回転運動の基本
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導入
この講義の核心は、固定軸まわりの回転運動では、\theta,\omega,\alpha が x,v,a に対応し、直線運動の考え方をそのまま移せるという点にある。円の上を動く点の位置は弧長 s でも角度 \theta でも記述できる。\theta を選ぶと回転が一様に書け、最後に s=r\theta で長さへ戻せる。この変換の要が半径 r である。
このページで解けるようになること
- \theta,\omega,\alpha を用いて固定軸回転を記述する
- v=r\omega、a_t=r\alpha、a_n=r\omega^2 の意味と向きを区別する
- 等角加速度回転の 3 公式を立てる
- 質点の円運動と剛体の回転の役割分担を整理する
方針
まず弧長 s=r\theta から v=r\omega と a_t=r\alpha を導く。そのあと速度ベクトルの向きの変化から向心加速度 a_n=r\omega^2 を得る。最後に直線運動との対応表を用いて等角加速度回転の公式を整理する。
適用条件
- このページの本線は固定軸まわりの回転である
- v=r\omega は軸からの距離 r が一定の点に対して使う
- a_t=r\alpha は接線方向、a_n=r\omega^2 は法線方向の成分である
用語と定義
角速度
角速度とは、角度の時間変化率である:
\omega = \frac{d\theta}{dt}
「角」という命名:angular(角度に関する)の訳。速さに相当するが、測るのは空間の移動距離ではなく角度の変化量である。
角加速度
角加速度とは、角速度の時間変化率である:
\alpha = \frac{d\omega}{dt} = \frac{d^2\theta}{dt^2}
直線量と角度量の対応
| 直線運動 | 記号 | 次元 | 回転運動 | 記号 | 次元 | 変換 |
| 変位 | x | [\mathrm{m}] | 回転角 | \theta | [\mathrm{rad}](無次元) | x = r\theta |
| 速度 | v | [\mathrm{m/s}] | 角速度 | \omega | [\mathrm{rad/s}] | v=r\omega\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] |
| 加速度 | a | [\mathrm{m/s^2}] | 角加速度 | \alpha | [\mathrm{rad/s^2}] | a_t=r\alpha\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}] |
| 質量 | m | [\mathrm{kg}] | 慣性モーメント | I | [\mathrm{kg\,m^2}] | — |
| 力 | F | [\mathrm{N}]=[\mathrm{kg\,m/s^2}] | 力のモーメント | \tau | [\mathrm{N\,m}]=[\mathrm{kg\,m^2/s^2}] | \tau = rF |
この対応により、直線の運動方程式 ma = F に対応して I\alpha = \tau が成立する(詳細は慣性モーメント・角運動量の講義で扱う)。
質点の円運動と剛体の回転
| 質点の円運動 | 剛体の回転 |
| 主役 | 1 個の質点 | 広がった物体 |
| 主に知りたいもの | 向心加速度、向心力 | 角速度、角加速度、トルク |
| 次に進む内容 | 円運動と単振動 | 慣性モーメント、角運動量 |
向心加速度と遠心力の区別
| 向心加速度 | 遠心力 |
| 性質 | 実在する加速度 | 擬似力(非慣性系の補正項) |
| 向き | 常に中心向き | 外向き |
| 使える座標系 | 慣性系 | 回転系のみ |
| 大きさ | \frac{v^2}{r} = r\omega^2 | mr\omega^2(外向きの力として扱う) |
混同すると誤ること:「等速円運動では向心力と遠心力がつり合っている」という記述は慣性系では誤り。慣性系では向心力が向心加速度を生み出しているだけである。
見方の整理
まず弧長 s = r\theta を出発点とし、微分で v = r\omega、さらに微分で a_t = r\alpha を導出する。等速円運動では速度ベクトルの向きの変化から向心加速度 a_n = v^2/r を別途導出する。
直感的な説明
回転している物体では、1 秒でどれだけ角度が進むかを見るほうが自然である。実際に空間で動いているのは円周に沿った位置なので、最後に長さへ戻す橋が必要である。それが v = r\omega である。等速円運動では速さは変わらないが向きは変わり続ける。向きが変わるということは加速度が存在するということである。その加速度が向心加速度である。
厳密な説明
1. 弧長と角度
半径 r の円で角度が \theta のとき弧長は
s = r\theta
\theta はラジアン単位で測る(度では式が成り立たない)。
2. 線速度の導出
s = r\theta を時間で微分すると
v = \frac{ds}{dt} = r\frac{d\theta}{dt} = r\omega
3. 向心加速度の導出
等速円運動(v = \text{const})では速度ベクトルの大きさは変わらず、向きだけが変わる。短い時間 \Delta t で角が \Delta\theta だけ変わると、速度ベクトルの変化量の大きさは
|Deltavec{v}| approx v,Deltatheta
したがって加速度の大きさは
a_n = \lim_{\Delta t \to 0}\frac{|\Delta\vec{v}|}{\Delta t} = v\frac{d\theta}{dt} = v\omega
v = r\omega を代入すると
\boxed{a_n = \frac{v^2}{r} = r\omega^2}
向きは常に中心向き(向心方向)。つまり向心加速度は「速さが変わるから」ではなく「向きが変わるから」現れる加速度である。
