二階線型定数係数微分方程式の基本
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1導入
この講義では、二階線型定数係数の微分方程式を、公式としてではなく、線型性と指数関数の性質から導くことを説明する。
標準形は
ay''+by'+cy=f(x),\qquad a\ne 0
である。a,b,c が定数であることが重要である。係数が x に依存する
y''+p(x)y'+q(x)y=r(x)
は一般の二階線型方程式の理論で扱う。
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2同次と非同次
右辺が 0 の
ay''+by'+cy=0
を同次方程式という。
右辺の f が恒等的に 0 ではない
ay''+by'+cy=f(x)
を非同次方程式という。
非同次方程式では、まず同次方程式の解を求め、つぎに非同次項 f(x) に対応する特殊解を 1 個求める。
3命題1:同次解は重ね合わせできる
仮定として、y_1,y_2 が
ay''+by'+cy=0
の解であるとする。このとき、任意の定数 C_1,C_2 に対して
y=C_1y_1+C_2y_2
も解である。
3.1証明
L[y]=ay''+by'+cy とおく。L は線型である。実際、
L[C_1y_1+C_2y_2]=C_1L[y_1]+C_2L[y_2]
である。仮定より L[y_1]=0,\ L[y_2]=0 であるため、
L[C_1y_1+C_2y_2]=0
である。したがって C_1y_1+C_2y_2 も同次方程式の解である。
この性質を重ね合わせの原理 (superposition principle) という。
4命題2:非同次解は「特殊解+同次解」
仮定として、y_p が
ay''+by'+cy=f(x)
の 1 個の特殊解であり、y_h が対応する同次方程式
ay''+by'+cy=0
の解であるとする。このとき
y=y_p+y_h
は非同次方程式の解である。また、非同次方程式の任意の解はこの形に書ける。
4.1証明
L[y]=ay''+by'+cy とおく。L は線型である。前半は
L[y_p+y_h]=L[y_p]+L[y_h]=f(x)+0=f(x)
より従う。
逆に、y も非同次方程式の解だとする。このとき
L[y-y_p]=L[y]-L[y_p]=f(x)-f(x)=0
したがって y-y_p は同次方程式の解である。これを y_h とおけば
y=y_p+y_h
である。
これは、線型作用素方程式の解集合が、1 個の特殊解に同次方程式の解を加えた集合になるという一般原理である。
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5特性方程式の導出
同次方程式
ay''+by'+cy=0
を解く。定数係数では、e^{rx} を微分しても
(e^{rx})'=re^{rx},\qquad (e^{rx})''=r^2e^{rx}
となり、同じ e^{rx} が残る。したがって y=e^{rx} を代入すると、微分方程式が r の代数方程式に変換される。
実際に代入すると、
a r^2e^{rx}+b r e^{rx}+c e^{rx}=0
すなわち
(ar^2+br+c)e^{rx}=0
である。e^{rx}\ne 0 であるため、
ar^2+br+c=0
を得る。これを特性方程式という。
6一般解の正当化
これから根の場合分けで一般解を書く。その根拠は、二階線型同次方程式の解空間が 2 次元であり、独立な 2 本の解があればすべての解をその線型結合で表せることである。
以下では、係数体を \mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\} とする。方程式を
u=\binom{y}{y'},\qquad u'=Au,\qquad
A=\begin{pmatrix}0&1\\-c/a&-b/a\end{pmatrix}
という一階線型系へ還元する。u\mapsto Au は連続であり、u について大域的 Lipschitz 連続である。したがって存在・一意性定理により、任意の u(x_0)=(\alpha,\beta)^T に対して一意解が存在する。
2 解 y_1,y_2 の Wronskian を
W(y_1,y_2)(x)=y_1(x)y_2'(x)-y_1'(x)y_2(x)
と定義する。W(y_1,y_2)(x_0)\ne0 なら、初期値ベクトル (y_1(x_0),y_1'(x_0))^T と (y_2(x_0),y_2'(x_0))^T は線型独立である。解の線型結合が零関数なら、その初期値ベクトルも零になるため、両ベクトルの独立性から結合係数はともに 0 である。したがって y_1,y_2 は解空間で線型独立である。
