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解析力学の入口
physicsanalytical-mechanicsundergraduatelecture
導入
この講義で最重要なのは、解析力学では力を 1 つずつ分解して追うのではなく、一般化座標とエネルギーから運動を記述するということです。
ニュートン力学は強力ですが、拘束条件がある系では反力まで全部書くのが煩雑になります。そこで解析力学では、必要な自由度だけで問題を書き直します。
用語と定義
一般化座標 とは、系の状態を記述するのに必要な独立な座標です。
ラグランジアン は
L=T-U
で定義される量です。
ラグランジュ方程式 は
\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q_i}-\frac{\partial L}{\partial q_i}=0
です。
方針
解析力学では、まず系の自由度を見抜いて一般化座標 q_i を選びます。そのあと T と U を書き、L=T-U から運動方程式を作ります。
ここで大切なのは、公式だけ覚えることではなく、「なぜ x,y ではなく \theta を選ぶのか」「なぜ反力を直接書かずにすむのか」を先に見ることです。
直感的な説明
解析力学は、「何が動けるか」だけを座標にして、動けない方向は最初から消してしまう方法です。これによって拘束力を細かく追わなくても本質だけが残ります。
厳密な説明
1. 一般化座標を選ぶ理由
たとえば長さ \ell の振り子では、質点の位置を x,y で書くこともできますが、拘束条件
x^2+y^2=\ell^2
があるので独立ではありません。つまり x,y をそのまま使うと、実際には動けない方向まで含んでしまいます。
そこで角度 \theta を一般化座標に取ります。これなら自由度が 1 つであることが、そのまま座標の個数に反映されます。
2. 振り子の T と U
位置を
x=\ell\sin\theta,\qquad y=-\ell\cos\theta
とすると、
\dot x=\ell\dot\theta\cos\theta,\qquad \dot y=\ell\dot\theta\sin\theta
です。したがって
\dot x^2+\dot y^2=\ell^2\dot\theta^2
なので
T=\frac12 m\ell^2\dot\theta^2,\qquad
U=mg\ell(1-\cos\theta)
となります。ここで U は最下点を 0 とした位置エネルギーです。
3. ラグランジュ方程式へ入れる
L=\frac12 m\ell^2\dot\theta^2-mg\ell(1-\cos\theta)
です。これをラグランジュ方程式へ入れると、
\frac{\partial L}{\partial \dot\theta}=m\ell^2\dot\theta
だから
\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot\theta}=m\ell^2\ddot\theta
です。また
\frac{\partial L}{\partial \theta}=-mg\ell\sin\theta
なので
m\ell^2\ddot\theta+mg\ell\sin\theta=0
を得ます。
具体例
小振動では \sin\theta\approx\theta なので
\ddot\theta+\frac{g}{\ell}\theta=0
となり、単振動の方程式が出ます。ここで、力を接線方向に分解し直さなくても同じ式に到達できます。
別の見方
ニュートン力学が「力から加速度へ」という局所的な見方なら、解析力学は「系の全体のエネルギーから運動方程式へ」という構造的な見方です。
このとき重要なのは、張力のような拘束力を途中で明示的に書かなくてよいことです。一般化座標をうまく選ぶことで、最初から本質的な自由度だけを追えます。
どこまで成り立つか
ここでは L=T-U と書ける保存力の問題を前提にしています。摩擦のような非保存力が強く効く場合や、一般化座標の扱いが複雑な拘束を持つ場合は、そのままでは済みません。
見分け方
- 拘束条件が多く、力を全部書くのが煩雑なら解析力学を考える
- 自由度を減らせるなら、一般化座標で書き直す
- 保存則や対称性を前面に出したいときにも相性がよい