4. 接線方向の加速度
回転の速さも変わる場合、v = r\omega を時間で微分すると
a_t = \frac{dv}{dt} = r\frac{d\omega}{dt} = r\alpha
非等速円運動では加速度の 2 成分が共存する。中心向きの成分は速度の向きを変え、接線方向の成分は速さの大きさを変える。
a_n = \frac{v^2}{r} = r\omega^2
a_t = r\alpha
合加速度の大きさは a = \sqrt{a_n^2 + a_t^2}。
5. 等加速度回転の公式
直線の等加速度の公式 v = v_0 + at、x = x_0 + v_0 t + \frac{1}{2}at^2 と完全に対応する:
\omega = \omega_0 + \alpha t
\theta = \theta_0 + \omega_0 t + \frac{1}{2}\alpha t^2
\omega^2 - \omega_0^2 = 2\alpha(\theta - \theta_0)
ここでも前提は \alpha=\text{const} である。
具体例 1: 円盤周辺の点
半径 0.20\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] の円盤が \omega=10\ [\mathrm{rad/s};\ \mathsf{T^{-1}}] で回転しているとする。このとき周辺の点の線速度は
v=r\omega=0.20\times 10=2.0
であり、向心加速度は
a_n=r\omega^2=0.20\times 10^2=20
である。
具体例 2: 等角加速度回転
\omega_0=2.0\ [\mathrm{rad/s};\ \mathsf{T^{-1}}]、\alpha=3.0\ [\mathrm{rad/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}]、t=4.0\ [\mathrm{s};\ \mathsf{T}] とすると
\omega=\omega_0+\alpha t=2.0+3.0\times 4.0=14
となる。さらに
\theta-\theta_0=\omega_0 t+\frac{1}{2}\alpha t^2
で回転角も求められる。
見分け方
- 円運動・回転が出たら、まず \theta, \omega, \alpha で書けないか考える
- 速さが変わらなくても向きが変わるなら加速度が存在する → 向心加速度
- 回転の速さも変わるなら a_t = r\alpha も必要
- 遠心力は回転系でのみ使用する(慣性系では使わない)
並進と回転を同時に扱う場面
円板や球が転がる問題では、重心の並進運動と、重心まわりの回転運動を同時に扱う。
\sum F = ma,\qquad \sum \tau_G=I_G\alpha
さらに、すべりなしなら
a=R\alpha,\qquad v=R\omega
を束縛条件として加える。摩擦力は仕事をしない場合もあるが、回転を生むモーメントとしては重要である。したがって、転がり問題では摩擦を単純に「邪魔な力」として消さない。
追加例: 斜面を転がる剛体
半径 R、質量 m、重心まわりの慣性モーメント I_G の剛体が、角度 \theta の斜面をすべらずに転がる。斜面に沿う下向きを正にすると、並進の式は
ma=mg\sin\theta-f
重心まわりの回転の式は
I_G\alpha=fR
すべりなしより a=R\alpha なので
f=\frac{I_G}{R^2}a
これを並進の式へ代入して
\boxed{a=\frac{g\sin\theta}{1+\dfrac{I_G}{mR^2}}}
を得る。慣性モーメントが大きいほど、同じ重力でも回転に使われる分が増え、重心の加速度は小さくなる。
回転の仕事と仕事率
力のモーメント \tau が角度 \theta だけ回転させるとき、回転の仕事は
W=\int \taud\theta
である。\tau が一定なら
W=\tau\Delta\theta
となる。仕事率は
P=\tau\omega
である。これは直線運動の W=\int F\,dx、P=Fv に対応する。回転では、力そのものではなく力のモーメントが仕事を決める。
角量と線量の対応
固定軸まわりの回転では、直線運動の量と回転運動の量が対応する。
| 直線運動 | 回転運動 |
| 位置 x | 角度 \theta |
| 速度 v | 角速度 \omega |
| 加速度 a | 角加速度 \alpha |
| 力 F | 力のモーメント \tau |
| 質量 m | 慣性モーメント I |
| F=ma | \tau=I\alpha |
| K=\frac{1}{2}mv^2 | K=\frac{1}{2}I\omega^2 |
この対応は便利だが、一般の剛体運動では軸が固定されているとは限らない。対応表を使う前に、固定軸または重心軸として扱えるかを確認する。
軸の選び方
回転の式を立てるときは、どの軸まわりに見るかを先に決める。
| 選ぶ軸 | 向いている場面 | 利点 |
| 固定軸 | 蝶番・滑車・回転軸が固定されている | 軸反力のモーメントが 0 になる |
| 重心軸 | 転がりや自由な剛体の運動 | 並進と回転を分けて書ける |
| 接触点まわり | すべりなし転がりの瞬間 | 接触点の速度が 0 と見なせる |
固定軸では \sum\tau=I\alpha をそのまま使いやすい。重心軸では \sum F=ma と \sum\tau_G=I_G\alpha を連立する。接触点まわりの方法は便利だが、慣性モーメントの軸がどこかを必ず確認する。
どこまで成り立つか
v = r\omega と a_t = r\alpha は半径 r が一定の円運動を前提とする。a_n = v^2/r は曲率半径 r の任意の曲線運動に一般化できる(r が時間で変わる場合は別途考察が必要)。回転運動の動力学(慣性モーメント・角運動量)については別途の講義で扱う。
よくある誤り
- a=r\alpha を全加速度と思い込む
- 向心加速度を接線方向へ描く
- v=r\omega を固定軸でない一般運動へ濫用する
