仕事と力学的エネルギー
導入
このページの核心は、時間を細かく追いたくないとき、力を仕事の形に変換すると、始点と終点だけで速さを読めるという点にある。運動方程式は強力であるが、途中の時刻ごとの運動を全部追う構造をもつ。これに対し、仕事とエネルギーの見方は、経路の各点での時間情報ではなく、どの力がどれだけ移動方向へ寄与したかに注目する。したがって、落下、斜面、ばね、摩擦を含む問題で、始点と終点の関係だけを知りたいときに特に有効である。
このページで解けるようになること
- 仕事 W=\int_C \vec{F}\cdot d\vec{r} の意味と符号
- 運動エネルギーの変化 \Delta K=W_{\mathrm{net}} の導出
- 保存力から位置エネルギーを定義する意味
- 力学的エネルギー保存則を使って速度や高さを求める判断
- 摩擦がある場合に、なぜ単純な保存則が壊れるかの理解
何を解くページか
このページの本線は、次の二段階である。
- 合力の仕事から運動エネルギーの変化を求める
- 保存力の仕事を位置エネルギーへ置き換えて、始点と終点の関係式を作る
したがって、求めたいものが「ある時刻の加速度」ではなく、「ある位置での速さ」「何メートル上がるか」「ばねがどれだけ縮むか」であるときに、このページの方針が自然になる。
方針
このページで最初に採る方針は、力をそのまま追うことではなく、力と変位の内積を取って仕事へ変換することである。理由は、運動方程式
m\frac{d\vec{v}}{dt}=\vec{F}
の両辺に d\vec{r} を内積すると、右辺がそのまま仕事の微小量 dW=\vec{F}\cdot d\vec{r} になるからである。さらに、扱う力が保存力なら、その仕事を位置エネルギーの減少 -dU と読み替えられる。すると途中の時刻を消して
K+U=\text{const}
という始点と終点の式へ進める。
適用条件
- \Delta K=W_{\mathrm{net}} は慣性系での Newton の法則を前提に導く
- K+U=\text{const} は、非保存力のする仕事が 0 のときに限って使う
- 摩擦や空気抵抗があるなら、まず全仕事の式へ戻る
- 位置エネルギーは、保存力に対してのみ導入する
用語と定義
仕事
仕事は、力と変位の内積で定義される。
W=\int_C \vec{F}\cdot d\vec{r}
一定力で直線運動なら
W=\vec{F}\cdot\vec{d}=Fd\cos\theta
である。
なぜ内積なのか
力の大きさだけでは、運動をどれだけ変えるかは決まらない。移動方向と同じ向きの成分だけが、速さを変える向きに寄与する。したがって、移動方向への射影を自動的に取り出す内積が現れる。
運動エネルギー
K=\frac{1}{2} mv^2
これは暗記すべき記号ではなく、仕事と結びつく量として導かれる。
保存力 と 位置エネルギー
保存力とは、仕事が経路に依らず、始点と終点だけで決まる力である。このとき
U(B)-U(A)=-\int_A^B \vec{F}_{\mathrm{cons}}\cdot d\vec{r}
によって位置エネルギー U を定義できる。したがって微小形では
dU=-\vec{F}_{\mathrm{cons}}\cdot d\vec{r}
である。
各力の仕事と合力の仕事
この区別は必須である。
- 各力の仕事: 重力の仕事、摩擦力の仕事、弾性力の仕事などを個別に整理する
- 合力の仕事: 全ての力の和がした仕事として全体を整理する
常に成り立つのは
\Delta K=W_{\mathrm{net}}
であり、ここで W_{\mathrm{net}} は合力の仕事、すなわち各力の仕事の総和である。
何を最初に見分けるか
- 途中の時間変化まで必要か、それとも始点と終点だけでよいか
- 摩擦や空気抵抗などの非保存力が仕事をするか
- 求めたいものが速さ・高さ・ばねの変位のような「前後比較」かどうか
これらを確認すると、運動方程式で進むか、エネルギーへ切り替えるかを判断しやすい。
導出または基本式
1. 仕事と運動エネルギーの関係
Newton の法則
m\frac{d\vec{v}}{dt}=\vec{F}
の両辺に d\vec{r} を内積する。
m\frac{d\vec{v}}{dt}\cdot d\vec{r}=\vec{F}\cdot d\vec{r}
ここで
d\vec{r}=\vec{v}dt
であるから、
m\frac{d\vec{v}}{dt}\cdot \vec{v}dt
=m\vec{v}\cdot d\vec{v}=d\!\left(\frac{1}{2} mv^2\right)
となる。したがって
dK=\vec{F}\cdot d\vec{r}=dW
ゆえに積分して
\boxed{\Delta K=W_{\mathrm{net}}}
を得る。
単位確認
\left[\frac{1}{2} mv^2\right] =\cdot = =
であり、仕事と同じ単位になる。
2. 位置エネルギーの導入
保存力 \vec{F}_{\mathrm{cons}} に対して
dU=-\vec{F}_{\mathrm{cons}}\cdot d\vec{r}
と定める。このとき、保存力の仕事は
W_{\mathrm{cons}}=-\Delta U
と書ける。よって、非保存力のする仕事を W_{\mathrm{nc}} と書くと
\Delta K=W_{\mathrm{cons}}+W_{\mathrm{nc}}=-\Delta U+W_{\mathrm{nc}}
