アンペールの法則の基本
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1導入
この講義では、アンペールの法則を「電流のまわりで磁場がどれだけ巡るか」を測る法則として解説する。
電場では、対称性が高いときにガウスの法則で電場を取り出した。磁場では、閉曲線に沿う磁場の線積分を使う。これが磁場の循環である。
2用語と定義
線積分 \int_C\vec B\cdot d\vec l とは、曲線 C に沿う磁場の成分を足し合わせた量である。
循環とは、閉曲線に沿う線積分
\oint_C\vec B\cdot d\vec l
である。
3法則:アンペールの法則
定常電流について、閉曲線 C を貫く電流の総量を I_{\mathrm{enc}} とすると、
\boxed{\oint_C\vec B\cdot d\vec l=\mu_0 I_{\mathrm{enc}}}
である。
4方針
アンペールの法則は、対称性が強く、閉曲線の上で B を一定として外へ出せるときに強い。
- 磁場の向きに沿う閉曲線を選ぶ。
- その曲線上で B が一定かを確認する。
- 内側を貫く電流 I_{\mathrm{enc}} を数える。
- \oint\vec B\cdot d\vec l=\mu_0I_{\mathrm{enc}} に代入する。
5関係式 1:長い直線電流の磁場
長い直線導線に電流 I が流れるとき、導線から距離 r の点での磁場の大きさは
\boxed{B=\frac{\mu_0 I}{2\pi r}}
である。
5.1証明
直線導線のまわりでは、対称性により磁場は導線を中心とする円周方向を向く。また同じ半径 r の円周上で B は一定である。
半径 r の円をアンペール回路に取ると、d\vec l は磁場と同じ向きなので
\oint_C\vec B\cdot d\vec l
=\oint_C B\,dl
=B\oint_C dl
=B(2\pi r)
である。回路が囲む電流は I なので、アンペールの法則より
B(2\pi r)=\mu_0 I
である。よって
B=\frac{\mu_0 I}{2\pi r}
を得る。
6関係式 2:長いソレノイド内部の磁場
1 単位長さあたりの巻数を n、電流を I とする十分長いソレノイドの内部では、
\boxed{B=\mu_0 nI}
である。
6.1証明
十分長いソレノイドでは、内部の磁場はほぼ一様で軸方向、外部の磁場は小さいとみなす。
長さ \ell の辺をソレノイド内部に置く長方形のアンペール回路を取る。内部の辺だけが主に寄与し、
\oint_C\vec B\cdot d\vec l=B\ell
である。この回路を貫く巻数は n\ell であり、全電流は
I_{\mathrm{enc}}=n\ell I
である。したがって
B\ell=\mu_0 n\ell I
より
B=\mu_0 nI
を得る。
7関係式 3:トロイド内部の磁場
N 回巻いたトロイドに電流 I が流れるとき、中心から距離 r の内部では
\boxed{B=\frac{\mu_0 NI}{2\pi r}}
である。
7.1証明
トロイドの対称性より、磁場は円周方向を向き、半径 r の円周上で大きさは一定である。半径 r の円をアンペール回路に取ると、
\oint_C\vec B\cdot d\vec l=B(2\pi r)
である。回路が囲む電流は、N 本の巻線を貫くので
I_{\mathrm{enc}}=NI
である。よって
B(2\pi r)=\mu_0NI
となり、
B=\frac{\mu_0NI}{2\pi r}
を得る。
9見分け方
- 円周上で B が一定ならアンペールが有効である。
- 長い直線電流、ソレノイド、トロイドは典型である。
- 導線の形が複雑で B を線積分の外に出せないなら、ビオ・サバールを使う。
10最終形
\boxed{\oint_C\vec B\cdot d\vec l=\mu_0 I_{\mathrm{enc}}}
\boxed{B_{\mathrm{wire}}=\frac{\mu_0 I}{2\pi r}}
\boxed{B_{\mathrm{solenoid}}=\mu_0 nI}
11一言
アンペールの法則は、電流が作る磁場の巡りを測り、対称性が強いときに B を一気に取り出す道具である。