角運動量の基本
physicsmechanicsangular-momentumlecture
1導入
この講義では、回転についての運動量は、単に mv ではなく基準点の選択を含む量であることを説明する。
直線運動では、外力がなければ運動量が保存する。回転運動では、外力の合計ではなく、外力のモーメントがなければ角運動量が保存する。
2用語と定義
角運動量 \vec L とは、基準点から物体への位置ベクトルを \vec r、運動量を \vec p=m\vec v として
\boxed{\vec L=\vec r\times\vec p}
で定義する量である。
外力のモーメント \vec\tau は
\vec\tau=\vec r\times\vec F
である。
中心力とは、力の向きが常に基準点と物体を結ぶ直線に沿う力である。
3方針
角運動量を使う理由は、回転の変化を外力のモーメントで測れるからである。
- 基準点を決める。
- \vec L=\vec r\times\vec p を定義する。
- 時間で微分して d\vec L/dt=\vec\tau を得る。
- \vec\tau=\vec0 なら \vec L が保存する。
4整理 1:角運動量の時間変化
固定した基準点を取る。質点について、
\boxed{\frac{d\vec L}{dt}=\vec\tau}
が成立する。
4.1証明
定義より
\vec L=\vec r\times\vec p
である。時間で微分すると
\frac{d\vec L}{dt}
=
\frac{d\vec r}{dt}\times\vec p+\vec r\times\frac{d\vec p}{dt}
である。ここで d\vec r/dt=\vec v、\vec p=m\vec v なので
\vec v\times\vec p
=
\vec v\times m\vec v
=
\vec0
である。また Newton の運動方程式より d\vec p/dt=\vec F である。したがって
\frac{d\vec L}{dt}
=
\vec r\times\vec F
=
\vec\tau
を得る。
5保存則 2:角運動量保存
外力のモーメントが 0 なら、
\boxed{\vec L=\mathrm{const}}
である。
5.1証明
整理 1 より
\frac{d\vec L}{dt}=\vec\tau
である。\vec\tau=\vec0 なら
\frac{d\vec L}{dt}=\vec0
である。したがって \vec L は時間に依存せず一定である。
6保存則 3:中心力では角運動量が保存する
力が常に基準点へ向かう、または基準点から離れる向きなら、その基準点まわりの角運動量は保存する。
6.1証明
中心力では \vec F が \vec r と平行である。したがって
\vec\tau=\vec r\times\vec F=\vec0
である。保存則 2 より \vec L は保存する。
7整理 4:固定軸では L=I\omega となる
固定軸まわりに剛体が角速度 \omega で回転しているとき、軸方向の角運動量は
\boxed{L=I\omega}
である。
7.1証明
軸から距離 r_i にある質点 m_i を考える。速さは
v_i=r_i\omega
であり、運動量の接線成分は m_iv_i である。この質点の軸方向の角運動量の大きさは
L_i=r_i m_iv_i=m_ir_i^2\omega
である。全体で足すと
L=\sum_i m_ir_i^2\omega
=
\left(\sum_i m_ir_i^2\right)\omega
=
I\omega
を得る。
8単位の確認
角運動量は
r\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}]
\times
p\ [\mathrm{kg\,m/s};\ \mathsf{MLT^{-1}}]
=
L\ [\mathrm{kg\,m^2/s};\ \mathsf{ML^2T^{-1}}]
である。固定軸の I\omega でも
I\ [\mathrm{kg\,m^2};\ \mathsf{ML^2}]
\times
\omega\ [\mathrm{1/s};\ \mathsf{T^{-1}}]
=
[\mathrm{kg\,m^2/s};\ \mathsf{ML^2T^{-1}}]
となり一致する。
9具体例:半径が小さくなる回転
外力のモーメントが無視できる人が回転している。腕を縮めて慣性モーメントが I_1 から I_2 に小さくなったとする。角運動量保存より
I_1\omega_1=I_2\omega_2
である。したがって
\omega_2=\frac{I_1}{I_2}\omega_1
となる。I_2<I_1 なら \omega_2>\omega_1 であり、回転は速くなる。
10見分け方
- 中心力、惑星運動、回転する物体が出たら、角運動量を見る。
- 外力の合力ではなく、外力のモーメントが 0 かを確認する。
- L=I\omega は固定軸または対称軸まわりの簡約形である。
- 基準点を変えると \vec L も \vec\tau も変わる。どの点まわりかを書く。
11どこまで成立するか
d\vec L/dt=\vec\tau は、固定した慣性系の基準点まわりで使う。重心を基準点に取る場合にも適切に成立するが、加速する任意の点を基準にすると追加項が必要になる。一般の 3 次元剛体では、\vec L=I\vec\omega ではなく \vec L=\mathbf I\vec\omega と書く。
12最終形
\boxed{\vec L=\vec r\times\vec p}
\boxed{\frac{d\vec L}{dt}=\vec\tau}
\boxed{\vec\tau=\vec0\Rightarrow \vec L=\mathrm{const}}
\boxed{L=I\omega}
13一言
角運動量は、回転についての運動量である。変えるものは力そのものではなく、力のモーメントである。