- 遠心力を慣性系の式へ加える
最終形
\boxed{\omega = \frac{d\theta}{dt}, \quad \alpha = \frac{d\omega}{dt}}
\boxed{v = r\omega, \quad a_t = r\alpha}
向心加速度は中心向きである。
\boxed{a_n = \frac{v^2}{r} = r\omega^2}
一言でいうと
\theta \to \omega \to \alpha は x \to v \to a の完全な対応物であり、半径 r を掛けると線速度・接線加速度に変換できる。向心加速度は速さでなく向きの変化から生まれる。
文字式の単位
回転では、角変位 \theta\ [\mathrm{rad};\ \mathsf{1}]、角速度 \omega\ [\mathrm{rad/s};\ \mathsf{T^{-1}}]、角加速度 \alpha\ [\mathrm{rad/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}] を使う。rad は無次元として扱うため、v=r\omega\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] では r\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] と \omega\ [\mathrm{rad/s};\ \mathsf{T^{-1}}] から v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] が出る。
回転の運動方程式 \sum\tau=I\alpha では、\sum\tau\ [\mathrm{N\,m};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、I\ [\mathrm{kg\,m^2};\ \mathsf{ML^2}]、\alpha\ [\mathrm{rad/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}] である。rad を無次元とすると、I\alpha\ [\mathrm{kg\,m^2/s^2};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]=[\mathrm{N\,m}] になる。回転エネルギー \frac{1}{2}I\omega^2\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] も、同じく [\mathrm{kg\,m^2/s^2}] になる。
並進と回転を同時に立てる手順
転がり運動では、並進の式、回転の式、すべりなしの束縛条件を別々に立てる。
\sum F=Ma
\sum \tau=I\alpha
a=R\alpha
この 3 種類の式を混ぜないことが重要である。摩擦力は並進では力、回転ではモーメントを作る同じ未知量として現れる。
転がる物体や糸で引かれる滑車では、並進の式と回転の式を同時に使う。重心の運動には ma\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}]、重心まわりの回転には I\alpha\ [\mathrm{N\,m};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] が対応する。
手順は次のように整理できる。
| 段階 | 内容 |
| 1 | 物体の重心に対して力の式を立てる |
| 2 | 回転軸を決めてモーメントの式を立てる |
| 3 | すべりなしなら a=R\alpha\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}] を追加する |
| 4 | 摩擦力や張力を未知数として消去する |
ここで a\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}] は重心の加速度、R\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] は半径、\alpha\ [\mathrm{rad/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}] は角加速度である。すべりなしの条件は力の法則ではなく、接触点の相対速度が 0 であるという幾何条件である。
摩擦があっても力学的エネルギーが保たれる場合
すべりなしで転がる場合、静止摩擦力が存在しても、接触点が瞬間的に静止していれば仕事をしない。このとき摩擦は並進と回転の間でエネルギーを配分する役割をもつが、全体の力学的エネルギーを失わせない。
一方、すべりがある場合は動摩擦力が相対移動に逆らって仕事をし、力学的エネルギーは熱などへ移る。摩擦があるかどうかではなく、接触点に相対移動があるかどうかで判断する。
ただし、すべりなしを仮定したあとで静止摩擦力 f_s\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] を求めたら、必ず
|f_s|
\le
\mu_sN
を確認する。この不等式を満たさないなら、静止摩擦では転がり条件を保てず、すべりを含む運動として立て直す。
回転の誤答パターン
回転運動で多い誤りは、力 F\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] と力のモーメント \tau\ [\mathrm{N\,m};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] を混同することである。並進を変えるのは合力であり、回転を変えるのはモーメントである。力が大きくても、作用線が回転軸を通ればモーメントは 0\ [\mathrm{N\,m};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] になる。