すなわち
\Delta(K+U)=W_{\mathrm{nc}}
を得る。特に
W_{\mathrm{nc}}=0
なら
\boxed{K+U=\text{const}}
である。この書き方にすると、力学的エネルギー保存則は非保存力の仕事が 0 の特別な場合だと明確になる。
非保存力が仕事をするなら、保存ではなく
\Delta(K+U)=W_{\mathrm{nc}}
と書く。ここで W_{\mathrm{nc}} は非保存力の仕事である。
3. 代表的な位置エネルギー
重力
鉛直上向きを h とすると
U_g=mgh
である。基準高さは任意であるが、途中の式では一貫させなければならない。
ばね
自然長からの変位を x とすると
U_s=\frac{1}{2} kx^2
である。
具体例 1: 自由落下
高さ h から静かに落とした質量 m の物体の地面直前の速さを求める。方針は、時間を追わず、始点と終点だけで整理することである。非保存力を無視するなら
K_i+U_i=K_f+U_f
である。初期状態と終状態を代入すると
0+mgh=\frac{1}{2} mv^2+0
したがって
v=\sqrt{2gh}
を得る。ここでは加速度 g を時間で積分していない点が重要である。
具体例 2: ばねに衝突する物体
水平面上を速さ v_0 で進む質量 m の物体が、摩擦なしでばね定数 k のばねに衝突し、最大圧縮 x_{\max} に達する。最大圧縮点では速さが 0 であるから
\frac{1}{2} mv_0^2=\frac{1}{2} kx_{\max}^2
よって
x_{\max}=v_0\sqrt{\frac{m}{k}}
となる。
比較例: 摩擦がある斜面
摩擦があるとき、単純な
K+U=\text{const}
は使えない。たとえば動摩擦力 f_k が一定なら
\Delta K+\Delta U=W_{\mathrm{fric}}
と書く。ここで
W_{\mathrm{fric}}=-f_k\ell
であり、右辺が負になることが力学的エネルギーの減少を表す。
どこまで成り立つか
- \Delta K=W_{\mathrm{net}} は慣性系で常に成り立つ
- K+U=\text{const} は非保存力の仕事が 0 のときに限る
- 位置エネルギーの基準値そのものは任意だが、差は任意ではない
- 空気抵抗や摩擦が無視できない問題では、保存則だけで押し切ってはならない
よくある誤り
- 合力の仕事と、重力や摩擦力の個別の仕事を混同する
- 摩擦があるのに K+U=\text{const} を使う
- 位置エネルギーの基準点を途中で変更して式を壊す
- 仕事の符号を、力の向きだけで決め、変位の向きを確認しない
解法の選択
- 時間や加速度の途中経過が必要 → 運動方程式
- 始点と終点の速度・高さ・ばねの変位だけ知りたい → エネルギー
- 短時間衝突の前後を比較したい → 運動量と力積
仕事率とエネルギーの時間変化
仕事は力の累積効果であり、仕事率はその時間変化である。
P=\frac{dW}{dt}
力 \vec{F} が速度 \vec{v} の物体に働くとき、
P=\vec{F}\cdot\vec{v}
である。力が速度と同じ向きなら運動エネルギーを増やし、逆向きなら減らす。速度に垂直な力は、その瞬間には仕事をしない。たとえば等速円運動の向心力は速度に垂直なので、速さを変えず、向きだけを変える。
経路に依存する仕事と依存しない仕事
保存力の仕事は始点と終点だけで決まり、途中の道筋には依存しない。重力や理想的なばねの力がその例である。このとき位置エネルギー U を導入できる。
一方、摩擦力の仕事は移動距離に依存する。同じ高さから同じ高さへ移動しても、長い経路を通れば摩擦の仕事は大きくなる。したがって、摩擦がある問題では高低差だけでなく、実際に動いた距離を確認する。
位置エネルギー曲線の読み方
1 次元で位置エネルギー U(x) が分かっているとき、保存力は
F(x)=-\frac{dU}{dx}
で与えられる。位置エネルギーが右へ増えるなら、力は左向きに働く。これは物体が位置エネルギーを下げる向きへ動こうとする、という意味である。
平衡位置では
\frac{dU}{dx}=0
である。その点が U の最小なら安定平衡、最大なら不安定平衡である。ばねの U=\frac{1}{2}kx^2 は x=0 で最小をもつので、そこが安定な平衡位置になる。
エネルギー式の選択表
| 状況 | 使う式 | 注意 |
| 合力の仕事が分かる | \Delta K=W_{\mathrm{net}} | 常に基本へ戻れる |
| 保存力だけが仕事をする | K+U=\text{const} | 摩擦・空気抵抗がないか確認する |
| 非保存力が仕事をする | \Delta(K+U)=W_{\mathrm{nc}} | 摩擦なら移動距離を確認する |
| 力が位置で変わる | W=\int \vec{F}\cdot d\vec{r} | 経路に依存するかを確認する |
追加例: 摩擦で止まる距離
水平面で速さ v_0 の物体が動摩擦力だけで止まる距離を求める。力の向きは運動と逆向きなので、摩擦の仕事は
W_{\mathrm{fric}}=-\mu_k mgd
である。仕事と運動エネルギーの関係より
0-\frac{1}{2} mv_0^2=-\mu_k mgd
したがって
\boxed{d=\frac{v_0^2}{2\mu_k g}}
を得る。この問題では K+U=\text{const} ではなく、非保存力の仕事を右辺に入れる。
