1. さいころの偶数の確率
公平なさいころを 1 回振るとき、標本空間は \{1,2,3,4,5,6\} です。
偶数の事象を A=\{2,4,6\} とすると、n(A)=3、全体は N=6 なので
P(A)=\frac{3}{6}=\frac12
です。
2. さいころの出目の期待値
X を出目とすると
E[X]
=1\cdot\frac16+2\cdot\frac16+3\cdot\frac16+4\cdot\frac16+5\cdot\frac16+6\cdot\frac16
=\frac{21}{6}
=3.5
です。
この 2 つは同じ試行でも、前者は「どれくらい起こるか」、後者は「平均的にどれくらいの値になるか」を見ています。
別の見方
確率は比率の言葉、期待値は平均の言葉です。数え上げの問題では組合せが主役ですが、期待値では個々の場合を全部追わずに済むことがあります。
見分け方
- 何通りあるか、起こる割合はどれくらいか、なら確率です。
- 平均的に何点か、何回か、なら期待値です。
- 独立や条件付きが出たら、掛け算か場合分けかを先に決めます。
- 問題文に「少なくとも」「ちょうど」「高々」が見えたら、まず事象を集合として言い直します。
- 期待値を聞かれているのに、いきなり場合を全部列挙し始めたら、値と確率の組を先に表へ整理したほうが見通しがよくなります。
どこまで成り立つか
等確率の公式は、全結果が同じ重みを持つときにしか使えません。偏りがあるなら、個別の確率を直接扱う必要があります。
最終形
\boxed{P(A)=\frac{n(A)}{N}\qquad (\text{等確率})}
\boxed{E[X]=\sum x_iP(X=x_i)}
\boxed{E[X+Y]=E[X]+E[Y]}
一言でいうと
- 確率は「どれくらい起こるか」、期待値は「平均的にどれだけか」です。
- 問題では、まず数えるのか、平均を見るのかを決めます。