磁場と電磁誘導
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1導入
この講義では、磁場の 3 つの役割を区別し、それぞれに対応する法則を説明する。
- 電流は磁場を作る。
- 磁場は動く電荷に力を及ぼす。
- 磁束が変わると起電力が生じる。
この順序で見ると、アンペールの法則、ビオ・サバールの法則、ローレンツ力、ファラデーの法則がばらばらではなくなる。
2用語と定義
磁束密度 \vec B とは、磁場の強さと向きを表すベクトルである。
磁束 \Phi_B とは、面を貫く磁場の量であり、
\Phi_B=\int_S\vec B\cdot d\vec S
で定義する。
電磁誘導とは、回路を貫く磁束が変化すると起電力が生じる現象である。
3方針
磁場の問題では、問われているものを先に分ける。
- 電流から磁場を求めるなら、対称性が強いかを見る。
- 対称性が強ければアンペールの法則を使う。
- 導線の形を積分したいならビオ・サバールの法則を使う。
- 荷電粒子の運動ならローレンツ力を使う。
- 起電力なら、磁場そのものではなく磁束の変化を見る。
4関係式 1:一様磁場での磁束
大きさ B の一様磁場が、面積 S の面の法線と角 \theta をなすとき、
\boxed{\Phi_B=BS\cos\theta}
である。
4.1証明
磁束の定義は
\Phi_B=\int_S\vec B\cdot d\vec S
である。一様磁場では \vec B は面のどこでも同じであり、平面では d\vec S の向きも一定である。したがって
\vec B\cdot d\vec S=B\cos\theta\,dS
である。よって
\Phi_B=\int_S B\cos\theta\,dS
=B\cos\theta\int_S dS
=BS\cos\theta
を得る。
5関係式 2:磁場だけでは速さの大きさは変わらない
磁場から受けるローレンツ力の磁場部分が
\vec F_B=q\vec v\times\vec B
であるとき、磁場は荷電粒子に仕事をしない。
5.1証明
仕事率は
P=\vec F_B\cdot\vec v
である。ここで
\vec F_B=q\vec v\times\vec B
は外積の性質により \vec v に垂直である。したがって
P=(q\vec v\times\vec B)\cdot\vec v=0
である。仕事率が 0 なので運動エネルギーは変化しない。よって速さの大きさは変わらない。
6基本法則の予告:磁束変化が起電力を生む
向きを定めた回路を貫く磁束を \Phi_B とすると、誘導起電力は
\boxed{\mathcal E=-\frac{d\Phi_B}{dt}}
で与えられる。
7見分け方
- 長い直線電流、ソレノイド、トロイドならアンペール。
- 円形電流や有限の導線ならビオ・サバール。
- 荷電粒子の半径や周期ならローレンツ力。
- 導体棒、コイル、磁場の時間変化ならファラデー。
8どこまで成立するか
アンペールの法則の単純な形は定常電流で使う。ファラデーの法則は時間変化する磁場まで扱う。さらに電場の時間変化も磁場を作ることを含めると、マクスウェル方程式に進む。
9最終形
\boxed{\Phi_B=\int_S\vec B\cdot d\vec S}
\boxed{\vec F_B=q\vec v\times\vec B}
\boxed{\mathcal E=-\frac{d\Phi_B}{dt}}
10一言
磁場は、電流が作り、動く電荷を曲げ、変化すると電場と起電力を生む。