微分方程式とは何か
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1導入
この講義では、微分方程式が「未知数」ではなく未知関数を未知とし、その関数と導関数との関係を規定する方程式であることを説明する。
代数方程式 x^2-3x+2=0 では、未知なのは数 x である。一方、
y'=ky
では、k を定数とすると、未知なのは関数 y(x) である。この式は「関数の変化率 y' が、その点での値 y に比例する」という変化の法則を表す。微分方程式を学ぶ最初の目的は、式の形式から、表現される変化と適用可能な解法を判断することである。
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2用語と定義
独立変数とは、入力として自由に動かす変数である。多くの常微分方程式では x または t を用いる。t は時間を表す場合が多い。
未知関数とは、方程式を満たすように決定したい関数である。たとえば y=y(x) や x=x(t) が未知関数である。
導関数 y' は、独立変数が少し変化したときに、未知関数がどれだけ変化するかを表す。微分方程式に y' や y'' が入るということは、関数の値、変化率、変化率の変化の間に成立する関係を方程式として課しているということである。
解とは、指定された区間で必要な回数だけ微分可能であり、方程式へ代入すると恒等的に成立する関数である。
たとえば y'=ky に対して y=Ce^{kx} を代入すると、
y'=Cke^{kx}=kCe^{kx}=ky
である。したがって y=Ce^{kx} は y'=ky の解である。
3解くとは何をすることか
微分方程式を解くとは、指定された区間、条件、および解の概念のもとで、その解集合を決定することである。初等的な標準例では、まず条件を含まない関数族を求め、つぎに条件によって候補を限定する。ただし、条件の独立性や整合性によっては、解が存在しない場合や複数の解が残る場合もある。
一般解とは、任意定数を含む解の族である。y'=ky の一般解は
y=Ce^{kx}
である。
特殊解とは、方程式を実際に満たす具体的な 1 本の解である。この講義群では、この用語に統一する。
特殊解を得る方法は 1 つではない。一般解が先に分かっているなら、任意定数に値を入れて 1 本を選べる。たとえば y=Ce^{kx} で C=2 とすれば y=2e^{kx} である。非同次方程式では、一般解を作る前に、まず 1 本の特殊解 y_p を構成することもある。
特異解は、特殊解とは別の用語であり、微分方程式を満たすが、一般解の任意定数を選択しても得られない解を指す。非線型方程式において一般解族の包絡線として現れる場合が代表的である。これは線型作用素方程式の基本枠組みとは別に扱う。
data/lecture/math/differential-equations/singular-solutions-and-envelopes.lecture.n.md
初期条件とは、ある基準点で関数の値や導関数の値を指定する条件である。たとえば
y'=ky,\qquad y(0)=y_0
なら、一般解 y=Ce^{kx} に x=0 を代入して C=y_0 を得る。したがって
y=y_0e^{kx}
が初期条件を満たす解である。
境界条件とは、区間の端点や領域の境界で、関数、導関数、またはそれらの線型結合などのデータを指定する条件である。初期条件は基準点に状態を指定し、境界条件は定義域の境界において解を拘束する。
data/lecture/math/differential-equations/initial-and-boundary-value-problems.lecture.n.md
4階数とは何か
階数とは、方程式に現れる未知関数の導関数のうち、最高の階を表す。
y'=ky
は y' までしか含まないので 1 階である。
my''+cy'+ky=0
は y'' を含むので 2 階である。一般に、y^{(n)} まで含む方程式を n 階の微分方程式という。
階数が重要な理由は、必要な条件の数に関係するからである。たとえば 2 階の運動方程式では、位置と速度の 2 つの初期値が必要になることが多い。ただし、これは典型的な対応であり、条件の独立性と整合性を別途確認する必要がある。
5線型と非線型の違い
線型微分方程式とは、未知関数とその導関数が 1 次で現れ、互いに乗算されず、その係数が独立変数のみに依存する微分方程式である。
たとえば
y'+p(x)y=q(x)
や
ay''+by'+cy=f(x)
は線型である。一方、
y'=y^2,\qquad y''+\sin y=0,\qquad yy'=x
は非線型である。
線型が重要な理由は、同次方程式の解を足しても解になるという重ね合わせの原理が成立するからである。これは後で二階線型や非同次方程式を扱うときの中心になる。
6常微分方程式と偏微分方程式
常微分方程式、すなわち ODE は、未知関数が 1 つの独立変数に依存する場合の微分方程式である。たとえば y=y(t) として
y'=ky
を考える場合である。
偏微分方程式、すなわち PDE は、未知関数が 2 つ以上の独立変数に依存し、その偏導関数を含む微分方程式である。たとえば温度 u(t,x) が時間 t と位置 x に依存する場合、時間微分と空間微分が同時に現れる。
この講義群では、まず ODE を中心に扱う。PDE は空間分布が本質になる段階で別に扱う。
7微分方程式を読む手順
初学者が最初に固定すべき手順は、問題分析、方針、実行、検算、一般化である。
- 問題分析では、未知関数、独立変数、階数、条件を確認する。
- 方針では、式の形から直接積分、変数分離、一階線型などの候補を選ぶ。
- 実行では、選んだ方法の条件を確認しながら計算する。
- 検算では、得た関数を元の微分方程式と条件へ代入する。
- 一般化では、その解法がどの型まで有効かを確認する。
この順序にすると、解法名を先に暗記するのではなく、方程式の形から道具を選択できる。
8最小例:y'=ky
最後に、入口として y'=ky を確認する。この式は「変化率が現在量に比例する」法則である。
k>0 なら増加が増加を呼ぶため、指数増加が現れる。k<0 なら量が大きいほど減少も大きく、指数減衰が現れる。
計算としては、y\ne 0 の範囲で
\frac{1}{y}\frac{dy}{dx}=k
と整理し、
\log|y|=kx+C
を得る。したがって
y=Ce^{kx}
である。y=0 も定数解であり、C=0 として同じ形に含める。
この例は、方程式の形式を分析し、解法を選択し、得た関数を代入して検算するという基本手順を示している。
9次に参照するページ
data/lecture/math/differential-equations/initial-and-boundary-value-problems.lecture.n.md
data/lecture/math/differential-equations/classifying-first-order-odes.lecture.n.md
10演習リンク
data/exercise/math/differential-equations/introduction-to-odes-and-direct-integration.exercise.n.md