5厳密な説明
5.11. 像と核は部分空間である
まず \operatorname{im}T を確認する。y_1,y_2\in\operatorname{im}T とする。すると、ある v_1,v_2\in V が存在して
y_1=T(v_1),\qquad y_2=T(v_2)
である。任意のスカラー a,b について、線型性より
ay_1+by_2
=
aT(v_1)+bT(v_2)
=
T(av_1+bv_2)
である。したがって ay_1+by_2 も \operatorname{im}T に属する。よって \operatorname{im}T は部分空間である。
つぎに \ker T を確認する。u_1,u_2\in\ker T なら
T(u_1)=0,\qquad T(u_2)=0
である。任意のスカラー a,b について、
T(au_1+bu_2)=aT(u_1)+bT(u_2)=0
となる。したがって au_1+bu_2\in\ker T である。よって \ker T も部分空間である。
5.22. 行列版の階数との一致
V の基底を B=(v_1,\ldots,v_n)、W の基底を C=(w_1,\ldots,w_m) とし、T:V\to W の表現行列を A=[T]_{C\leftarrow B} とする。
A の第 j 列は、T(v_j) の C に関する座標である。したがって、A の列空間は、\operatorname{im}T を基底 C で座標表示した集合である。
座標写像は同型、すなわち次元を保つ可逆な線型写像である。よって
\dim\operatorname{im}T
=
\dim\operatorname{Col}(A)
である。つまり
\operatorname{rank}(T)=\operatorname{rank}(A)
が成立する。
この定理が、一般化前の行列版の階数と、一般化後の線型写像の階数を接続している。
5.33. 階数・退化次数定理
定理
V を有限次元のベクトル空間とし、T:V\to W を線型写像とする。このとき
\dim V=\operatorname{rank}(T)+\operatorname{nullity}(T)
である。
証明
\ker T の基底を
u_1,\ldots,u_k
とする。これを V の基底
u_1,\ldots,u_k,v_1,\ldots,v_r
へ拡張する。このとき k=\operatorname{nullity}(T) であり、\dim V=k+r である。
T(v_1),\ldots,T(v_r) が \operatorname{im}T の基底であることを示す。まず生成を示す。任意の y\in\operatorname{im}T を取ると、ある x\in V が存在して y=T(x) である。x を上の基底で
x=a_1u_1+\cdots+a_ku_k+b_1v_1+\cdots+b_rv_r
と書く。u_i\in\ker T なので T(u_i)=0 であり、
y=T(x)=b_1T(v_1)+\cdots+b_rT(v_r)
となる。したがって T(v_1),\ldots,T(v_r) は \operatorname{im}T を生成する。
つぎに一次独立性を示す。
c_1T(v_1)+\cdots+c_rT(v_r)=0
と仮定する。線型性より
T(c_1v_1+\cdots+c_rv_r)=0
であるから、c_1v_1+\cdots+c_rv_r\in\ker T である。したがって、あるスカラー d_1,\ldots,d_k が存在して
c_1v_1+\cdots+c_rv_r=d_1u_1+\cdots+d_ku_k
と書ける。左辺と右辺を移項すると、
d_1u_1+\cdots+d_ku_k-c_1v_1-\cdots-c_rv_r=0
である。しかし u_1,\ldots,u_k,v_1,\ldots,v_r は V の基底なので、係数はすべて 0 でなければならない。したがって
c_1=\cdots=c_r=0
である。よって T(v_1),\ldots,T(v_r) は一次独立である。
したがって T(v_1),\ldots,T(v_r) は \operatorname{im}T の基底であり、\operatorname{rank}(T)=r である。ゆえに
\dim V=k+r=\operatorname{nullity}(T)+\operatorname{rank}(T)
が成立する。
5.44. 可逆性との関係
T:V\to V を有限次元のベクトル空間の上の線型写像とする。このとき、次は同値である。
- T は可逆である。
- \ker T=\{0\} である。
- \operatorname{rank}(T)=\dim V である。
- \operatorname{im}T=V である。
証明する。T が可逆なら、T(v)=0 に T^{-1} を適用して v=0 だから \ker T=\{0\} である。\ker T=\{0\} なら \operatorname{nullity}(T)=0 なので、階数・退化次数定理より \operatorname{rank}(T)=\dim V である。これは \operatorname{im}T の次元が V と同じで、しかも \operatorname{im}T\subset V であることを意味するため、\operatorname{im}T=V である。
最後に \operatorname{im}T=V かつ \ker T=\{0\} なら、任意の y\in V に対して T(x)=y を満たす x が存在し、さらに \ker T=\{0\} によりその x は一意である。この一意解を T^{-1}(y)=x と定義すれば、T^{-1} が存在する。