物理モデルと PDE への橋渡し
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導入
このページの核心は、常微分方程式を現象の仮定から立式し、空間分布が本質になる段階で PDE へ移行することを確認することである。
一階モデル
Newton の冷却法則は
T'=-k(T-T_{\mathrm{env}})
で表現される。左辺は温度の時間変化率 [\mathrm{K/s}] であり、右辺も k[\mathrm{s^{-1}}] と温度差 [\mathrm{K}] の積で [\mathrm{K/s}] となる。
単位を縦棒方式で追跡すると、
k\ [\mathrm{s^{-1}}]\ \underset{\mathrm{s^{-1}}}{\vert}
\times
(T-T_{\mathrm{env}})\ [\mathrm{K}]\ \underset{\mathrm{K/s}}{\vert}
となり、左辺 T' の単位 [\mathrm{K/s}] と一致する。単位の一致は正当性の証明ではないが、立式の最低限の検査である。
混合問題では、量の収支
\frac{d}{dt}(\text{槽内の量})=\text{流入量}-\text{流出量}
が方針になる。単位を確認すると、濃度 [\mathrm{kg/L}] と流量 [\mathrm{L/s}] の積は [\mathrm{kg/s}] であり、左辺と一致する。
この収支式では、完全混合を仮定している。槽内の濃度が場所により異なる場合、一つの未知量だけでは状態を表現できず、空間変数を導入する必要がある。
二階モデル
単振動は
mx''+kx=0
で表現される。mx'' は力 [\mathrm{N}]、kx もばね定数 [\mathrm{N/m}] と変位 [\mathrm{m}] の積で [\mathrm{N}] である。減衰や外力を加えると
mx''+cx'+kx=F(t)
となり、二階線型非同次へ接続する。
力の単位も確認できる。
m\ [\mathrm{kg}]\ \underset{\mathrm{kg}}{\vert}
\times
x''\ [\mathrm{m/s^2}]\ \underset{\mathrm{N}}{\vert}
k\ [\mathrm{N/m}]\ \underset{\mathrm{N/m}}{\vert}
\times
x\ [\mathrm{m}]\ \underset{\mathrm{N}}{\vert}
減衰項 cx' も c[\mathrm{N\cdot s/m}] と x'[\mathrm{m/s}] の積で [\mathrm{N}] となる。したがって各項はすべて力として加算される。
モデル化の方針
物理モデルでは、最初に未知量を設定し、次に保存則・力の釣合い・収支のいずれを起点にするかを選択する。
| 現象 | 未知量 | 起点 | 典型方程式 |
| 冷却 | T(t) | 温度差に比例する熱交換 | T'=-k(T-T_{\mathrm{env}}) |
| 混合 | 溶質量 Q(t) | 流入−流出 | Q'=\text{in}-\text{out} |
| 振動 | 変位 x(t) | Newton の運動方程式 | mx''+cx'+kx=F(t) |
| 熱伝導 | u(x,t) | 局所収支と Fourier 法則 | u_t=\kappa u_{xx} |
この表の役割は、微分方程式を現象から機械的に生成することではない。何を状態変数にし、どの仮定を採用しているかを明示することで、式の適用範囲を管理することである。
PDE への移行
温度が物体全体で一様と仮定できるなら T(t) で十分である。しかし棒の各位置で温度が異なる場合、未知関数は u(x,t) となり、熱方程式 u_t=\kappa u_{xx} が現れる。波も弦の位置と時間に依存するため、u_{tt}=c^2u_{xx} のような PDE へ移行する。
ODE から PDE へ移行する判定基準は、状態を有限個の変数で十分に表現できるかどうかである。空間方向の分布や境界条件が本質なら、未知関数は u(x,t) や u(x,y,t) となり、PDE の枠組みが必要になる。
どこまで成り立つか
モデル化は仮定に依存する。冷却法則は環境温度が一定で熱交換が温度差に比例するという近似である。単振動は線型ばねと小変位を仮定する。仮定が変化すれば、微分方程式も変更される。