一階微分方程式の分類と最初の判定
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1導入
この講義では、一階微分方程式の形式を分析し、適用可能な解法とその選択理由を判定する方法を説明する。
一階微分方程式とは、最高階の導関数が y' である微分方程式である。一般には
F(x,y,y')=0
の形に書ける。
ただし、この一般形をそのまま解く万能公式はない。初学者がまず学ぶべきことは、頻出する型を見分け、その型で解ける理由を説明できるようにすることである。
2最初に確認する 3 点
一階微分方程式が与えられたら、計算の前に次を確認する。
- 右辺が x だけの関数か。
- x 側と y 側の積に分けられるか。
- y' と y が 1 次で現れるか。
この 3 点に加えて、型にかかわらず因子で割るときは「その因子が 0 になる解を捨てていないか」も確認する。その因子が 0 になる枝を先に代入検算し、その後で 0 でない枝を計算する。包絡線としての特異解や非一意枝の区別は、存在一意性を学んだ後の発展事項である。
この順序を取る理由は、単純な型ほど少ない変形で判定できるからである。複雑な置換を先に試すと、本来は直接積分や変数分離で解ける問題を見失いやすい。
3判定表
| 方程式の形式 | 型 | 選択理由 |
| y'=f(x) | 直接積分 | 導関数が x だけで決まる |
| y'=f(x)g(y) | 変数分離形 | x 側と y 側に分離できる |
| y'=F(y) | 自律方程式 | y の値だけで増減が決まる |
| y'+p(x)y=q(x) | 一階線型 | 積分因子で積の微分へ直せる |
| M(x,y)dx+N(x,y)dy=0 | 完全微分形の候補 | ある関数 F(x,y) の全微分かを調べる |
| y'+p(x)y=q(x)y^n | Bernoulli 型 | u=y^{1-n} で一階線型へ帰着できる場合がある |
この表は結論だけを暗記するためのものではない。重要なのは、方程式の形式と適用する解法との対応理由を理解することである。
4命題1:y'=f(x) は直接積分に帰着する
方程式が
y'=f(x)
であり、f が区間 I で連続であるとする。このとき、f の原始関数を F とすれば、
y=F(x)+C
が解である。
4.1証明
F は f の原始関数なので、定義より F'=f である。y=F(x)+C とおくと、定数 C の導関数は 0 だから
y'=F'(x)=f(x)
である。したがって y=F(x)+C は方程式を満たす。
この型では、微分方程式は微積分の「原始関数を求める問題」そのものである。
5命題2:y'=f(x)g(y) は変数分離に帰着する
区間 I と、y の値域を含む区間 J を考える。f は I で連続、g は J で連続かつ 0 でないとする。このとき、C^1 級の関数 y:I\to J が
\frac{dy}{dx}=f(x)g(y)
を満たすことと、ある定数 C に対して
\int \frac{1}{g(y)}\,dy=\int f(x)\,dx+C
という関係を満たすことは同値である。
5.1証明
G'(y)=1/g(y)、F'(x)=f(x) となる原始関数 G,F を取る。微分方程式を満たす y に対して
\frac{d}{dx}\bigl(G(y(x))-F(x)\bigr)
=\frac{1}{g(y)}y'-f(x)=0
である。したがって G(y(x))-F(x) は I で定数であり、
G(y(x))=F(x)+C
を得る。逆に、この関係式を x で微分すると、合成関数の微分公式より
\frac{1}{g(y)}y'=f(x)
である。g(y)\ne 0 より
y'=f(x)g(y)
を得る。
ここで g(y)=0 となる定数解は、g(y) で割る操作の前に別に確認する必要がある。
data/lecture/math/differential-equations/separable-equations-and-autonomous-systems.lecture.n.md
6命題3:y'+p(x)y=q(x) は積の微分へ帰着する
仮定として、方程式が
y'+p(x)y=q(x)
であるとする。もし区間 I で 0 にならない関数 \mu(x) が
\mu'=\mu p(x)
を満たすなら、元の方程式は区間 I で
(\mu y)'=\mu q(x)
と同値である。
6.1証明
元の方程式の両辺に \mu を掛けると、
\mu y'+\mu p(x)y=\mu q(x)
である。仮定 \mu'=\mu p(x) より、
\mu y'+\mu' y=\mu q(x)
となる。積の微分公式から
(\mu y)'=\mu y'+\mu' y
なので、
(\mu y)'=\mu q(x)
を得る。逆に、この式を積の微分公式で展開し、0 でない \mu で除すれば元の方程式を回復する。したがって両者は同値である。
この命題が積分因子の根拠である。\mu を突然掛けるのではなく、積の微分を逆向きに作るために選ぶ。
data/lecture/math/differential-equations/first-order-linear-odes-and-integrating-factors.lecture.n.md
7完全微分形の判定基準
M(x,y)dx+N(x,y)dy=0
の形では、目標は x と y を分けることではない。ある関数 F(x,y) があって
dF=F_xdx+F_ydy
と表現できるかを判定する。もし F_x=M,\ F_y=N なら、方程式は dF=0 であり、解は
F(x,y)=C
で与えられる。
完全微分形では偏微分と全微分を使うため、詳細は専用ページで扱う。
data/lecture/math/differential-equations/exact-differential-equations.lecture.n.md
8誤用しやすい例
y'=x+y
は x と y が和で結ばれている。したがって
\frac{dy}{y}=\frac{dx}{x}
のように分離してはならない。一方、
y'-y=x
と表現できるので、これは一階線型である。外観の単純さではなく、標準形へ変形可能かによって判定する。
9後続の学習順序
このページでは分類の根拠だけを示した。次に、実際の計算と注意点を順番に学ぶ。
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10演習リンク
data/exercise/math/differential-equations/classifying-and-solving-first-order-odes.exercise.n.md