4多項式環
可換環 R 上の多項式とは、
f(x)=a_0+a_1x+\cdots+a_mx^m
\qquad(a_i\in R)
の形の形式的な有限和である。ここで「形式的」とは、x に値を代入してできる関数ではなく、有限個を除いて 0 になる係数列 (a_0,a_1,\ldots) として扱うという意味である。多項式全体を
R[x]
と書く。係数ごとの加法と、分配法則による乗法を
\left(\sum_i a_ix^i\right)+\left(\sum_i b_ix^i\right)
=\sum_i(a_i+b_i)x^i,
\left(\sum_i a_ix^i\right)\left(\sum_j b_jx^j\right)
=\sum_k\left(\sum_{i+j=k}a_ib_j\right)x^k
で定めると、R[x] は環になる。加法単位元は 0 多項式、乗法単位元は定数多項式 1 である。たとえば \mathbb Z[x] は整数係数多項式の環である。
この主張を係数で確かめる。有限個の非零係数しかない二つの列について、和と上の積も非零係数を有限個しか持たないので、二つの演算は R[x] 上で閉じている。加法の結合法則と交換法則は係数ごとに R から従い、\sum_i a_ix^i の加法逆元は \sum_i(-a_i)x^i である。
また、f=\sum_i a_ix^i、g=\sum_j b_jx^j、h=\sum_\ell c_\ell x^\ell とすると、((fg)h) と f(gh) の x^n の係数はどちらも
\sum_{i+j+\ell=n}a_ib_jc_\ell
なので、乗法は結合法則を満たす。定数多項式 1 は乗法単位元である。分配法則は、たとえば f(g+h) の x^n の係数が
\sum_{i+j=n}a_i(b_j+c_j)
=\sum_{i+j=n}a_ib_j+\sum_{i+j=n}a_ic_j
となることから従い、もう一方も同様である。さらに R が可換なので乗法も可換である。したがって R[x] は実際に可換環になる。
0 でない多項式 f(x)=a_0+\cdots+a_mx^m で a_m\ne0 のとき、m を f の次数 \deg f、a_m を最高次係数という。0 多項式の次数は、ここでは定義しない。
data/lecture/math/algebra/polynomials.lecture.n.md