6.1命題3:独立な 2 解は基本解になる
仮定として、a\ne 0 であり、方程式
ay''+by'+cy=0
を考える。この方程式の解空間は 2 次元である。したがって、独立な 2 本の解 y_1,y_2 が見つかれば、任意の解は
y=C_1y_1+C_2y_2
と書ける。
6.2証明
a\ne 0 なので、方程式は
y''=-\frac{b}{a}y'-\frac{c}{a}y
と書ける。ある点 x_0 を固定し、解 y に
\Phi(y)=(y(x_0),y'(x_0))
を対応させる。対応 \Phi は線型である。
上記の一階線型系への還元と存在・一意性により、任意の初期値 (\alpha,\beta) に対して、
y(x_0)=\alpha,\qquad y'(x_0)=\beta
を満たす解がただ 1 本存在する。したがって \Phi は解空間から \mathbb K^2 への全単射である。よって解空間は \mathbb K^2 と同じく 2 次元である。
2 次元の線型空間では、独立な 2 本の解が基底になる。したがって任意の解は C_1y_1+C_2y_2 と書ける。
この命題により、下の表で示す 2 本の基本解が独立であれば、その線型結合を一般解と呼べる。
独立性は Wronskian によっても確認できる。異なる実根では (r_2-r_1)e^{(r_1+r_2)x}、重根では e^{2rx}、\alpha\pm i\beta から得る実数解の組では \beta e^{2\alpha x} であり、\beta\ne0 のもとでいずれも 0 ではない。
7根の場合分け
特性方程式
ar^2+br+c=0
の根によって、同次方程式の基本解が変わる。
| 特性根 | 基本解 | 同次方程式の一般解 |
| 異なる実根 r_1,r_2 | e^{r_1x},e^{r_2x} | C_1e^{r_1x}+C_2e^{r_2x} |
| 重根 r | e^{rx},xe^{rx} | (C_1+C_2x)e^{rx} |
| 複素根 \alpha\pm i\beta | e^{\alpha x}\cos\beta x,\ e^{\alpha x}\sin\beta x | e^{\alpha x}(C_1\cos\beta x+C_2\sin\beta x) |
8命題4:異なる実根の場合
仮定として、特性方程式が異なる実根 r_1,r_2 を持つとする。このとき
y=C_1e^{r_1x}+C_2e^{r_2x}
は同次方程式の一般解である。
8.1証明
r_i は特性方程式の根なので、
ar_i^2+br_i+c=0
である。y_i=e^{r_ix} とおくと、
L[y_i]=(ar_i^2+br_i+c)e^{r_ix}=0
である。したがって e^{r_1x},e^{r_2x} は解である。命題1より、その線型結合
C_1e^{r_1x}+C_2e^{r_2x}
も解である。
さらに、2 解の Wronskian は
W(e^{r_1x},e^{r_2x})=(r_2-r_1)e^{(r_1+r_2)x}\ne0
であるから、e^{r_1x},e^{r_2x} は独立である。命題3により、その線型結合は一般解である。
二階の初期値問題では、初期値 y(x_0),y'(x_0) の 2 個が与えられる。異なる実根の場合、2 個の定数 C_1,C_2 はこれらの条件によって一意に決定される。
9重根に対応する第二解 xe^{rx} の導出
特性方程式が
a(r-\rho)^2=0
のように重根 \rho を持つとする。e^{\rho x} は解であるが、二階の方程式では基本解が 2 本必要である。第二解の候補として xe^{\rho x} を代入する。
9.1検算
L=aD^2+bD+c と書く。重根 \rho を持つことは、多項式
p(r)=ar^2+br+c
について
p(\rho)=0,\qquad p'(\rho)=0
が成立することを意味する。計算すると、
D(xe^{\rho x})=e^{\rho x}+\rho xe^{\rho x}
D^2(xe^{\rho x})=2\rho e^{\rho x}+\rho^2xe^{\rho x}
である。したがって
L[xe^{\rho x}]
=a(2\rho e^{\rho x}+\rho^2xe^{\rho x})
+b(e^{\rho x}+\rho xe^{\rho x})
+cxe^{\rho x}