まとめ
仕事とエネルギーの方法は、力を忘れる方法ではなく、力を変位と結びつけて別の形で読む方法である。常に成立する基本式は
\Delta K=W_{\mathrm{net}}
であり、保存力だけが仕事をするなら
K+U=\text{const}
へ簡約される。非保存力が仕事をするなら
\Delta(K+U)=W_{\mathrm{nc}}
として扱う。
エネルギー式を立てる前の確認
エネルギーで解く問題では、始点と終点を先に決める。その間で速さ、高さ、ばねの伸び、摩擦の移動距離がどのように変わるかを表にすると、入れるべき項が抜けにくい。
保存力だけなら K+U は一定である。摩擦や外力が仕事をするなら、変化した力学的エネルギーはその仕事に等しい。力を全部エネルギーに入れるのではなく、保存力として位置エネルギーに入れるものと、仕事として右辺に置くものを分けることが重要である。
標準的には、始点を i、終点を f として
K_i + U_i + W_{\mathrm{nc}} = K_f + U_f
と置く。この式では、非保存力の仕事 W_{\mathrm{nc}}\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] を左辺へ入れている。右辺へ移す書き方もできるが、符号が逆になるので、同じ問題の中では形を統一する。
文字式の単位
仕事 W\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は、力 F\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] と変位 d\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] の積として現れる。Fd\cos\theta\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] では、\theta\ [\mathrm{rad};\ \mathsf{1}] は向きだけを表し、単位を変えない。
運動エネルギー K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は \frac{1}{2}mv^2\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] であり、m\ [\mathrm{kg};\ \mathsf{M}]、v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] から [\mathrm{kg\,m^2/s^2}]=[\mathrm{J}] になる。重力による位置エネルギー U=mgh\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] では、m\ [\mathrm{kg};\ \mathsf{M}]、g\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}]、h\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] である。仕事率 P\ [\mathrm{W};\ \mathsf{ML^2T^{-3}}] は \frac{dW}{dt}\ [\mathrm{J/s};\ \mathsf{ML^2T^{-3}}] であり、単位は [\mathrm{W}] である。
エネルギーで解くときの落とし穴
エネルギーの式では、途中の時間や加速度を消せる。その代わり、どの力が仕事をしたかを正確に数える必要がある。重力やばね力を位置エネルギーに入れたなら、同じ仕事を右辺にもう一度入れてはいけない。
摩擦の仕事では、変位ではなく接触面上を滑った距離が必要になる。物体の始点と終点の距離 d\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] と、摩擦が作用した道のり s\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] は同じとは限らない。摩擦の仕事 W_{\mathrm{fric}}\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は、大きさが一定なら W_{\mathrm{fric}}=-fs\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] と読む。
エネルギーだけで足りない場合
エネルギーの式は速さの大きさを決めるのに強いが、向きや時間を直接は決めにくい。たとえば
\frac{1}{2}mv^2+U(x)=E
から分かるのは v^2\ [\mathrm{m^2/s^2};\ \mathsf{L^2T^{-2}}] であり、v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] の符号は運動の向きを別に判断する必要がある。時間を求めるなら、さらに v=dx/dt\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] や運動方程式を使う。
エネルギーは速さの大きさを求めるのに強いが、向きの情報を失いやすい。K=\frac{1}{2}mv^2\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] の二乗で決まるため、右向きと左向きを区別しない。