もう 1 つの誤りは、角速度 \omega\ [\mathrm{rad/s};\ \mathsf{T^{-1}}] と速さ v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] を同じものとして扱うことである。両者は v=R\omega\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] で結ばれるが、半径 R\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] が変われば、同じ \omega\ [\mathrm{rad/s};\ \mathsf{T^{-1}}] でも速さ v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] は変わる。
回転での単位確認
回転の式では、rad を無次元として扱うことが多い。そのため、R\omega\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] は [\mathrm{m}] と [\mathrm{1/s}] の積として [\mathrm{m/s}] になる。I\alpha\ [\mathrm{N\,m};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は [\mathrm{kg\,m^2}] と [\mathrm{1/s^2}] の積として [\mathrm{kg\,m^2/s^2}]、すなわち [\mathrm{N\,m}] になる。
単位を追うと、並進の式と回転の式を混ぜていないか確認できる。力の単位 [\mathrm{N}] と、モーメントの単位 [\mathrm{N\,m}] は違うので、同じ式の中で足してはいけない。
主要文字式の単位確認
角変位 \theta\ [\mathrm{rad};\ \mathsf{1}]、角速度 \omega\ [\mathrm{rad/s};\ \mathsf{T^{-1}}]、角加速度 \alpha\ [\mathrm{rad/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}] を使う。rad を無次元として扱うと、R\omega\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}]、R\alpha\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}] となり、並進の量と接続できる。
慣性モーメント I\ [\mathrm{kg\,m^2};\ \mathsf{ML^2}]、力のモーメント \tau\ [\mathrm{N\,m};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、回転エネルギー \frac{1}{2}I\omega^2\ [\mathrm{J};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}]、角運動量 I\omega\ [\mathrm{kg\,m^2/s};\ \mathsf{ML^2T^{-1}}] を区別する。I\alpha\ [\mathrm{N\,m};\ \mathsf{ML^2T^{-2}}] は回転の運動方程式に現れる量である。
数式内での単位明示
回転の運動方程式は
\tau = I \times \alpha = I\alpha
である。回転エネルギーと角運動量も、単位を数式内に置く。
K_{\mathrm{rot}} = \frac{1}{2}I\omega^2, \qquad L = I\omega
接点まわりの瞬間回転という見方
すべりなしで転がる物体は、接点が瞬間的に静止している。このため、一瞬だけを見れば、物体は接点まわりに回転しているように扱える。
この見方を使うと、速さの分布を理解しやすい。中心の速さを v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] とすると、接点の速さは 0\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}]、上端の速さは地面に対して 2v\ [\mathrm{m/s};\ \mathsf{LT^{-1}}] になる。これは並進の速度と回転による速度を足し合わせた結果である。
ただし、接点まわりの瞬間回転は運動の見方であって、固定軸がそこにあるという意味ではない。力のモーメントや慣性モーメントを使うときは、どの軸まわりに計算しているかを明確にする。
滑車に慣性モーメントがある場合
軽い滑車では、糸の両側の張力を同じとみなす。しかし滑車に慣性モーメント I\ [\mathrm{kg\,m^2};\ \mathsf{ML^2}] がある場合、両側の張力は一般に異なる。その差が滑車にモーメントを与え、角加速度 \alpha\ [\mathrm{rad/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}] を生じる。
半径 R\ [\mathrm{m};\ \mathsf{L}] の滑車に、左右の張力 T_1\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}]、T_2\ [\mathrm{N};\ \mathsf{MLT^{-2}}] が働くなら、回転を変えるのは張力差である。並進する物体には力の式を、回転する滑車にはモーメントの式を立てる。
すべりなしで糸が滑車に巻きついているなら、糸の加速度 a\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}] と滑車の角加速度 \alpha\ [\mathrm{rad/s^2};\ \mathsf{T^{-2}}] は a=R\alpha\ [\mathrm{m/s^2};\ \mathsf{LT^{-2}}] で結ばれる。この束縛条件を追加して、並進と回転を同時に解く。