ステップ関数・デルタ関数・畳み込み
mathdifferential-equationslaplaceconvolutionlecture
導入
このページの核心は、突然の入力切替や瞬間入力を、ラプラス変換と畳み込みにより線型系の応答として整理することである。
用語と定義
ステップ関数 は、ある時刻から入力が切替る関数である。Heaviside 関数 H(t-a) は、t<a で 0、t>a で 1 と解釈する。
デルタ関数 は、理想化された瞬間入力を表す分布である。通常の関数ではなく、積分を通じて作用する対象である。
畳み込み は
(f*g)(t)=\int_0^t f(t-\tau)g(\tau)\,d\tau
で定義される操作である。
なぜこの方針を選ぶのか
線型時不変系では、入力を小さなインパルスの重合として分解し、それぞれの応答を加算できる。この発想が畳み込みである。ラプラス変換では畳み込みが積へ変換されるため、計算が代数化される。
具体例 1:ステップ入力の応答
y'+y=H(t-a),\qquad y(0)=0
では、入力が t=a まで 0 で、その後 1 へ切替る。0\le t<a では y'+y=0、y(0)=0 であるため y(t)=0 である。t>a では y'+y=1 となり、連続性により y(a)=0 を初期条件として
y(t)=1-e^{-(t-a)}
を得る。したがって
y(t)=H(t-a)\{1-e^{-(t-a)}\}
と表現できる。ラプラス変換では H(t-a) の変換に遅延因子 e^{-as} が現れ、応答開始時刻を代数的に保持する。
具体例 2:インパルス応答と畳み込み
デルタ入力 \delta(t-a) は、単位衝撃を時刻 a に与える理想化である。系のインパルス応答を h(t) とすると、一般入力 f(t) に対する応答は h*f で表現される。
たとえば y'+y=f(t),\ y(0)=0 のインパルス応答は h(t)=e^{-t}H(t) である。入力が f(t)=H(t) のとき、
(h*f)(t)=\int_0^t e^{-(t-\tau)}\,d\tau=1-e^{-t}
となる。これは直接解法で y'+y=1 を解いた結果と一致する。畳み込みは、過去の入力が現在の出力にどれだけ残存するかを積分で合算する操作である。
単位と物理的意味
y'+y=f(t) を無次元化された一次遅れ系として扱うなら、y と f は同一の次元を持つ。デルタ関数 \delta(t-a) は \int\delta(t-a)\,dt=1 を満たすため、\delta 自体は [\mathrm{s^{-1}}] の次元を持つ。したがって瞬間入力の強度は、積分量として解釈する必要がある。
どこまで成り立つか
デルタ関数は通常の関数ではないため、分布として扱う。工学的には極端に短く強い入力の極限として有用であるが、積分や変換の意味を確認して用いる必要がある。
畳み込みによる応答表示は、線型性と時不変性に依存する。非線型系や時間変化係数を持つ系では、単一のインパルス応答で全入力を表現する構造は一般に成立しない。