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体の基本md f9e5786
lecture/math/abstract-algebra/field-basics.lecture.n.md
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体の基本
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体は、0 以外の元で割り算ができる可換環である。体を学ぶ理由は、方程式、線型代数、多項式の計算を安定して行うためである。
整数では 2x=1 を整数の中で解けない。しかし有理数や実数では x=1/2 と解ける。この違いを構造として表したものが体である。
1体の定義
可換環 F が体であるとは、0\ne1 であり、0\ne a\in F の任意の元が乗法逆元を持つことである。
\forall a\in F,\ a\ne0\Rightarrow \exists a^{-1}\in F\ \text{such that}\ aa^{-1}=1
ここで 0\ne1 とし、逆元の条件から 0 を除くことが重要である。もし 0b=1 となる b があれば、環の基本恒等式 0b=0 により 0=1 となり、0\ne1 に矛盾する。したがって 0 に乗法逆元は存在しない。
2基本例
\mathbb Q,\quad \mathbb R,\quad \mathbb C
は体である。
一方、\mathbb Z は体ではない。2 の乗法逆元 1/2 が整数ではないからである。
また、p が素数のとき
\mathbb Z/p\mathbb Z
は体である。0 でない剰余類 [a] なら p\nmid a であり、p は素数なので \gcd(a,p)=1 である。ベズーの等式より、ある整数 u,v が存在して
au+pv=1
となる。法 p で剰余類を取ると [a][u]=[1] なので、[u] が [a] の逆元である。
data/lecture/math/abstract-algebra/congruences-and-modular-arithmetic.lecture.n.md
3体上で線型代数が動く理由
線型代数では、係数を割る操作が頻繁に表れる。たとえば掃き出し法では、主成分を 1 にするために 0 でない数で割る。
data/lecture/math/linear-algebra/elementary-row-operations.lecture.n.md
この操作が正当化されるのは、係数が体の元であり、0 でない元に逆元が存在するからである。
この節は応用への見通しであり、線型代数の結果を以後の体の定義や証明の前提にはしない。
4定理:体は整域
全ての体は整域である。証明する。ab=0 とする。a=0 ならすでに結論を満たす。a\ne0 なら a^{-1} が存在するので、左から掛けると
a^{-1}(ab)=a^{-1}0=0
である。結合法則より (a^{-1}a)b=b=0 である。したがって ab=0 なら a=0 または b=0 であり、体は整域である。この議論では a\ne0 を確認してから逆元を使っており、0 で割ってはいない。
逆に、全ての整域が体であるわけではない。\mathbb Z は整域だが体ではない。
5何が変わり、何が保存されるか
整域と体の公理を比べると、体は整域の条件に「0 でない全ての元が乗法逆元を持つ」という条件を加えた構造である。体では加法、乗法、分配法則、可換性、0\ne1 を保ったまま、0 でない元で割り算ができる。
これは、任意の整域の同じ集合の中で逆元を宣言すれば体になる、という意味ではない。たとえば \mathbb Z は整域だが、その元 2 の逆元は \mathbb Z の中にないため、\mathbb Z 自体は体ではない。
7まとめ
体は、0\ne1 であり、0 以外の元に乗法逆元がある可換環である。割り算ができるため、方程式や線型代数の基本操作が自然に正当化される。