一次漸化式
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導入
この講義で最重要なのは、漸化式の中に隠れた平衡点を見つけて、等比数列へ変形することです。
a_{n+1}=pa_n+q の形は、そのままだと等差数列でも等比数列でもありません。ここで定数項 q をどう処理するかが核心です。
用語と定義
一次漸化式 とは、
a_{n+1}=pa_n+q
の形をした漸化式です。
平衡点 とは、
\alpha=p\alpha+q
を満たす値 \alpha のことです。
直感的な説明
1. なぜ平衡点を引くのか
平衡点は、「そこにいれば動かない値」です。したがって a_n そのものではなく、「平衡点からどれだけ離れているか」を見ると、毎回の変化が単純になります。
2. どこが等比型になるのか
平衡点からのずれだけを見ると、次の項のずれは前のずれの p 倍になります。つまり、「等比数列が隠れている」と見るのが直感です。
厳密な説明
a_{n+1}=pa_n+q
を考えます。\alpha を
\alpha=p\alpha+q
を満たす定数とします。
ここで
b_n:=a_n-\alpha
とおくと
b_{n+1}=a_{n+1}-\alpha
です。もとの漸化式を使えば
b_{n+1}=pa_n+q-\alpha
です。さらに \alpha=p\alpha+q より q=\alpha-p\alpha なので
b_{n+1}=pa_n+\alpha-p\alpha-\alpha=p(a_n-\alpha)=pb_n
となります。したがって b_n は等比数列で、
b_n=b_1p^{n-1}
です。b_1=a_1-\alpha だから
\boxed{a_n=\alpha+(a_1-\alpha)p^{n-1}}
を得ます。
具体例
たとえば
a_{n+1}=2a_n+3,\qquad a_1=1
を考えます。平衡点 \alpha は
\alpha=2\alpha+3
より
\alpha=-3
です。そこで
b_n=a_n+3
とおくと
b_{n+1}=a_{n+1}+3=2a_n+6=2(a_n+3)=2b_n
だから b_n は公比 2 の等比数列です。b_1=4 なので
b_n=4\cdot 2^{n-1}=2^{n+1}
です。よって
a_n=2^{n+1}-3
となります。
別の見方
代数的な見方
一次漸化式は、「定数項つきの等比」と見ることができます。その定数項を消すために平衡点へ座標をずらす、という見方です。
この見方の利点は、高校数学の標準的な解法そのものが、「定数項を消して同次化する」という代数操作として整理できることです。
線形代数的な見方
大学数学の言葉で見ると、a_{n+1}=pa_n+q はそのままでは線形写像ではなく、平行移動つきの変換です。そこで 1 を付け足して
\begin{pmatrix}
a_{n+1}\\
1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
p & q\\
0 & 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a_n\\
1
\end{pmatrix}
と書くと、2 次元の線形変換として読めます。
このとき
\begin{pmatrix}
\alpha\\
1
\end{pmatrix}
が
\begin{pmatrix}
p & q\\
0 & 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\alpha\\
1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\alpha\\
1
\end{pmatrix}
を満たすのは、ちょうど \alpha=p\alpha+q の平衡点だからです。つまり平衡点は、固有値 1 に対応する不動の向きとして見ることができます。
この見方の利点は、「なぜ平衡点を引くのか」が、座標の原点を不動点へ移して変換を単純にしているからだと分かることです。
解析的な見方
a_{n+1}-a_n を離散的な変化量と見れば、一次漸化式は微分方程式
y'=cy+d
の離散版に近い構造を持っています。どちらも「平衡点を引くと同次になる」という同じ発想で解けます。
この見方の利点は、数列と微分方程式が別物ではなく、「離散か連続かが違うだけで、平衡点まわりの構造はよく似ている」と分かることです。
どこまで成り立つか
この方法は、a_{n+1}=pa_n+q の形では有効です。しかし非線形の漸化式や、係数が変化する場合には、そのままでは使えません。
最終形
\boxed{\alpha=p\alpha+q}
\boxed{b_n:=a_n-\alpha \ \Rightarrow\ b_{n+1}=pb_n}
\boxed{a_n=\alpha+(a_1-\alpha)p^{n-1}}
一言でいうと
- 一次漸化式では、まず平衡点を探します。
- 平衡点を引くと、等比数列へ直ります。