5.1関係式:単純な正逆反応では速度の等式から平衡定数が出る
仮定として、反応 \mathrm{A\rightleftharpoons B} が単純な一次反応として進み、正反応速度が v_+=k_+[\mathrm A]、逆反応速度が v_-=k_-[\mathrm B] であるとする。結論は、平衡で [\mathrm B]/[\mathrm A]=k_+/k_- となることである。
証明する。平衡では正反応と逆反応の速度が等しいので、k_+[\mathrm A]=k_-[\mathrm B] である。k_-\neq 0、[\mathrm A]\neq 0 の範囲で両辺を k_-[\mathrm A] で割ると、[\mathrm B]/[\mathrm A]=k_+/k_- を得る。□
この議論は単純化した模型である。一般の平衡定数は熱力学で活量を用いて定義される。高校化学では、希薄溶液や理想気体の近似のもとで濃度を用いた形として扱う。
5.2定義:高校化学で使う濃度平衡定数
a\mathrm A+b\mathrm B\rightleftharpoons c\mathrm C+d\mathrm D
仮定として、温度は一定で、溶液は十分に希薄、または気体は理想気体として扱えるとする。この近似では、活量を濃度で置き換えて、濃度平衡定数 K_c を次で定義する。
K_c=\frac{[\mathrm C]^c[\mathrm D]^d}{[\mathrm A]^a[\mathrm B]^b}
純粋な固体や液体は、活量をほぼ 1 と見なすので、この式には通常入れない。係数が指数になることは、単純な粒子数比の言い換えではなく、熱力学で定義される反応の標準自由エネルギー変化と対応する。
5.3関係式:質量作用の速度式を仮定すれば同じ形が出る
仮定として、上の可逆反応が素反応として進み、速度式が
v_+=k_+[\mathrm A]^a[\mathrm B]^b,\qquad
v_-=k_-[\mathrm C]^c[\mathrm D]^d
で与えられるとする。結論は、平衡で
\frac{[\mathrm C]^c[\mathrm D]^d}{[\mathrm A]^a[\mathrm B]^b}
=
\frac{k_+}{k_-}
となることである。
証明する。平衡では v_+=v_- なので、
k_+[\mathrm A]^a[\mathrm B]^b
=
k_-[\mathrm C]^c[\mathrm D]^d
である。k_-\neq0 であり、分母の濃度が 0 でない範囲で両辺を k_-[\mathrm A]^a[\mathrm B]^b で割ると、
\frac{[\mathrm C]^c[\mathrm D]^d}{[\mathrm A]^a[\mathrm B]^b}
=
\frac{k_+}{k_-}
を得る。□
ただし、実際の反応は複数の素過程からなることが多い。その場合、平衡定数の一般式は速度式だけから証明するのではなく、熱力学の定義として受け取る。