用語と定義
極限
\lim_{x \to a} f(x) = L
とは、任意の \varepsilon > 0 に対してある \delta > 0 が存在して
0 < |x - a| < \delta \implies |f(x) - L| < \varepsilon
となることである(\varepsilon-\delta 論法)。
記号の意味:\varepsilon(epsilon)は出力の許容誤差、\delta(delta)は入力の調整量。「どんなに厳い精度を要求されても(\varepsilon > 0)、入力を十分絞れば(\delta を小さく取れば)出力の誤差を \varepsilon 未満に抑えられる」という主張である。
連続
f が a で連続であるとは以下の 3 条件が成立することである:
- f(a) が定義されている
- \lim_{x \to a} f(x) が存在する
- \lim_{x \to a} f(x) = f(a)
3 条件を分離して書くのは、違反するポイントが不連続の種類を決めるからである。
片側極限
\lim_{x\to a-}f(x)=L
は、x を a より小さい側から a へ近づけたときに f(x) が L へ収束することを表す。同様に
\lim_{x\to a+}f(x)=L
は、x を a より大きい側から近づける場合である。
両側極限 \lim_{x\to a}f(x) が存在することと、左極限・右極限が存在して一致することは同値である。跳躍不連続では、この一致が破れる。
厳密な説明
1. \varepsilon-\delta 論法の最小例
\lim_{x\to2}(3x-1)=5
を \varepsilon-\delta 論法で証明する。目標は
|3x-1-5|<\varepsilon
を実現する \delta を構成することである。左辺を整理すると
|3x-1-5|=3|x-2|
だから、|x-2|<\varepsilon/3 なら十分である。したがって
\delta=\frac{\varepsilon}{3}
と設定すれば、
0<|x-2|<\delta
\implies
|3x-1-5|=3|x-2|<3\delta=\varepsilon
となる。この計算で重要なのは、\delta を先に当てるのではなく、欲しい不等式から逆向きに必要条件を組み立てることだ。
2. 極限の計算技法
直接代入:f が a で連続なら \lim_{x \to a} f(x) = f(a)。多項式・有理関数(分母≠0)で直接使える。
因数分解法:\lim_{x \to 1} \dfrac{x^2 - 1}{x - 1}。分子を因数分解すると \dfrac{(x-1)(x+1)}{x-1} = x+1(x \neq 1)、極限は \lim_{x \to 1}(x+1) = 2。
はさみうちの定理(Squeeze theorem):g(x) \le f(x) \le h(x) かつ \lim_{x \to a} g(x) = \lim_{x \to a} h(x) = L なら \lim_{x \to a} f(x) = L。
例:\lim_{x \to 0} x \sin\dfrac{1}{x}。-|x| \le x \sin\dfrac{1}{x} \le |x| かつ \lim_{x \to 0} (\pm|x|) = 0 より、極限は 0。
重要な基本極限:
\lim_{x \to 0} \frac{\sin x}{x} = 1, \qquad \lim_{x \to 0} \frac{e^x - 1}{x} = 1, \qquad \lim_{x \to \infty} \left(1 + \frac{1}{x}\right)^x = e
3. 不連続の分類
| 種類 | 特徴 | 例 | 修復可能性 |
| 除去可能不連続 | 極限は存在するが f(a) と不一致 | \dfrac{x^2-1}{x-1} の x=1 | 値を再定義すれば連続化 |
| 跳躍不連続 | 左・右極限が存在するが不一致 | \text{sgn}(x) の x=0 | 修復不可能 |
| 本質的不連続 | 片側極限が存在しない | \sin(1/x) の x=0 | 修復不可能 |
| 無限不連続 | 極限が \pm\infty | 1/x の x=0 | 修復不可能 |
4. 連続関数の重要性質
中間値定理(Intermediate Value Theorem):f が [a, b] で連続で f(a) \neq f(b) なら、f(a) と f(b) の中間の値 c に対して f(\xi) = c となる \xi \in (a, b) が存在する。
意味:連続な関数は値を「飛ばす」ことができない。f(0) < 0 かつ f(1) > 0 なら零点が [0,1] に存在する(二分法の理論的根拠)。
最大値・最小値定理:[a,b] で連続な f は最大値と最小値を必ず達成する(コンパクト性の帰結)。
5. なぜ \varepsilon-\delta が必要か
「近づく」を言葉だけで扱うと循環する。例:「f(x) は x \to a のとき L に近づく」= 「x が a に近いとき f(x) は L に近い」—「近い」が循環。
\varepsilon-\delta は「近い」を量化する:「|x-a| < \delta のとき |f(x)-L| < \varepsilon」。これで近さの制御を不等式に帰着させ、数学的に操作できる。