行ベクトルと列ベクトル
mathvectorlinear-algebralecture
導入
この講義で重要なのは、行ベクトルと列ベクトルは同じ成分を持っていても、行列積の中では異なる役割を持つということである。
初学段階では、横に記述するか縦に記述するかだけの違いに感じられる。しかし行列との積では、サイズ条件と写像の向きが変化するため、区別が必須である。
用語と定義
列ベクトル とは、成分を縦に並べた n\times 1 行列である。
x=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\ \vdots\\x_n\end{pmatrix}
行ベクトル とは、成分を横に並べた 1\times n 行列である。
y=\begin{pmatrix}y_1&y_2&\cdots&y_n\end{pmatrix}
直感的な説明
列ベクトルは、線形写像に入力する座標として使用されることが多い。行列 A が m\times n なら、n\times 1 の列ベクトル x に対して Ax が定義される。
行ベクトルは、線形形式や内積の表示で出現することが多い。たとえば y^Tx は、行ベクトルと列ベクトルの積として数を与える。
厳密な説明
x を n\times 1 の列ベクトル、A を m\times n 行列とする。このとき
Ax
は m\times 1 の列ベクトルである。内側のサイズ n が一致するためである。
一方、x^T は 1\times n の行ベクトルである。x^TA を定義するには、A が n\times m でなければならない。したがって、同一の成分であっても形が変化すると、掛けられる相手も変化する。
具体例
A=\begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix},
\qquad
x=\begin{pmatrix}5\\6\end{pmatrix}
なら
Ax=
\begin{pmatrix}17\\39\end{pmatrix}
である。一方、x^TA は
x^TA=
\begin{pmatrix}5&6\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}23&34\end{pmatrix}
となり、結果は行ベクトルである。Ax と x^TA は同一の操作ではない。
よくある誤解
- 行ベクトルと列ベクトルは、見た目だけの違いではない。サイズ条件が異なる。
- 転置は単なる整形ではなく、n\times1 と 1\times n を交換する操作である。
- 行列積は可換ではないため、左右の位置を入替えてはならない。
どこまで成り立つか
実数の行列では転置 T を用いる。複素の内積やユニタリ行列では、転置だけでなく共役転置 * が必要になる。
最終形
\boxed{\text{列ベクトルは }n\times1\text{、行ベクトルは }1\times n}
\boxed{A_{m\times n}x_{n\times1}\text{ は }m\times1\text{ の列ベクトル}}
一言でいうと
- 行ベクトルと列ベクトルは、成分ではなく形と作用の向きによって区別される。