一般二階線型常微分方程式の基礎理論
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1導入
この講義では、二階線型という語が定数係数を意味しないことを明確にし、一般論と特殊解法を分離する。
2対象とする方程式
一般の二階線型の標準形は
y''+P(x)y'+Q(x)y=R(x)
である。I を区間、x_0\in I とし、P,Q,R:I\to\mathbb K は連続であると仮定する。ただし、ここで \mathbb K は \mathbb R または \mathbb C を表す。この条件のもとで、任意の a,b\in\mathbb K に対し、初期条件 y(x_0)=a,\ y'(x_0)=b を満たす解が区間 I 全体で一意に存在する。
3一般理論と特殊解法の区別
特性方程式は二階線型の一般解法ではない。係数が定数であり、e^{rx} の微分で形が保存される場合に適用できる特殊な解法である。この区別をあらかじめ明確にしなければ、変数係数の方程式に誤って特性方程式を適用することになる。
4線型理論の骨格
一般の二階線型では、まず
L[y]=y''+P(x)y'+Q(x)y
と定義する。ここで L は関数を関数へ送る線型作用素である。実際、u,v を 2 回微分可能な関数、\alpha,\beta を定数とすると、微分の線型性より
L[\alpha u+\beta v]=\alpha L[u]+\beta L[v]
である。
data/lecture/math/linear-operator/linear-operator-equation-basics.lecture.n.md
同次方程式
y''+P(x)y'+Q(x)y=0
の解集合は、加法と定数倍で閉じるため線型空間になる。ただし、閉じていることだけでは 2 次元とは言えない。2 次元であることは、初期値問題の存在・一意性から従う。
基準点 x_0 を 1 つ固定し、同次解 y に
\Phi(y)=(y(x_0),y'(x_0))
を対応させる。\Phi は線型写像である。係数 P,Q が連続であるというこのページの仮定のもとでは、任意の初期値 (a,b) に対して
y(x_0)=a,\qquad y'(x_0)=b
を満たす同次方程式の解が一意に存在する。したがって \Phi は同次解空間から \mathbb K^2 への同型であり、同次解空間は 2 次元である。
したがって独立な 2 解 y_1,y_2 が得られれば、
y_h=C_1y_1+C_2y_2
が同次解の一般形である。
非同次方程式では、特殊解 y_p を 1 つ得れば
y=y_h+y_p
が一般解である。この分解は線型性に由来する。
厳密には、非同次方程式は
L[y]=R
である。L[y_p]=R を満たす特殊解 y_p が 1 つあるとする。h\in\ker L なら
L[y_p+h]=L[y_p]+L[h]=R
なので y_p+h は解である。逆に y も L[y]=R の解なら
L[y-y_p]=L[y]-L[y_p]=R-R=0
であるから、y-y_p\in\ker L である。したがって非同次解全体は
y_p+\ker L
である。ここでの \ker L が、同次方程式の解空間である。
5一次連立系としての観点
一般の二階線型は、一階連立系へ変換すると理論の構造が明確になる。x_1=y,\ x_2=y' と設定すると、
\begin{pmatrix}
x_1\\
x_2
\end{pmatrix}'
=
\begin{pmatrix}
0&1\\
-Q(x)&-P(x)
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x_1\\
x_2
\end{pmatrix}
+
\begin{pmatrix}
0\\
R(x)
\end{pmatrix}
を得る。係数が連続なら、この一階連立系の標準理論により初期値 y(x_0),y'(x_0) から解が一意に決定される。二階で初期条件が 2 本必要になる理由は、状態が y と y' の 2 成分を持つからである。
この観点は、定数係数の特性方程式と連立系の固有値が同じ情報を表していることも説明する。定数係数なら行列が定数となり、固有値により指数関数の時間発展へ分解できる。
一次連立系への変換、行列指数関数、固有値との対応は、後続講義で詳述する。
data/lecture/math/differential-equations/first-order-systems-and-matrix-exponentials.lecture.n.md
6Wronskian と独立性
独立な 2 解 y_1,y_2 を確認するとき、Wronskian
W(y_1,y_2)=y_1y_2'-y_1'y_2
を用いる。W(x_0)\ne 0 なら、係数が連続な区間では y_1,y_2 は基本解系を構成する。実際、Abel の恒等式
W(x)=W(x_0)\exp\!\left(-\int_{x_0}^{x}P(s)\,ds\right)
により、Wronskian は区間内の他の点でも 0 にならない。逆に、2 解が線型従属なら Wronskian は恒等的に 0 である。したがって Wronskian は 2 解の線型独立性を判定し、同次解空間が 2 次元であるという既知の事実と併せて、その 2 解が基本解系を構成することを確認する。
7解法の選択基準
| 状況 | 候補となる方法 | 理由 |
| 定数係数 | 特性方程式 | e^{rx} の形が保存される |
| 定数係数の非同次方程式で、外力項を含む有限次元関数空間が微分で不変 | 未定係数法 | 有限次元の試行空間を選択できる。共鳴時には同次解との重複を除くよう試行空間を調整する |
| 基本解系が既知で外力項が連続 | 定数変化法 | 同次解から特殊解を構成できる |
| 変数係数で初等解が困難 | 級数解法 | 係数比較で局所解を構成する |
8具体例
y''+xy'+y=0
は二階線型であるが、定数係数ではない。したがって r^2+xr+1=0 のような特性方程式を作成してはならない。x が残存するため、e^{rx} の代入は代数方程式を生成しない。
一方、y''-3y'+2y=0 では係数が定数である。e^{rx} を代入すると r^2-3r+2=0 を得る。この対比により、特性方程式法の本質が二階ではなく定数係数にあることが判明する。
9適用範囲と限界
ここでの一般論は線型性と、区間全体における正規化後の係数 P,Q および外力項 R の連続性に基礎を置く。正規化前の方程式で最高階係数が 0 になる場合には、その係数が 0 でない区間へ制限してから標準形へ変形する必要がある。非線型の二階方程式では、解空間の線型構造も重合の原理も一般には成立しない。
10演習リンク
data/exercise/math/differential-equations/second-order-linear-constant-coefficient-odes.exercise.n.md
data/exercise/math/differential-equations/second-order-linear-odes.exercise.n.md
11関連リンク
data/lecture/math/differential-equations/second-order-linear-constant-coefficient-odes.lecture.n.md
data/lecture/math/differential-equations/variation-of-parameters-and-wronskian.lecture.n.md
data/lecture/math/linear-operator/linear-operator-equation-basics.lecture.n.md
12前の講義
data/lecture/math/differential-equations/second-order-linear-constant-coefficient-odes.lecture.n.md
13次の講義
data/lecture/math/differential-equations/extensions-of-second-order-linear-odes.lecture.n.md