である。e^{\rho x} の係数は 2a\rho+b=p'(\rho)、xe^{\rho x} の係数は a\rho^2+b\rho+c=p(\rho) である。どちらも 0 なので
L[xe^{\rho x}]=0
である。
よって重根の場合の一般解は
y=(C_1+C_2x)e^{\rho x}
である。
10複素根と振動
特性方程式が
r=\alpha\pm i\beta
を根に持つとする。複素数を使えば
e^{(\alpha+i\beta)x},\qquad e^{(\alpha-i\beta)x}
が解である。Euler 公式
e^{i\beta x}=\cos\beta x+i\sin\beta x
より、実数値の解として
e^{\alpha x}\cos\beta x,\qquad e^{\alpha x}\sin\beta x
を取れる。
\alpha<0 なら振幅が減衰し、\alpha=0 なら減衰しない振動になる。このため二階線型の複素根は、力学や電気回路の振動と直接つながる。
11例1:異なる実根
y''-3y'+2y=0
の特性方程式は
r^2-3r+2=0
である。(r-1)(r-2)=0 より r=1,2 であるため、
y=C_1e^x+C_2e^{2x}
である。
12例2:重根
y''-2y'+y=0
では特性方程式が
(r-1)^2=0
である。したがって
y=(C_1+C_2x)e^x
である。
13例3:複素根
y''+4y=0
では
r^2+4=0
より r=\pm 2i である。したがって実数値の一般解は
y=C_1\cos 2x+C_2\sin 2x
である。
14非同次方程式への拡張
ay''+by'+cy=f(x)
では、命題2により
y=y_h+y_p
と書く。ここで y_h は同次方程式の一般解、y_p は非同次方程式の特殊解である。
f(x) が指数関数、三角関数、多項式のような場合には、未定係数法によって特殊解を構成できることがある。より一般には定数変化法を適用する。
data/lecture/math/differential-equations/nonhomogeneous-equations-and-undetermined-coefficients.lecture.n.md
data/lecture/math/differential-equations/variation-of-parameters-and-wronskian.lecture.n.md
15作用素法への接続
微分作用素を
D=\frac{d}{dx}
と書くと、
ay''+by'+cy=f(x)
は
(aD^2+bD+c)y=f(x)
と書ける。ここで
P(D)=aD^2+bD+c
とおけば、
P(D)y=f(x)
である。
この作用素的定式化では、同次方程式 P(D)y=0 は線型作用素の核を決定する問題である。非同次方程式 P(D)y=f では、f の像への所属を判定し、可解な場合には特殊解による核の平行移動として解集合を記述する。
初学段階では、まず特性方程式による解法を修得する。作用素法は、その代数的構造を抽象化する理論的枠組みとして位置付けられる。
data/lecture/math/linear-operator/polynomial-operators-and-eigenvalue-problems.lecture.n.md
16まとめ
二階線型定数係数方程式には、次の解法手順を適用する。
- 同次か非同次かを確認する。
- 同次方程式では e^{rx} を仮定し、特性方程式を導出する。
- 根が異なる実根、重根、複素根のどれかで場合分けする。
- 非同次では y=y_h+y_p と分ける。
- 最後に初期条件や境界条件で任意定数を決める。
17前の講義
data/lecture/math/differential-equations/analytic-numerical-and-qualitative-ode-methods.lecture.n.md
18次の講義
定数係数における特性根の方法を確立したら、変数係数を含む一般の二階線型方程式の理論へ進む。
data/lecture/math/differential-equations/general-second-order-linear-odes-overview.lecture.n.md
19演習リンク
data/exercise/math/differential-equations/second-order-linear-constant-coefficient-odes.exercise.n.md
data/exercise/math/differential-equations/second-order-linear-odes.exercise.n.md