衝突や分裂のように向きが重要な問題では、運動量の式を併用する。円運動のように向きが刻々と変わる問題では、半径方向の力の式も必要になる。
グラフから仕事を読む
力が位置によって変わるとき、仕事は力と変位の積を足し合わせたものである。したがって、F-x グラフでは、曲線と横軸に囲まれた面積が仕事 W\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] を表す。
力が一定なら、面積は長方形であり、W=Fd\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] になる。力が 0 から直線的に増えるなら、面積は三角形であり、ばねの仕事や位置エネルギーに現れる \frac{1}{2}kx^2\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] とつながる。
グラフが横軸より下にある部分は、負の仕事を意味する。進行方向と逆向きに力が働くと、運動エネルギーは減る。この符号まで読むことが、面積を使う目的である。
エネルギー図で運動範囲を読む
位置エネルギー U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] を縦軸、位置 x\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] を横軸にした図では、全エネルギー E\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] との差が運動エネルギー K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] である。つまり K=E-U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] である。
E\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] より U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] が大きい領域では、K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] が負になってしまうため、古典力学では到達できない。折り返し点では K=0\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、したがって速さ v=0\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] になる。力の式を解かなくても、運動できる範囲を図から読める。
エネルギー式の誤答パターン
力学的エネルギーを使うときの典型的な誤りは、保存力の仕事を位置エネルギーにも入れ、さらに外力の仕事としてもう一度足すことである。重力を mgh\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] として位置エネルギーに入れたなら、重力の仕事を別に右辺へ入れない。
摩擦では、仕事の符号に注意する。動摩擦力は相対運動に逆らうので、通常は負の仕事をする。摩擦の仕事を正にしてしまうと、物体が自然に加速するような不自然な答えになる。
単位で足し算を検査する
エネルギーの式では、足してよいのはすべて [\mathrm{J}] の項だけである。たとえば
\frac{1}{2}mv^2
+mgh
+\frac{1}{2}kx^2
=E
では、運動エネルギー、重力による位置エネルギー、ばねの位置エネルギーがすべて [\mathrm{J}] でそろう。途中で [\mathrm{N}] や [\mathrm{m/s}] の項をそのまま足していたら、式の立て方を見直す。
エネルギーの式では、足してよい項はすべて [\mathrm{J}] でなければならない。K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、W\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は足せるが、力 F\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] や距離 x\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] をそのまま足してはいけない。力をエネルギーの式に入れるには、距離との積として仕事 Fx\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] にする必要がある。
式の途中で単位を添えると、足せない量を混ぜた時点で誤りに気づける。数値の大小より前に、単位が同じかを見る。
主要文字式の単位確認
