勾配・発散・回転
mathvector-calculusgrad-div-curllecture
導入
このページの核心は、grad・div・curl を記号操作ではなく、場の局所的な変化を測定する三種類の演算子として確認することである。
用語と定義
勾配 は、スカラー場が最も急に増加する方向と大きさを表すベクトル場である。
発散 は、ベクトル場が一点の近傍でどれだけ湧き出すかを測るスカラー量である。
回転 は、ベクトル場が一点の近傍でどれだけ循環するかを測るベクトル量である。
方針
勾配は方向微分を最大化する方向である。発散は小領域からの正味流出を密度として捉える。回転は微小閉曲線に沿う循環を密度として捉える。
具体例
f(x,y)=x^2+y^2 なら
\nabla f=(2x,2y)
である。勾配は原点から外向きに伸び、値が増加する方向を示す。
\boldsymbol{F}(x,y)=(-y,x) では、平面上の回転の強さが正になる。循環を持つ場の基本例である。
成分公式の意味
\nabla f=(f_x,f_y,f_z) は、各座標方向の増加率を一つのベクトルに集約したものである。\nabla\cdot\boldsymbol{F} は、各方向の流出入の差を足し合わせたものである。\nabla\times\boldsymbol{F} は、座標平面ごとの局所循環を組み合わせたものである。
発散の式は、小箱からの流出量を体積で割る極限として理解できる。x 方向の右面と左面の差は近似的に \partial F_1/\partial x を生み、y,z 方向も同様である。回転は、微小長方形の周りの循環を面積で割る極限として得られる。
比較例
- 放射状場 \boldsymbol{F}(x,y)=(x,y) は原点から外向きに広がるため、発散が正である。
- 回転場 \boldsymbol{F}(x,y)=(-y,x) は湧き出しより循環を持つ。
- \boldsymbol{F}(x,y,z)=(-y,x,0) は divergence が 0 であるが curl は 0 ではない。
- 穴のある領域で \boldsymbol{F}=(-y/(x^2+y^2),x/(x^2+y^2)) を考えると、curl は局所的に 0 であるが、原点を囲む閉曲線の線積分は 0 にならない。
具体計算 1: 放射状場
\boldsymbol{F}(x,y)=(x,y) では
\nabla\cdot\boldsymbol{F}=1+1=2,\qquad
\operatorname{curl}\boldsymbol{F}=0
である。原点から外向きに流出するが、局所的な回転はない。
具体計算 2: 回転場
\boldsymbol{G}(x,y)=(-y,x) では
\nabla\cdot\boldsymbol{G}=0,\qquad
\operatorname{curl}\boldsymbol{G}=2
である。湧き出しはないが、反時計回りの循環を持つ。同じ矢印図でも、外向きの広がりと回転は別の量で測定する。
単位の確認
速度場 \boldsymbol{v} の単位を \mathrm{m/s} とすると、divergence の単位は 1/\mathrm{s} である。単位体積あたりの相対的な膨張率として解釈できる。curl も 1/\mathrm{s} の単位を持ち、局所的な角速度の尺度になる。
積分への接続
curl は線積分の循環と結びつき、divergence は面積分の流束と結びつく。この接続を定理として述べるのが Green・Gauss・Stokes の定理である。
どこまで成り立つか
これらの式は十分に滑らかな場で安定して使用できる。不連続や特異点を含む場合は、領域から除外するか、分布の意味で扱う必要がある。