Green・Gauss・Stokes の定理
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導入
このページの核心は、Green・Gauss・Stokes の定理を、領域内部の微分量と境界上の積分量を結ぶ同一原理として確認することである。
方針
Green の定理は平面領域の回転と境界線の循環を結ぶ。Gauss の発散定理は体積領域の発散と境界面の流束を結ぶ。Stokes の定理は曲面上の curl と境界曲線の循環を結ぶ。
定理を適用する前の確認事項
このページで重要なのは、式を暗記することではなく、「積分対象は何か」「向きはどう付くか」「場は内部で滑らかか」を先に確認することである。Green では平面領域と正向きの境界、Gauss では閉曲面と外向き法線、Stokes では向き付けられた曲面と右手系に従う境界曲線が前提になる。
代表式
Green の定理の一形は
\oint_{\partial D} P\,dx+Q\,dy=\iint_D\left(\frac{\partial Q}{\partial x}-\frac{\partial P}{\partial y}\right)\,dA
である。Gauss の発散定理は
D は区分的に滑らかな単純閉曲線を境界に持つ平面領域、P,Q は近傍で C^1 級とする。このとき左辺は境界の循環、右辺は内部の回転密度の総和である。
\iint_{\partial V}\boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{n}\,dS
=\iiint_V \nabla\cdot\boldsymbol{F}\,dV
である。
V は区分的に滑らかな境界を持つ有界領域、\boldsymbol{F} は近傍で C^1 級とする。左辺は境界面を通る総流束、右辺は内部の発散密度の体積積分である。
Stokes の定理は、向き付けられた曲面 S とその境界 \partial S に対して
\oint_{\partial S}\boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}
=
\iint_S(\nabla\times\boldsymbol{F})\cdot\boldsymbol{n}\,dS
と述べられる。S は区分的に滑らかな向き付け可能な曲面、\boldsymbol{F} は近傍で C^1 級とする。境界曲線の向きは、曲面の法線と右手系で対応させる。
各定理の役割
Green の定理は平面領域で、境界曲線に沿う循環を内部の curl の積分へ変換する。Gauss の定理は閉曲面を通過する流束を内部の divergence の積分へ変換する。Stokes の定理は曲面の境界に沿う循環を曲面上の curl の流束へ変換する。
| 定理 | 境界側 | 内部側 |
| Green | 平面境界の循環 | 領域内の回転密度 |
| Gauss | 閉曲面の流束 | 体積内の発散密度 |
| Stokes | 境界曲線の循環 | 曲面上の curl の法線成分 |
なぜ同一原理と言えるか
領域を小片へ分割すると、内部で接する境界の寄与は向きが逆になるため相殺される。最後に残るのは外側の境界だけである。この相殺が、Green・Gauss・Stokes の背後にある共通構造である。
計算例
\boldsymbol{F}=(-y/2,x/2) とし、D を単位円板とする。Green の定理により、
\oint_{\partial D}\boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}
=\iint_D 1\,dA=\pi
である。境界を直接パラメータ表示しても同じ値を得る。この一致が、境界積分と内部積分の対応を示す。
直接計算では、\partial D を \boldsymbol{r}(t)=(\cos t,\sin t)、0\le t\le 2\pi と置けば、
\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r}(t))=\left(-\frac{\sin t}{2},\frac{\cos t}{2}\right),\qquad
\boldsymbol{r}'(t)=(-\sin t,\cos t)
だから
\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r}(t))\cdot\boldsymbol{r}'(t)=\frac12
となり、
\oint_{\partial D}\boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}
=\int_0^{2\pi}\frac12\,dt
=\pi
を得る。Green の定理は、この直接計算を内部積分へ移して構造を見えやすくする。
Gauss の計算例
\boldsymbol{F}=(x,y,z) とし、V を半径 R の球とする。\nabla\cdot\boldsymbol{F}=3 なので、
\iiint_V\nabla\cdot\boldsymbol{F}\,dV=3\cdot\frac{4\pi R^3}{3}=4\pi R^3
である。一方、境界球面では \boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{n}=R であり、面積は 4\pi R^2 なので流束も 4\pi R^3 である。
この例は、各点で 3 だけ湧き出す場の総流束が、体積に比例して増加することを示している。Gauss の定理は、表面の直接積分より内部の divergence のほうが簡単な場合に特に有効である。
Stokes の計算例
\boldsymbol{F}=(-y/2,x/2,0) とし、S を単位円板、法線を上向きとする。\nabla\times\boldsymbol{F}=(0,0,1) なので、
\iint_S(\nabla\times\boldsymbol{F})\cdot\boldsymbol{n}\,dS=\pi
である。境界は反時計回りの単位円であり、線積分も \pi になる。Green の定理は、この平面 Stokes 定理の形として解釈できる。
直接計算と定理利用の使い分け
境界が単純で、場の表示も簡単なら直接計算で十分である。一方、境界が複雑で内部量のほうが簡単なら、Green・Gauss・Stokes により積分対象を交換したほうが有利である。
直感的な説明
内部を小領域に分割すると、隣接する小領域の境界寄与は互いに打ち消し合う。最後に外側の境界だけが残る。これが局所量と境界量を接続する基本構造である。
適用条件
領域の向き、境界、滑らかさを確認する。特異点が領域内部にある場合は、その点を除外した領域で再構成する必要がある。たとえば
\boldsymbol{F}(x,y)=\left(-\frac{y}{x^2+y^2},\frac{x}{x^2+y^2}\right)
は原点で定義されないため、原点を含む円板へ Green の定理をそのまま適用してはならない。