円運動と単振動
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1導入
この講義では、等速円運動にも加速度が生じる理由と、単振動を円運動の射影として表す方法を説明する。
円運動では、合力の半径方向成分が速度の向きを曲げる。単振動では、平衡位置へ戻す力が変位に比例する。この 2 つは
a=-\omega^2x
という形で結びつく。
2用語と定義
等速円運動とは、速さが一定で、軌道が円である運動である。
角速度 \omega とは、角度 \theta の時間変化率である。
\omega=\frac{d\theta}{dt}
等速円運動では \omega は一定であり、半径 r、速さ v について v=r\omega が成立する。
角振動数も記号 \omega で表す。これは 1 秒あたりに位相がどれだけ進むかを表す量で、単振動の周期 T とは
T=\frac{2\pi}{\omega}
で結ばれる。
向心加速度とは、円の中心へ向く加速度であり、
a_r=\frac{v^2}{r}=r\omega^2
で表される。
向心力は、中心向きの合力の役割を表す言葉である。重力、張力、垂直抗力、摩擦力とは別の新しい力ではない。
単振動とは、
\ddot x=-\omega^2x
を満たす運動である。変位と反対向きで、大きさが変位に比例する加速度をもつ。
3方針
円運動では、半径方向と接線方向を分ける。半径方向は速度の向きを変え、接線方向は速さを変える。
単振動では、運動方程式を
\ddot x=-\omega^2x
の形へ直す。この形に直せれば、角振動数 \omega と周期 T=2\pi/\omega が読める。
4関係式 1:向心加速度
半径 r、速さ v の等速円運動では、
\boxed{a_r=\frac{v^2}{r}=r\omega^2}
であり、向きは中心向きである。
4.1証明
短い時間 \Delta t の間に、速度ベクトルの向きが角度 \Delta\theta だけ変わる。速さの大きさは一定なので、速度ベクトルの変化量は小さい角で
|\Delta\vec v|\approx v\Delta\theta
である。角速度の定義より
\Delta\theta=\omega\Delta t
であり、また v=r\omega である。したがって
\frac{|\Delta\vec v|}{\Delta t}
\approx
v\omega
=
\frac{v^2}{r}
である。\Delta t\to0 の極限で
a_r=\frac{v^2}{r}
を得る。v=r\omega を代入すれば a_r=r\omega^2 である。速度ベクトルの変化は中心向きになるので、加速度の向きも中心向きである。
5整理 2:円運動の射影は単振動
半径 A、角速度 \omega の等速円運動を x 軸へ射影すると、
x=A\cos(\omega t+\phi)
であり、この x は
\boxed{\ddot x=-\omega^2x}
を満たす。
5.1証明
円を回る点の角度を
\theta=\omega t+\phi
と置く。射影は
x=A\cos\theta=A\cos(\omega t+\phi)
である。時間で微分すると
\dot x=-A\omega\sin(\omega t+\phi)
さらに微分して
\ddot x=-A\omega^2\cos(\omega t+\phi)
である。x=A\cos(\omega t+\phi) なので
\ddot x=-\omega^2x
を得る。
6整理 3:ばねの単振動
水平ばねで摩擦を無視し、自然長からの変位を x とする。質量 m、ばね定数 k のとき、
\boxed{\omega=\sqrt{\frac{k}{m}},\qquad T=2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}}
である。
6.1証明
ばねの力は
F=-kx
である。運動方程式に代入すると
m\ddot x=-kx
である。したがって
\ddot x=-\frac{k}{m}x
となる。単振動の標準形 \ddot x=-\omega^2x と比べて
\omega^2=\frac{k}{m}
である。よって \omega=\sqrt{k/m} であり、周期は
T=\frac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}
である。
7単位の確認
向心加速度では
\frac{v^2}{r}
:
\frac{[\mathrm{m^2/s^2};\ \mathsf{L^2T^{-2}}]}{[\mathrm{m};\ \mathsf{L}]}
=
[\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}]
である。r\omega^2 でも
r\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}]
\times
\omega^2\ [\mathrm{1/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}]
\quad\Rightarrow\quad
[\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}]
となる。角度 rad は無次元として扱う。
8具体例 1:水平円運動の張力
水平な台の上で、糸が円の半径方向にだけ張力を及ぼす場合を考える。半径 r、質量 m、速さ v の水平円運動では、中心向きの合力が
m\frac{v^2}{r}
でなければならない。この条件で中心向きに働く実在の力が張力だけなら、
T=m\frac{v^2}{r}
である。円錐振子のように糸が斜めなら、張力そのものではなく水平成分が mv^2/r に等しくなる。向心力という別の力を追加するのではない。
9具体例 2:小さい振れの単振子
長さ \ell の振子で、鉛直からの角度を \theta とする。接線方向の運動方程式は
m\ell\ddot\theta=-mg\sin\theta
である。振れが小さいとき \sin\theta\approx\theta なので
\ddot\theta=-\frac{g}{\ell}\theta
となる。したがって
\omega=\sqrt{\frac{g}{\ell}},\qquad
T=2\pi\sqrt{\frac{\ell}{g}}
である。この結論は小振幅近似の範囲で成立する。
10見分け方
- 円を回るなら、半径方向に \sum F_r=mv^2/r を立てる。
- 速さが変わるなら、接線方向の式も必要である。
- F=-kx または a=-\omega^2x の形に直せるなら、単振動である。
- 周期を求めるなら、比例定数から \omega を読む。
- 位置ごとの速さを問うなら、エネルギー保存も有効である。
11どこまで成立するか
a_r=v^2/r は円運動または曲率半径 r の曲線運動で使う。単振動の式は、復元力が変位に比例する範囲で成立する。振子では小振幅近似が必要である。
12最終形
\boxed{a_r=\frac{v^2}{r}=r\omega^2}
\boxed{\ddot x=-\omega^2x}
\boxed{x=A\cos(\omega t+\phi),\qquad T=\frac{2\pi}{\omega}}
13一言でいうと
円運動は速度の向きを曲げ続ける運動であり、単振動は平衡位置へ戻る加速度が変位に比例する運動である。