仕事 W\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、運動エネルギー K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、位置エネルギー U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、全エネルギー E\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は同じ単位をもつ。力 F\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] と変位 d\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] の積 Fd\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] が仕事である。
K=\frac{1}{2}mv^2 では、m\ [\mathrm{kg};\ \mathsf{M}]、v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}]、mv^2\ [\mathrm{kg\,m^2/s^2};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]=[\mathrm{J}] である。U=mgh では、m\ [\mathrm{kg};\ \mathsf{M}]、g\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}]、h\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] から mgh\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] が出る。仕事率 P\ [\mathrm{W};\ \mathsf{ML^2T^{-3}}] は W\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] を t\ [\mathrm{s};\ \mathsf{T}] で割った量である。
数式内での単位明示
仕事の式は
W = F \times d \times \cos\theta
である。運動エネルギーと重力による位置エネルギーも、文字式の段階で単位を持たせる。
K = \frac{1}{2} m v^2, \qquad U = mgh
始点・終点・途中を分ける
エネルギーの式では、始点と終点の状態だけで決まる量と、途中の経路に依存する量を分ける。運動エネルギー K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] と位置エネルギー U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は状態の量である。一方、摩擦の仕事 W_{\mathrm{fric}}\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は、途中で滑った距離 s\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] に依存する。
問題を解くときは、始点の K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、終点の K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、途中で働く非保存力の仕事 W_{\mathrm{nc}}\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] を表にする。この表を作ると、入れ忘れと二重計上を防ぎやすい。
答えが速さ v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] なら、最終的に平方根を取ることが多い。平方根の中が負になるなら、その状態には到達できないか、エネルギー式の符号が誤っている。
エネルギーの損失をどこへ置くか
力学的エネルギーが保存しない問題では、失われた量を式のどこに置くかを決める。摩擦で熱に変わるなら、非保存力の仕事 W_{\mathrm{nc}}\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] として右辺に置ける。衝突で変形や音に変わるなら、失われたエネルギーを Q\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] のように置いて収支を書ける。
重要なのは、消えたのではなく、力学的エネルギーとして追跡していない形へ移ったと読むことである。力学的エネルギーが減るとき、熱や変形まで含めた広い意味のエネルギーは保存している。
式を立てるときは、左辺と右辺の全項が [\mathrm{J}] であることを確認する。K\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、U\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、W_{\mathrm{nc}}\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、Q\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は足し引きできるが、力 F\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] や距離 x\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] をそのまま混ぜてはいけない。